理事長式辞

式辞(要約) 学校法人桐蔭学園理事長 平岩敬一

 創立50周年を迎えるにあたり、これまで桐蔭学園を育て、支えてくださった多くの方々に、そして今なお桐蔭学園のためにお力をかしてくださっている多くの皆様に深く感謝し、御礼を申し上げます。
 思えば桐蔭学園は、高度成長期を支え、日本を経済大国へと押し上げた実業人らが、未だしと思えた当時の教育界に対して、我が国の将来のために、次世代の人材育成の新しい切り口としての期待を担ってスタートした学校でした。
 この50年の間に培ってきたものは、正に公立学校では出来ない形での「人材育成」でした。35万平米余のキャンパス、近年まで能力別教育と称していた習熟度別教育、団体訓練として始まったキャンプを通じて行われたリーダー教育、専門的指導者によるスポーツ教育、本格的ホールでの芸術教育などですが、誇るべきものは設備・システムそのものではなく、歴代の校長を始めとした教職員は、卒業生とその活躍こそ随一の誇りとしてきたのです。年々充実してきた施設設備はその揺籃であり、正に瑞鳥鳳凰が、来るべき大いなる飛翔を前に羽根を休め、英気を養う場にほかなりません。今や5万人を超す卒業生は、一人ひとりが桐蔭教育の宝と言えます。
 さて、50年を経た今、世の中は急速なグローバル化・多様化の時代を迎えています。創立以来掲げてきた「自由・求学・道義・愛国」という4項目の建学の精神に加え、創立50周年を期に、
   「自然を愛し、平和を愛する国際人たれ」
という一項を加えました。
 創立以来、公立学校ではできないシステムを掲げ、日本の教育の最先端を走り、時々に旋風を巻き起こしてきた本校ですが、今や公立学校がそれらを取り入れ成果を上げる時代となっています。桐蔭学園は次なる50年に向けて、新たに着実な一歩を踏み出さねばなりません。それは、今までと同じあり方を継続するだけでは成しえないものです。
 次の50年を見据えた改革の重要なポイントは、
    「自ら考え判断し行動できる子供たち」の育成
すなわち一人ひとりが多様な変化の激しい社会にしっかりと適応し、地に足をつけ、自らの人生を切り拓いていけるための自立的学習能力を育てることです。
 これはそのまま、知識偏重から考える力を重視するあり方へと変わっていく今後の大学入試にも直結するものです。更には、大学・大学院等の高等教育を終えた段階で社会に出るための力、更にその10年後、社会の中心で活躍するための力を育てることに繋がります。
 今までの50年の桐蔭教育が、監督の指示を忠実に守ってプレーしてきたあり方に近いものとすれば、これからの50年は、今や花園の常連となった桐蔭ラグビーのあり方と同じく、トレーニングの蓄積をもとに、重大な局面においては指示を待つことなく自分たちで解決していく能力を養いたいということです。この50年間に、一層混迷・複雑の度合いを強くしている世の中の有様を前に、決して怯むことなくキャプテンシーを発揮できる人材、更にはそれぞれの集団の長としてリーダーシップをとれる人材を育てたいということです。
 50年経った今も、生徒の殆どは「磨かれざる原石」として桐蔭学園の門をくぐってきます。その潜在する能力を引き出す責務がわれわれにはあります。
 わが国の未来が、平和で経済的に安定した明るいものになるか否かは、次の時代を担う若者が、今、いかなる教育をうけるかにかかっているのです。
 過去の50年の実績も栄光も、この50周年記念誌を繙く皆様の脳裏に大切にしまっていただき、学園は改めて今年を原点として、日本の教育界に再び一石を投じていきたいと思う次第です。
 今後とも、あいかわらぬご支援、ご鞭撻を心よりお願い申し上げます。