月別アーカイブ: 2023年2月

熱く語れるポスターセッション 自分の興味関心と社会とのつながりを考えよう~SDGsを参考に~

『今、求められる力を高める総合的な学習の時間の展開』(文部科学省,教育出版2011)では、探究的な学習について以下に書かれています。

探究的な学習とするためには、学習過程が以下のようになることが重要である。

 ①【課題の設定】体験活動などを通して、課題を設定し課題意識をもつ

 ②【情報の収集】必要な情報を取り出したり収集したりする

 ③【整理・分析】収集した情報を、整理したり分析したりして思考する

 ④【まとめ・表現】気付きや発見、自分の考えなどをまとめ、判断し、表現する

s-fig01

こうしたことと、桐蔭学園小学校で掲げている6つのキーコンピテンシー(思考力、創造力、チャレンジ力、メタ認知力、思いやり、エージェンシー)とを意識して探究活動に取り組むように考え、教科の「総合」の探究的な学びについて、昨年度よりカリキュラムを再編成して取り組んできました。今年度の6年生は再編成したカリキュラムで取り組んで2年目となります。

ポスターセッションに至るまでの今年度の6年生の総合(探究)の歩みを少しご紹介します。6年生では、それぞれが興味・関心あることについて、そこに関わる社会的な問題にどのようなものがあるのかを調べ、その問題に対して、どういった解決方法があるのかを自分なりに主張することにしました。

探究的な学びを深めていくためには、「課題の設定」。つまり子ども自身の「問い」がどういったものになるのか、ということが非常に大切です。「問い」については、まずオープンエンドになっていることが必要です。社会の中に存在する様々な課題は、いろいろな要素が複雑に絡み合ったものであり、単一の答えが出るものではありません。そういったことを踏まえ、探究では問いづくりを最も大切にしています。

s-fig02 s-fig03

ここからは、思考の流れを追うためにある児童の探究的な学びに焦点を絞って説明します。

まずは、子どもたちに学習の見通しが持てるように、図1を提示しました。こうしたものを示すことによって、自分が今どの段階を取り組んでいるのか、それがこの先どのように進んでいくのか、ということ常にイメージしながら進めていけるようになります。

次に、自分の興味・関心について掘り下げていくために、自分についての分析を行いました(図2)。パッと思いつくことを1つ挙げることは、子どもたちにとって簡単なことです。しかし、様々な観点から問いかけていくことで、改めて自分の中にどんな興味・関心があるのか、自覚することができます。

s-fig04

s-fig05 s-fig06

 

そして、それをもとに曼荼羅チャート(図3)を使って、どうして自分はそれに興味・関心があるのかを整理することで、より強く興味・関心があるものはどれなのかを可視化することができ、自分の興味・関心がどのような共通性をもっているのかなど、より大きな視野で考えることができるようになります。また、こうして複数の興味・関心を挙げることにより、実際にそれが社会的な問題・課題とどのようにつながっているかを考えたとき、最初に挙げた興味・関心のあるものとのつながりが見出せない場合でも、自分の中に課題設定をする選択肢が持てます。この取り組みによって、子どもたちの問いは似通ったものからより多様なものに変化していきました。この児童は、最初に文房具やハワイ、赤ちゃんなどを書いていましたが、複数書いていくことで社会的な問題・課題とつながって学習を進めていくのにより自分にふさわしいテーマとして「発酵」を選択しました。こういった変化が多くの子どもたちの中で起きていました。図4-1では、自分の設定した興味・関心がテーマ(SDGs)とどう関わりそうなのか見通しを立て、図4-2で探究をし始める最初の問いを明確化することができ、探究への計画を持てるようになっていきました。

s-fig07s-fig08

次に実際に探究をしていく流れについてです。ここからは、【課題の設定】→【情報の収集】→【整理・分析】→【まとめ・表現】→【課題の設定】→…と個人内で探究的な学びのサイクルを回していきます。図5-1、5-2ように、「探究学習シート」というものを使って、1人1人が、探究的な学びのサイクルを進めていきます。ここで大切なのは、シートの最後にある「次なる問い」の部分です。調べたことをさらに深掘りをしたり、別の観点から調べたりすることで探究のサイクルが繰り返され、より深い学びにつながります。また、調べ学習が不十分であったり、調べた内容を自分なりに解釈できていなかったりする場合、「次なる問い」を生み出すことが難しくなるので、1人1人に助言を適宜することが大切です。そうして、個人で探究的な学びを進めた先に2学期は、小論文形式で【まとめ・表現】するようにしました。9月にスタートして、12月に小論文の形でまとめることができました(図6)。

s-fig09 s-fig10

3学期は、ポスターセッションで表現するための、アウトプット、つまり【まとめ・表現】することに焦点化して学びを進めました。自分が考えたことをいかに人に伝わるようにするのか、ということについて考えを深めるために、聞き手としてどういった観点で見るべきか、発表者としてどういったことを大切にして取り組むべきか、子どもたちと教員が話し合いながら、評価ルーブリックを作成しました(図7)。そのルーブリックを基に、自分の発表を振り返ったり、当日のみんなの発表を自分たちで評価したりするようにしました。

図7に示したのは実際に児童が練習時に友だちの発表を評価したものです。当日も同じルーブリックを使用して、お互いの発表を聞き合うようにしました。

こうした学びを経て、2月17日(金)に大学のクリエイティブスタジオにて、ポスターセッションを実施しました。これまで学んだことを発表する場ということで、当日は、保護者や学園関係者に招待状を出して聞いてもらうようにしました。5年生もその様子を見に来てくれました。子どもたちは普段あまり関わりのない人や面識のない人にも自分たちの学びを聞いてもらうことで、緊張感を持って取り組むことができたようです。また、保護者の中には、それぞれの分野を専門とする方もいらっしゃり、調べたことについて助言をしてくださったり、交流したりする様子も見られました。これは子どもたちにとっては非常に大きな学びであったようで、そういった交流をした児童は、その様子を活き活きと話してくれました。

s-fig11 s-fig12 s-fig13 s-fig14

s-fig15 s-fig16 s-fig17 s-fig18

探究的な学びを進めていくためには、本校が掲げている6つのキーコンピテンシー(思考力、創造力、チャレンジ力、メタ認知力、思いやり、エージェンシー)を活用して取り組むことになります。授業者として、コンピテンシーの育成を意識して取り組んできました。教員も、児童への発問や助言、関わり方、その一つ一つを大切にするように変化しました。すると、子どもたちもじっくりと思考して取り組むようになったり、難しい調べ学習にもあきらめず挑戦したりするようになり、1人1人の創造的で多様な考えを生むことにつながりました。

探究的な学びの発表をポスターセッションで実施したのは今回が初めてとなります。今後は本校6年間の学びのまとめとして、この取り組みを継続していきます。

また、桐蔭学園では中等・高校ともに「探究」を学びの3本柱のひとつに位置付けており、「未来への扉」(=みらとび)と呼んでいます。こうした学びを、小学校の先のステップでも引き続き取り組み、さらに探究的な学びのプロセスを習得し、社会で活躍できる子どもたちになっていくことを願っています。

文責 玉井 山尾 瀬山

 

 

 

 

 

 

【6つのキーコンピテンシーを育むPC授業】

小学校では全学年、毎週1回「PC」の授業があります。この「PC」は主に1人1台個人持ちのiPadを用いて行っています。

 

「PC」は、使用するアプリの基本的な操作方法の確認をして、あとは子どもが自ら試行錯誤し、気づき、展開していく授業になっています。また、『個➝協働➝個』のアクティブラーニング型の流れの中で、子どもたち同士で、学び合い・教え合いをしながら進んでいきます。

デジタルネイティブな子どもたちは、そこから「習うより慣れよ」で様々な活用方法を見つけていきます。

まずはアクティブラーニングの「個」ができあがります。ただ、これはまだ途中段階です。

 

「個」の段階⇒自分はこのアプリでこういったものをつくりたい(主に創造力、思考力、チャレンジ力)

pc01 pc02 pc03

次に「協働」という学び合い・教え合いの段階になります。友だちに伝えることや教えてもらうことが学び合い・教え合いになり、自分で気がつくことで可能性が大きく広がります。

 

「協働」の段階⇒人に伝えること(主に思いやり)

学び合い(主にエージェンシー、メタ認知力)

pc04 pc05 pc06 pc07 pc08 pc09 pc10 pc11 pc12 pc13

そして、また「個」に戻り、新たに得た情報や材料を駆使して試行錯誤を行っていきます。

この流れを何度か繰り返していきます。

 

 

ここからは、今1年生が取り組んでいる授業の様子を紹介します。

今回のミッションは、「この1年間で学んだことをクイズにして、みんなで解き合う」です。各教科の復習になり、Springin’Classroom(アプリ)を使用して制作するのでプログラミングの学習にもなります。

子どもたちは、どんな問題を作ろうかなと一生懸命に考えます。また、友だちに楽しんでももらいたいので出題の仕方や演出を工夫していきます。

まずは「個」の段階。自分で考えます。

pc14 pc15

次に「協働」の段階。友だちに教えたり、教えてもらったりして、自分のクイズにつけ加える材料を見つけます。

pc16 pc17 pc18 pc19 pc20 pc21

最後に「個」に戻って作業をします。早速、友だちに教えてもらった出題の仕方や演出などを参考にさせてもらいます。

子どもたちからは、「自分のクイズが少し前より良いものになった。」という声が上がりました。また、「友だちにもう一度自分のクイズに挑戦してもらって、感想や意見を聞きたい。」という声も聞こえてきました。共に制作するという意識が芽生えてきています。

 

「個」➝「協働」➝「個」を3回繰り返したあとに中間報告したもの

pc22 pc23

子どもたちは、友だちと学び合い・教え合いながら、自ら試行錯誤し、みんなでより良いものを目指しています。

今後もこのように取り組んでいきます。

 

英検Day 2回目

今年度から新たな取り組みとして始まった「英検Day」の2回目が、1月20日(金)5・6時間目に行われました。

 

英検Dayとは、4・5・6年生の全児童が、英検の本試験にチャレンジするか、自分のレベルに合った英検の練習問題に挑戦するか、どちらかを行う日です。

桐蔭学園小学校では、小学校を卒業するまでに英検4級までを全員が取得できるように日々取り組んでいます。

 

 

この日も多くの子どもたちが、英検の本試験にチャレンジしました。

 

まず一足先に、本試験を受ける児童が試験教室に移動します。

残る子どもたちからは、「行ってらっしゃい!」「頑張ってねー!」とたくさんのエールを受け取りました。

 

今回本試験を受験しない児童は、それぞれ指定された教室で、英語科の準備したオリジナル練習問題に挑みます。

持参したイアホンとiPadを準備し、自分の挑戦したい級の英検問題をiPadのロイロノートから選びます。

 

こちらも本番さながら、抜群の集中力で課題に向き合います。

本試験同様、筆記とリスニングです。

問題は全てロイロノートのファイルに準備されているので、子どもたちは好きな級を選び何度も挑戦できます。

 

同じ級を2回チャレンジする子もいれば、2回目からは上の級にチャレンジする子など、自分に合った取り組み方をします。

 

今回も、「思ったよりもできた!」「もうちょっと聞き取れるようになりたい。」など、様々な感想が聞かれました。

 

子どもたちが「英語が前よりも理解できて面白い!楽しい!」と実感できる時間を今後も多く積み重ねていきたいです。

image1 image2 image3 image4 image5

 

【創造力・エージェンシー・チャレンジ力】 1年図工 「パフェづくり」

「みんな、パフェは好き?」みんなで、様々なパフェの写真を見ました。グラスに盛り付けられた色とりどりのパフェを見ながら、「美味しそう!」「お腹が減ってきたよ~。」と様々なつぶやきが聞こえてきました。まずは、食べてみたい理想のパフェを絵で描きました。ものすごいスピードで描く子どもたちにびっくり。様々なパフェが誕生しました。

IMG_2423 IMG_2433 IMG_2439

次はトッピングづくり。使用した材料は紙粘土です。「紙粘土に色を着けたいけど、どうしたらいいですか?」という質問をしてくれた子がいました。すかさず「私、知ってる!」と、他の子が教えてくれます。紙粘土に着色する方法をみんなで学びました。活動中も子どもたち同士で関わり合いながら学びが広がっていきました。そのような子どもたちの姿を撮影し、写真をスクリーンに映してみんなで眺めます。「本物みたい!」「この色はどうやってつくったの?」「この形、おもしろいな。」など様々なつぶやきが聞こえてきました。そのつぶやきを聞いた子どもが説明をしてくれます。図工では、子どもたちから生まれてきたアイディアを、みんなで共有する時間も大切にしています。さらにスポンジや、細かく刻んだ色画用紙も材料として加わります。「あ、スポンジケーキに見える!」「これはチョコチップに使おうかな。」「上から振りかけてみよう。」「スポンジを細かく切ってみよう。」新たな材料との出会いから、様々なアイディアが生まれてきました。

IMG_2550 IMG_2552 IMG_2555

IMG_1262 IMG_1259 IMG_1258 IMG_1257

完成したみんなのパフェを見て、「本当に食べられたらいいのになぁ…。」とつぶやいた子がいました。みんなに伝えると「食べることはできないけど、お店屋さんごっこならできそうじゃない?」というアイディアが出てきました。必要な材料や道具をみんなで出し合い準備を始めます。自分のパフェの良いところをお客さんに伝えるためにポスターをつくった子。お友達と協力してお店をつくった子。お店にたくさんのお客さんに来てもらうためにマスコットキャラクターをつくった子。みんなでお店屋さんごっこが良くなるようにアイディアを出し合い準備を進め、お店屋さんごっこを楽しむことができました。

IMG_2659 IMG_2661 IMG_2674 IMG_2676 IMG_2688 IMG_2706

今回、お店屋さんごっこがもっと面白くなるためにはどうしたらよいかを考えながら、準備することができました。この活動はエージェンシーの育成につながると考えています。エージェンシーとは、自身の成長にとどまらず、それらを活かして身近な社会をよりよくすることができる力のことを指しています。図工の学びが、未来に一歩踏み出す子どもたちの背中をそっと後押しできたらいいなと考えています。

文責 大井勇輝