南極授業(2014年2月実施)での生徒達の学びとは

~地球環境に関心を持つべき今だからこそ~

140207外中継

 こんにちは! 桐蔭学園高等学校の教員(地学科)の高野といいます。私は今から7年半前に第55次南極地域観測隊に同行して昭和基地から桐蔭学園の生徒達に向けて南極授業を行いました。当時の中学1年生(2日間の南極授業を両日とも受けた唯一の学年の生徒達)は二十歳となり、今年成人式を迎えました。

 今回再現したのは、授業2日目の、小学5年生~高校生までの約1,500名を対象に、学園の大きなホール(現桐蔭学園シンフォニーホール)で行ったものです。スクリーンに映し出される圧倒的な南極の自然の風景と、南極の自然のリズム、人間活動の地球環境へ及ぼす懸念、そして何より私が南極で目にし、触れることのできた地層や鉱物への喜びと興奮がリアルに伝わってくるものでした。南極授業を受けた、当時の中学1年生の所感文から3つを紹介します。

①「南極で二酸化炭素をどうやって測定しているのかなと思っていました。授業を受けて、こんなに大がかりに二酸化炭素を測っているとは思いませんでした。今までの測定結果を見て、こんなに二酸化炭素が増えていることを知り、今後も今のように増えていったら地球はどうなるんだろうな? と思いました」⇒この生徒は、南極での二酸化炭素濃度の変化から、地球環境の過去を知り、現在を捉え、未来を予想しています。この文章から物事の本質をとらえる力を感じます。

②「授業を受けるにあたって調べたことや学習したことの中にも、授業を受けて新たな発見や疑問が生まれました」⇒この生徒は、授業で本物を目の前にしたとき、それまでの知識との違いに疑問をもつことで、新たな発見に繋がっていくということが分かっています。

③「一番印象に残ったのはガーネットという石の話でした。昔ここは深い場所でエベレストのような所だったそうです。ガーネットの存在から地球の歴史を知れてすごいなと思いました」 ⇒この生徒は、壮大な南極の自然の中に「なぜ?」という疑問をもち答えを追求してゆく私の姿に、野外調査の面白さと理科の楽しさを感じていることが分かります。

所感文には、授業内容の他の例を挙げて、同様に「楽しかった」という生徒がとても多く見られました。

 当時の中学1年生は、年間の総合学習のテーマを「自然環境について考える」として、入学直後から南極授業に向けた学習に取り組みました。火山噴火の実験、富士山麓での土星の観察、地球の歴史や太陽の動きについての実習や講義、地球環境問題についての講演を受け「エコ」とは何かを考えること。これらの事前学習で、本物を見て、触って、感じて考える(疑問をもつ)。そして知識を使ってその疑問を解決してゆく経験があったからこそ、生徒達には「南極授業の楽しさ」が伝わったのだと思います。これが南極授業での生徒の学びの一つ目、理科の楽しさを知ったことです。帰国後、普段の授業で学習分野に合わせて南極の写真や動画を見せていました。それらをもう一度合体させて今回の「南極授業プレイバック」という動画(5つ)にしました。この授業動画を見ていて、南極の自然から「人も他の生物達も地球の上で生かされていて、海も陸も空気も全てのものが関わり合っている」というメッセージが伝わってきました。もう1つだけ、中学1年生の所感文を紹介させて下さい。

④「2日目は「地球のリズム」についてのお話でした。人間が地球のリズムを乱していることが悲しかったです。地球も人間も幸せになれる方法の一つが、お互いのリズムを感じ合うことだと思い、まずはそこからだと思います」⇒当時の南極授業を受けた生徒にも、南極の自然からのメッセージがちゃんと伝わっていました。南極授業での生徒の学びの二つ目、それは「人間が自然と共存してゆくための基本的な考え」に気がついたことです。

 最後に、今回の動画をつくるきっかけは、普段授業をしている生徒達からの「当時の授業内容を見てみたい」という意見でした。そういう考えをもち、意見を言える生徒達と毎日学び合える桐蔭学園という環境に感謝しています。それでは真夏の南極授業をお楽しみください!!

140207南極授業風景

以下、それぞれの動画の要旨です。

①南極派遣教員への道のり


授業案を考えていると「南極のことが知りたい、もっと分かりたい」という気持ちが湧き上がってきました。また「そこまでのことをどのようにすれば生徒達に伝えられるのか?」。どちらの気持ちも大切にしたいと思っています(応募時の履歴書より抜粋)。

②地表に残された気候変動の記録


観測船「しらせ」は暴風圏を越え、厚い海氷を体当たりで割りながら昭和基地へ向かっていきます。大陸沿岸の露岩域に氷河が残した数万年という気候変動のリズム。南極で見つけたたくさんの「なぜ?」に、知識と経験を使って答えを探してゆく。それがとにかく楽しい!

③南極の岩石が教えてくれたこと


南極大陸の面積の2~3%には様々な種類の岩石が露出しています。今から約5億年前、昭和基地周辺の岩石は大陸同士の衝突によってできた大山脈の地下にありました。その岩石が浅い所まで上昇してきたということを、変成岩の中にあるガーネットという鉱物が教えてくれました。水と木片を使った実験は南極授業ではライブで、今回は昭和基地からの野外ロケのものを使っています。

④生物たちがつくる命の循環


南極は地球上で最も原生的な(手つかずの)自然が残る場所で、生物の存在を許さない厳しい環境です。露岩域にある湖や池の底には、数百年間、命を繋ぎ続けているコケボウズがいます。陸上で鳥類やコケ類がつくる数十年、数百年という命の循環を目の前にしたとき「ドックン、ドックン」という地球の鼓動のようなリズムを感じました。その瞬間の様子を、南極授業そのままでお届けします!

⑤昭和基地での二酸化炭素濃度の観測


昭和基地の観測棟から北の空を撮った写真には、地球上で最もきれいな空気が写っています。しかしその空気中の二酸化炭素濃度が過去数十万年間になかった速度で上昇しています。文明社会から最も遠い南極の空気は、地球環境の現状を私たちに教えてくれているのです。

【動画を見て南極に興味をもち「自分も南極観測隊に入って行ってみたい」と思った人へ】

南極では、様々な職種の方達と共に仕事をさせて頂きました。皆さん「南極が好き」でその仕事のエキスパート(経験を積み、高度の知識、技術、技能をもった人達)でした。南極に行く一人一人の仕事には目的があります。その目的が「地球の未来のため」という南極観測全体の目的としっかりと繋がっていました。もし将来南極に行きたいと思うなら、その仕事のエキスパートとなり、その仕事の目的が「地球の未来のため」という観測隊の目的と繋がっていれば「行けます!」(高野 直)

以下は、当時のTOPICSのアーカイブです。

国立極地研究所の広報誌「極」No.14で誌上「南極授業」としてとり上げていただきました

国立極地研究所の広報誌「極」No.14 more
他のバックナンバーはこちらから

line

140106
【日時】 【場所】
2014年2月6日(木)15:30~ 女子部1階マルチパーパス

地球の丸さを感じよう Feel The Globe!

南極昭和基地の高野先生と桐蔭学園に加えて、
アフリカのガーナ、北欧スウェーデンの学校を結び、
「世界4地点同時中継」で地球の自転の授業を展開します。

終了しました
ライブスケジュールはこちら
【日時】 【場所】
2014年2月7日(金)15:30~ 鵜川メモリアルホール

南極ってどんなところ?

生物にとって苛酷な南極の環境を紹介します。

昭和基地周辺の岩石のふしぎ

昭和基地周辺には、密度の大きな変成岩という岩石があります。
いったい、この岩石はどうしてできたのでしょう。

自然のリズムと、近年のCO2上昇

ここ昭和基地で観測されるCO2濃度が上昇を続けています。
これを私達はどう受け止めたらよいのでしょうか。

終了しました
ライブスケジュールはこちら

南極授業(2/6女子中1向け)海外の学校との接続試験を行いました

いよいよ高野先生による南極授業まで2週間を切りました。

今回の授業は2/6と2/7の2日間行われます。
両日共、南極昭和基地と国立極地研究所を結ぶ専用回線を桐蔭学園と接続して行われます。
2/6(木)は女子中1向けで女子部マルチパーパスで行います。
2/7(金)は鵜川メモリアルホールにて地学選択者、中等1年全員、小学部56年生、そして前日に引き続き女子中1の他、各学年の希望者が集まります。

hangouts_test

このうち2/6(木)の女子中1向け授業は、海外の2つの学校を交えて太陽の動きの観察から地球の丸さを実感しよう、という内容です。
つまり世界4地点同時中継授業という大胆なプロジェクトです。

  • 南極昭和基地 高野先生
  • 桐蔭学園女子中1
  • ガーナ共和国(西アフリカ) テマ セカンダリースクール Tema Secondary School,Ghana
  • スウェーデン(北欧) サティラスクール Satilaskolan (JHS ages) Gothenburg, Sweden

この4地点の緯度・経度の違いが太陽の観察結果にどんな違いをもたらすのでしょうか?
実はこの話が持ち上がったのは、昨年JAXA(宇宙航空研究開発機構)の佐藤毅彦さんと桐蔭学園の理科教員の会合の場でした。
佐藤教授は惑星や惑星探査の研究に加えてインターネット天文台を海外に設置するプロジェクトをしており、上記2カ国の学校と緊密なつながりを持っています。

昨日(1月24日)午後6時から、南極を除いた4地点での接続試験を行いました。(桐蔭、佐藤教授、ガーナ、スウェーデン)。
これはふつうのインターネット上で利用できる「グーグル ハングアウト」というサービスを使っています。
いわゆるスカイプと似ているものです。
結果はとても良好で、各国の映像、音声も良好に受け取ることができました。

ちなみに南極授業当日は、ガーナ、スウェーデンの学校はどちらも20名程度の生徒と先生が参加します。
お楽しみに!

line

このたびの南極授業の実施に関しまして、桐蔭学園中学校女子部にipadのご提供いただきましたソフトバンクテレコム株式会社様には、厚くお礼申し上げます。

ソフトバンクテレコム株式会社