「真の生きる力」を養うために

 高度情報化社会の到来により、私たちはインターネットというツールを用い、最先端の知識から世界の隅々で起こる出来事まで、瞬時にしてキャッチすることができるようになりました。そのことは間接的経験が飛躍的に増大したことを意味しています。だが、「生きる力」とは本来、自らの体験と伝聞(他から教えられた知識) から出来上がっています。したがって、子どもたちが自らの体験としてそれらを主体的に獲得できる場と方法が学校にはなくてはなりません。桐蔭は施設の拡充を図りながら、そのような場を子どもたちに与えることについて様々な工夫と努力を重ねてまいりました。さらに子どもたちが「知」を確実に身につけるための体系的な方法と技術を確立してきました。

 また近年、生涯教育、生涯学習の機会は格段に拡がってきましたが、成長の過程で習得する教育が適時・適切に行われないと、子どもたちの真の成長は望めません。いまの子どもたちの肉体的成長には目覚しいものがあり、戦前・戦中はもとより10年前と比較しても、まったく素晴らしいものがあります。それは間違いなく経済的な豊かさのおかげです。

 だが、そうした肉体的な成長に反比例するように精神的な成長や知の獲得は、確実に劣ってきております。そのことはとりもなおさず、日本の教育が世の中の動きに対応してこなかったからではないでしょうか。巷には「生きる力」を失った子どもたち、教養のない大人たち、権利ばかり主張する自己中心的な大人たちが溢れています。そのような時代の流れと環境の中で、子どもたちがまともに育つはずがありません。こうした時代の流れを正常に戻し、社会の混乱に押し流されない、真の「生きる力」を養うための教育ができるのは、桐蔭をおいて他にはないと自負しております。

 そうした学校の方針に賛同していただいている父母の皆様方のご協力と教師一同の努力により、桐蔭には理想的な環境と教育方法が確立されてきております。皆様方のさらなるご協力とご理解をいただき、子どもたちが逞しい知力と能力を獲得し、社会の中で自由に活動していくための力を桐蔭でつけていくように努力してまいりたいと思います。