2014年に創立50周年を迎えた桐蔭学園、今まさに教育改革の真っ只中です。2018年4月に高等学校が男女共学となり、2019年4月には中学校と中等教育学校が中等教育学校に一本化され、男女共学となります。
今回はその背景と展望を岡田直哉校長がじっくりと語ります。6000字超のロングインタビュー、4回連続掲載の最終回です。
―校長就任後約1年が経過しました。印象的な出来事はありますか
本当にあっという間に1年が過ぎようとしています。印象に残った出来事をひとつお話しすると、昨年12月の中学校女子部の合唱コンクールです。
コンクールなので順位を競いますが、中3のあるクラスの自由曲の演奏中に、伴奏の生徒が途中でピアノが弾けなくなってしまいました。
曲は進行していて止めることはできない。ピアノの子はそれ以上弾けなくなり、ただうつむいた状況でした。
合唱は伴奏のないまま続き、周りの子が手拍子を打ったりして、うまい具合にサポートをしていました。その後結果発表があり、やはりそのクラスの順位はあまりよくありませんでした。
すると発表後、実行委員の生徒が私の所に来て、「先ほどのクラスの演奏をもう一度やらせてもらえませんか」と、相談したのです。
私は、「これはコンテストだから順位は順位として出そうね。ただもう一度演奏するのはいいよ」と言いました。
後から聞いた話ですが、どうやら何らかの事情でそのクラスの自由曲の譜面が届かず、本番には譜面なしで臨んだらしいのです。
その後、中学1・2年生が退場した後、3年生だけが残って、そのクラスの自由曲を、譜面が届いた段階で歌ってもらいました。
その演奏が見事だったのです。生徒は皆泣きながら手を繋いで歌っていました。他のクラスの生徒も手拍子をして聴いていました。そのやり直しの最後の一曲は非常に私の心に響きました。
これから高校生になる生徒たちにとって、この合唱コンクールは中高6年間の中でも深く思い出に残り、大人へのステップを踏んだ出来事になったと思います。
将来彼女たちが同窓会を開いた時に、必ず話題に上るエピソードになるでしょう。私も非常に感激した、心温まる出来事でした。
コンクールが終わった後でもう一度やらせて下さいと言ってくる交渉力は女子生徒ならでは、ではないかとも思いました。
どちらかというと男子生徒にもそういった企画力やとっさの判断力を身に付けてもらいたいし、男女共学となる中等教育学校では、男女がお互いの長所を見習って相互に高め合える環境作りをしたいと思います。
―桐蔭に対する周囲からの期待を感じますか
この1年間、様々な場で桐蔭学園に対する期待の高まりを感じました。
昨秋、何度かに分けて高校の説明会を行いましたが、のべ9000人以上の方にご来場いただきました。
私たちにとっては嬉しい限りですが、同時に重い責任も感じています。昨秋に行った中等教育学校の説明会もすべての回が満員になりました。
この桐蔭に対する期待にしっかりと応えられるように頑張っていきたいと思いますし、また学校にこんなことをしてほしい、といった提案を受験者や保護者の方からいただいても面白いかなと思っています。
―校長として今後どのように取り組んでいくかを教えてください
この1年、桐蔭では様々な改革が始まっていますが、やはりこの4月からが本当の改革元年になると思っています。
いろいろ新しい取り組みの企画もありますが、それらをひとつひとつ実行に移していく。具体的な教育の成果を生徒と一緒に出していく。これが私の2年目の仕事だと思っています。是非ご期待いただければと思います。
また、桐蔭学園のイメージを変えたいとも思っています。50年の伝統の中には素晴らしいものがたくさんありますが、「次の50年」にフィットした桐蔭学園を考え、新しい桐蔭学園のイメージ、桐蔭学園のブランドを作っていきたいと思います。
(終)
mail koho@toin.ac.jp
TEL 045-971-1411(代表)