2019年4月、桐蔭学園中等教育学校は、男女共学として新たな一歩を踏み出しました。共学化した中等教育学校の学校生活や桐蔭学園の学びについて、岡田直哉校長自身の言葉で皆様にお届けします。
インタビュー第1回では、男女共学化した中等教育学校の様子や、教育の3本柱の一つである「アクティブラーニング型授業」についてお届けしました。
第2回では、3本柱の残りの二つ「未来への扉(探究)」と「キャリア教育」についてお届けします。3回連続掲載の第2回目です。
―教育の3本柱の一つである「未来への扉(探究)」について
桐蔭学園の探究では「一生涯学び続ける力を育成する」という目的で授業を展開しています。
週に1時間の総合的な学習の時間を探究的な学習と位置づけ、「未来への扉」という授業名で「1 課題の設定⇒2 情報収集⇒3 整理分析⇒4 まとめ・発表」という活動のサイクルで課題に対する理解を深める学習をしています。
他の科目とは異なり、この授業は「学び方を学ぶ科目」であるとも言えます。
―中等教育学校の1年生の具体的な授業内容は
本校はキャンパス全体が緑に囲まれています。この豊かな自然環境を生かして、中等教育学校の1年生は「自然」を舞台に探究活動を始めています。
授業ではグループでキャンパス内を歩き、植物や木の実を拾います。その収集物を元に、原始的な生活について考えるという授業です。
「はたして採取した植物だけで生きていけるのか?」がテーマの「サバイバルネイチャーゲーム」という授業プログラムです。本当に楽しそうな名称で(笑)
生徒たちは食べられる植物、食べられない植物などについて学び、貸与されているiPadでその成果を発表します。もちろん、発表前にはグループで討論を重ねて、より充実した発表を目指します。
学年全体の発表会の時には、ゲストの早稲田大学探検部の方に各班の「サバイバル度」についてお褒めの言葉をもらえて、生徒たちは笑顔でいっぱいでした。
豊かな自然の中で学ぶということが、探究の授業において非常に大きな役割を果たしたと、改めて実感しているところです。
また、その延長として学校近くの「寺家ふるさと村」でのフィールドワークも行いました。これは自分たちが生活する地域との関わりについて深く考えるきっかけになりました。
―「キャリア教育」についてはどのような方向性を
中学生には、キャリア教育はまだ早いのではないかという声もあります。
一般的にキャリア教育というと、狭い意味での「職業教育」といったものとして捉えられる傾向がありますが、本校のキャリア教育は「自分の人生をデザインしていく」ためのものと捉えています。
確かに職業というものは人生における比重が低いものではありませんが、それが人生の全てではありません。
また職業を選択する上で、自分はどうありたいのかということも重要ではありますが、その観点だけから自分のあり方を考えるわけでもありません。
本校では、自分の人生を「トータルにデザインしていく」という観点からキャリア教育を展開していますので、必ずしも中等1年生の段階から行うのが早すぎるなどとは思っていません。
むしろこの時期から自分の人生デザインに取り組んでいくことは、生徒にとって大きなプラスになると考えています。
―学校生活では具体的にはどのような「キャリア教育」が
私たちは学校生活のすべてが「キャリア教育」につながるものと考えています。その中で、現在中等1年生が取り組んでいるものとしては、「1分間スピーチ」が挙げられます。
この活動では、生徒はクラス全員の前で自分の意見を発表します。この活動の根底にあるのは、もはや本校の文化といってもよいと思いますが、「傾聴と承認」です。
端的に言えば、「他者を尊重し話をしっかり聴く(=傾聴)、そして他者を尊重し肯定的な反応を示す(=承認)」ことです。
肯定的な反応とは具体的には「拍手をする」ということです。「1分間スピーチ」を終えて全員から拍手をもらうと、発表者は本当に嬉しそうな表情になります。
生徒同士が「傾聴と承認」を基盤とした活動を行うことによって、他者を認め、多様性を認める雰囲気が自然と醸成されてくるという実感があります。
―9月中旬には学園祭もありますね
はい。学園祭のように仲間と一緒に一つのものを作り上げていく活動も、生徒にとっては大きな学びとなります。
生徒は仲間と協力して企画を練り上げていくのですが、お互いの意見が合わずにちょっとした諍いが起こることもあります。
意見を共有したり、時には熱く議論をしたりすることも、本校における「キャリア教育」の一つであると考えています。
生徒たちの情熱が詰まった学園祭の企画、ぜひ多くの方にご覧いただきたいと思っています。
インタビュー第2回では、教育の3本柱のうちの二つ「未来への扉(探究)」「キャリア教育」についてお届けしました。
最終回は放課後のさまざまな活動である「アフタースクール」、そして受験生へのメッセージなどをお届けします。
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