2021年4月、桐蔭学園中等教育学校は探究授業「15歳のグローバルチャレンジ」を始動しました。
生徒は3人~4人のグループで或る国の大使となり、学年末の模擬国連会議に向けて1年間かけて諸問題の解決に取り組みます。
世界大会7年連続出場を誇る模擬国連部での活動をベースとした日本初の試みで、グローバルな視座を獲得する意欲的なプログラムです。
この連載では、1年間にわたって3年1組の「15歳のグローバルチャレンジ」を追い、生徒の取り組みを様々な角度からレポートします。
第1回 授業テーマ「この授業は何? 担当国はどこ?」
探究授業「15歳のグローバルチャレンジ」とは、世界の様々な国の立場から、より良い世界を作るために世界が団結して取り組むことを考えるという授業です。
第1回の授業では、橋本雄介教諭がこの授業の目的を生徒と共有するところから始めました。
①今までと異なる視点で世界を見るため
②さまざまな角度から分析する練習をするため
③全員の力を結集し、解決策を作り上げる経験をするため
特に①において橋本教諭からは「『日本に住む中学3年生』という立場を捨ててほしい!!」「思いがけない視点から世界を見てほしい!」という強いメッセージが送られました。
その後、いざ授業開始となったところで最初に生徒に投げかけた問いは「そもそも国連って?」でした。
「国連は、国際協力と対話によって、紛争を平和的に解決するために作られた機関だ。そして国連総会は、全加盟国が参加して国際問題について議論する場だね」
「それぞれの国には守るべき利益があるよね。関係が必ずしもよくない国同士も当然たくさんある。それでも、総会では議題の『全会一致』を目指していこう!」
橋本教諭の説明に熱が入ります。
そしていよいよ担当国の発表! 生徒たちにとっては緊張の一瞬です。
3年1組へランダムに割り当てられた国は以下の10か国。国名を告げられた生徒たちの反応は実に様々でした。
日本
ミャンマー
コートジボワール
チャド
南スーダン
ポーランド
サウジアラビア
チリ
コスタリカ
カナダ
橋本教諭によると、「先進国」「発展途上国」「宗教の多様性」「大陸のバランス」など様々な視点で全70か国を選定したとのこと。
担当国のイメージを生徒たちに聞いてみたところ、
「チャド…聞いたことない…」「コートジボワールってどこ??」「ミャンマー…ひょっとして今すごく大変な国?」「サウジアラビア! お金たくさんありそう!」
と様々でしたが、橋本教諭のこの一言に全員が耳を傾け、大きくうなずいていました。
「すべての国、すべての命に、替えの効かない意味があります。はじめは担当国に愛着がわかないかもしれません。しかし、あなたたちにしか語れないことがあります。その国の代表として、誇りを持って、世界にしっかりと発信してください」
生徒は担当国に様々なイメージを持っていますが、それ自体がすでに、世界が大きな多様性を帯びているということです。それぞれの国をよく知り、誇りを持って各国と実りある対話をしてほしいところです。
授業の最後に行うふり返りから、生徒の意気込みを紹介します。熱い思いと大きな期待が伝わってきた第1回の授業でした。
「担当国がミャンマーに決まった時は残念な気持ちになった。自分たちでは問題解決しきれないのではないかと不安」
「日本ではあまり聞かないポーランドの担当になりました。年度末の会議が終わる頃には『ポーランドの存在、大きかったなあ』と思ってもらえるような事をしたいです!」
「自分が担当する国はもちろん、担当しない国のことを知ることで、今、国際政治がどうなっているのかわかるはず。がんばります!」
橋本教諭は「生徒の目がキラキラしているのが教壇からはっきりとわかりました。日本の中3という立場を捨てて、新しい視点を獲得してほしいですね。今日はその第一歩でしたが、とても楽しかったです」と話していました。
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