2021年4月、桐蔭学園中等教育学校は探究授業「15歳のグローバルチャレンジ」を始動しました。
生徒は3人~4人のグループで或る国の大使となり、学年末の模擬国連会議に向けて1年間かけて諸問題の解決に取り組みます。
世界大会7年連続出場を誇る模擬国連部での活動をベースとした日本初の試みで、グローバルな視座を獲得する意欲的なプログラムです。
この連載では、1年間にわたって3年1組の「15歳のグローバルチャレンジ」を追い、生徒の取り組みを様々な角度からレポートします。今回は第3回の授業の様子です。
前回の第2回授業では、生徒たちは自分の担当国についての基礎知識を得るために、様々な資料を用いて「基本情報シート」を完成させました。
「15歳のグローバルチャレンジ」授業レポート第2回 自国の基本情報を把握しよう!
3年1組へ割り当てられている国は以下の10か国です(毎回確認します)。
日本 ミャンマー コートジボワール
チャド 南スーダン ポーランド
サウジアラビア チリ コスタリカ カナダ
第3回 授業テーマ「担当国PRプレゼン資料を作成しよう①」
今日の授業の目標は
① 観光地・文化など「自国の魅力」を大使団で共有することができる。
② 発表に向けての計画を立て、共有することができる。
の2つです。大使たち(生徒たち)は今回も力を合わせて担当国の魅力発掘に取り組みます。
毎回授業の冒頭で、橋本教諭は世界の動向を知るニュースを伝えます。
今日はインドのコロナウイルスの感染状況についてのお話でした。
「残念なことに、インドでは1日の新規感染者数が40万人を超えています。インドは人口約14億人で、日本の約10倍です。しかし新規感染者は約100倍と、大きな開きがあります。世界にはこのような厳しい状況の国があることを知ってほしいと思います」
なおこの事態に、ユニセフ(国連児童基金)は酸素濃縮器などの医療支援物資をインドに送りました。「今世界で起きていること」に対して、国連が果たす役割を知る機会となりました。
さて、前回授業で担当国の基本知識を得た大使たちは、「国連で自国の魅力PRする大会が開かれることになった」という設定に挑むことになりました。
目的は「お互いのより深い理解のため」です。このところ暗いニュースが多いので、できれば明るい話題を世界に提供したいところです。
橋本教諭は「自分の国の魅力ってなんだろう?観光の観点から考えることもできるし、自然や地形などの地理的視点、食事や服装などの文化的視点からも考えることができるね」「ではまずは個人ワークで8分間、できるだけ多くの視点を書き出してみよう!」と調査開始の合図を出します。
大使たちはウェブサイトや参考図書にあたりながら、様々な観点で自国の魅力を書き出していきます。
さあ8分経過。橋本教諭から「次の5分間はグループワークです。順番に自分の観点を発表してください。新しい発見があればどんどん書き足して自分のワークシートを充実させていきましょう」と指示が出ます。
この協働作業は、お互いの視点を共有して、さらにアイデアを膨らませることが目的です。
「個」の活動から「協働」の活動への展開で、大使たちの間でより活発なやり取りが行われます。「なるほど、そんな視点もあるのか」「みんなに同じような視点ばかり。国のイメージが固定しているのかな?」協働作業では様々な発見があります。
最後のワークは今日のメインディッシュ。各大使の視点を検討し「担当国のキャッチコピーを作る」という活動です。
自国PRのプレゼンテーションでは、国のキャッチコピーを入れることが必須条件となります。橋本教諭は以下のような例を示して生徒の活動を導きます。
スペインは…「情熱の国」
マダガスカルは…「インド洋の楽園」
ネパールは…「神々の棲む国」
さあ大使たちは協働で自国のキャッチコピーの制作に取りかかります。「何を売りにする?」「『国王最高!』とかどう?」各自の自由な発想をぶつけながらひとつのコピーを作り上げていきます。
では、出来上がった担当国のキャッチコピーをいつくか紹介します。議論の末に紡ぎ出された「珠玉のコピー」です。
チャドは…「人類誕生の地」
ポーランドは…「消滅と再生の国」
コスタリカは…「世界最後の秘境」
最後に、「個」の活動に戻り、授業のふり返りを行いました。
「みんな調べたことがばらけていて、共有しながら話し合ったのが面白かったです。食べ物をはじめ文化が日本と全然違うので、みんなに楽しんで聞いてもらえる発表になると思います」
「我が国(コートジボワール)はカカオの生産量が2位のガーナに2倍もの差をつけて1位であることがわかりました!」
「南スーダンはいいところが10としたら悪いところが100、もしかしたら1000あるかもしれない。でも、がんばります。」
橋本教諭は「自国への理解と愛着が深まりつつあるのを感じます。自分の立場をしっかり引き受けた上で、自国の課題に向き合ってもらいたいと思います」と話していました。
お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、今日の授業は桐蔭学園のアクティブラーニング型授業の基本形である「個⇒協働⇒個」の授業展開となっています。
この授業スタイルを繰り返すことで、他者を尊重しながら自身の学びを深めることが可能となります。
模擬国連の活動をベースとした日本初の試み「15歳のグローバルチャレンジ」、桐蔭学園中等教育学校の挑戦はまだまだ続きます。
【15歳のグローバルチャレンジ 関連リンク】
mail koho@toin.ac.jp
TEL 045-971-1411(代表)