2021年4月、桐蔭学園中等教育学校は探究授業「15歳のグローバルチャレンジ」を始動しました。
生徒は3人~4人のグループで或る国の大使となり、学年末の模擬国連会議に向けて1年間かけて諸問題の解決に取り組みます。
世界大会7年連続出場を誇る模擬国連部での活動をベースとした日本初の試みで、グローバルな視座を獲得する意欲的なプログラムです。
この連載では、1年間にわたって3年1組の「15歳のグローバルチャレンジ」を追い、生徒の取り組みを様々な角度からレポートします。今回は第13回の授業の様子です。
前回の授業で「国連総会の流れ」について学んだ大使たち。前回のおさらいは以下のリンクからどうぞ。
3年1組へ割り当てられている国は以下の10か国です(毎回確認します)。
日本 ミャンマー コートジボワール
チャド 南スーダン ポーランド
サウジアラビア チリ コスタリカ カナダ
第13回 授業テーマ「国連弁当会議とは?」
今日の授業の目標は
・国連弁当会議の概要について理解し、お弁当に込める理念(願い)を考えることができる
です。
大使たちは前回授業で国連総会会議の形式や決議採択までの流れを理解しました。今回はそれを踏まえ、今学期行う初の国連総会、名づけて「国連弁当会議」について橋本教諭が説明をします。
「『国連弁当』とは、全国連大使が同じお弁当を食べるとしたら…という架空の設定のお弁当です。お弁当にどんな願いを込め、具体的にどんなメニューにするか、国連総会で話し合います。具体的なメニューとして、主食・主菜・副菜・デザートの4つを決めます。しかし、それぞれの国が自国の国益しか考えない状態だと、いつまで経ってもメニューは決まりませんし、各国の外交関係は悪化します。話し合いをする中で相互理解を深め、世界平和に一歩でも近づくことが国連の存在意義に沿う、と考えられます。目指すはSDGsと同じく、全会一致での可決です!」
授業内で、橋本教諭はお弁当の理念として想定される例を示しました。
例1)アフリカの文化を広める!
→アフリカの食文化を多くの国に知ってもらうためのお弁当。アフリカの食材・メニューで構成
例2)大使の健康を守る!
→激務である大使の健康を食の面から支えるためのお弁当。先進国で生産・調理された安全・安心なお弁当を提供
例3)温暖化を食い止める!
→沈みそうな島国や洪水被害の多い国の食材・料理で構成。温暖化被害国のことを想起する
どの例も、しっかりとした「理念(願い)」が感じられますね。
ちなみに、「国連弁当」は「主食」「主菜(メインのおかず)」「副菜(サブのおかず)」「デザート」の4つで構成され、決定したメニューは桐蔭学園食堂部の協力を得て実際に全員で食べる予定です(予算は1人1,000円!)。
なお、「国連弁当」は全大使が同じものを食べるという設定なので、決議案は1つしか通りません。自分が反対したメニューの弁当をいかに気分よく食べれるか、多くの仲間を得るための交渉も重要です。
今日の授業はオンライン学習期間中のため、各国に分かれてのグループワークはせずに、個人の理念を提出することになりました。
大使たちが考えた理念をいくつか紹介します。
・宗教などを踏まえ、誰でも食べられる料理を!(サウジアラビア)
・アフリカの飢餓と貧困を知るお弁当(南スーダン)
・気候変動問題について啓発するお弁当(チャド)
・SDGsの理念を踏まえた、誰一人取り残さないお弁当(ポーランド・南スーダン)
・どの国の人にもおいしいお弁当(コートジボワール)
・安心安全なお弁当(ミャンマー)
また、大使としてお弁当の理念を考えた後、「日本に住む中学3年生」の立場に戻ってのふり返りは…
「お弁当を考えるなんて簡単だと思ったけれど、実際に考えてみると奥が深い! この後どんな展開になるのか楽しみです」
「うちの国は宗教上の理由から豚肉が×、料理酒も含めてお酒も×、ゼラチンなども豚肉由来だと×。いったい、どんなメニューになるのだろう」
「国のパワーバランスを考えると影響力の強い国のメニューを採用するなど、一定の配慮が必要なのだろうか」
「いろいろな国の食文化を知ることができるいい機会だと思います」
担当の橋本教諭は「自国から考える視点と、世界全体を考える視点、そして日本で生活する自分の視点とが交錯していろいろな気づきが出てきているようです。ぜひ話し合いを通じて世界平和を実現してほしいと願っています」と話しています。
思ったよりも難しい「お弁当会議」。世界平和を目指した議論はまだ始まったばかりです。
【15歳のグローバルチャレンジ 関連リンク】
mail koho@toin.ac.jp
TEL 045-971-1411(代表)