2021年4月、桐蔭学園中等教育学校は探究授業「15歳のグローバルチャレンジ」を始動しました。
生徒は3人~4人のグループで或る国の大使となり、学年末の模擬国連会議に向けて1年間かけて諸問題の解決に取り組みます。
世界大会7年連続出場を誇る模擬国連部での活動をベースとした日本初の試みで、グローバルな視座を獲得する意欲的なプログラムです。
この連載では、1年間にわたって3年1組の「15歳のグローバルチャレンジ」を追い、生徒の取り組みを様々な角度からレポートします。今回は第14回の授業の様子です。
前回の授業で「国連弁当会議」について学んだ大使たち。前回のおさらいは以下のリンクからどうぞ。
3年1組へ割り当てられている国は以下の10か国です(毎回確認します)。
日本 ミャンマー コートジボワール
チャド 南スーダン ポーランド
サウジアラビア チリ コスタリカ カナダ
第14回 授業テーマ「自国が提案するメニュー作り」
今日の授業の目標は
・国連弁当会議の理念を踏まえ、その理念を具現化するためのメニューを考えることができる
です。
今会議で決定するのは、
① 国連総会に出席する大使全員が食べるお弁当
② 主食(メインのおかず)・主菜(サブのおかず)・副菜・デザートからなるお弁当
です。
前回の授業では「国連弁当会議」をきっかけとして、世界全体がどんなことに目を向けるべきか(=弁当に込める理念)を考えました。どちらかというと世界全体のことを考えることがメインでした。
今日の授業では、担当国の立場から具体的なメニューを考えます。世界全体で目指す会議理念と自国の国益。この2つを同時に満たすメニューを作らなければなりません。
グローバルな視点で世界の未来を考えた上でローカルな視点に戻る、その難しさに直面する授業です。
今回の授業では、大使たちは主食・主菜・副菜・デザートから、自分が策定した会議理念を体現しやすい1つを選び、そのメニュー・食材から決めていきます。
担当の橋本教諭は、「みなさんは国の代表ですから、自国に明らかに不利益になる案を作ってはいけません。例えば、インド大使が『牛肉メインの主菜』を提案することはできませんね。なぜだかわかりますか?」と問いかけます。
答えはもちろん…インドで多くの人が信仰するヒンドゥー教では、牛は聖なる動物と考えられているからですね。
また、自国が選んだメニューが「国連総会での提案」であることを意識すると、他国大使と交渉できる材料になっているかどうかも重要な視点となります。
それでは、各国の大使がどのような食材を選んだのか、見てみましょう。
チャド大使や南スーダン大使は主食を選択しました。世界の中でも最も貧しい国の1つ、チャドではお米が手に入らず、雑穀を煮込んで食べています。この料理が、チャド大使が推す「ミレット」。
南スーダン大使はトウモロコシに似た「ソルガム」を推しています。ソルガムは高温と乾燥に強く、過酷な土地でも育てることができます。
また、実は「ソルガム」はアメリカ合衆国中南部でもかなりの量が栽培されており、後々の交渉のカードになる可能性もあります。
これらの国からは、今会議を自分たちの置かれている厳しい経済状況を共有する機会としたいという強い願いが伝わってきます。
特産品に誇りを持つコートジボワール・カナダはデザートを提案しました。。コートジボワールはカカオ、カナダはメープルシロップを使ったメニューを推しています。それぞれの国の特徴が出ていて興味深いです。
生徒のふり返りにも「自国に対するこだわり」と「他国への配慮」が感じられました。
・他の立場で考えるというのは、実際にやってみると本当に難しい!
・自国中心にならないように気をつけたい!
・国連弁当って、ご褒美企画かと思っていたのに(笑)すごく本格的な探究だと感じました
担当の橋本教諭は「世界全体に目配りしながら考える抽象的な理念と、自国を見つめながら考える具体的なメニューとの行き来が始まり、会議らしさが出てきました。ここからこの授業の本当の面白さが出てくるはずです」と話していました。
次回の授業では国単位でメニューをまとめていきます。オンライン授業は9月いっぱいで終了し、10月から対面授業が再開するので、久しぶりの大使団会合でどんな盛り上がりを見せるか楽しみです。
【15歳のグローバルチャレンジ 関連リンク】
mail koho@toin.ac.jp
TEL 045-971-1411(代表)