2021年4月、桐蔭学園中等教育学校は探究授業「15歳のグローバルチャレンジ」を始動しました。
生徒は3人~4人のグループで或る国の大使となり、学年末の模擬国連会議に向けて1年間かけて諸問題の解決に取り組みます。
世界大会7年連続出場を誇る模擬国連部での活動をベースとした日本初の試みで、グローバルな視座を獲得する意欲的なプログラムです。
この連載では、1年間にわたって3年1組の「15歳のグローバルチャレンジ」を追い、生徒の取り組みを様々な角度からレポートします。今回は第16回の授業の様子です。
前回の授業では「自国が提案するメニュー作り」に取り組んだ大使たち。前回のおさらいは以下のリンクからどうぞ。
3年1組へ割り当てられている国は以下の10か国です(毎回確認します)。
日本 ミャンマー コートジボワール
チャド 南スーダン ポーランド
サウジアラビア チリ コスタリカ カナダ
第16回 授業テーマ「自国の政策を提出する」
今日の授業の目標は
・自国内の意見をまとめ、政策案を作り、廊下に掲示することができる
です。
前回の授業では大使それぞれが政策を考えていましたが、外交交渉はあくまでも「国家間」の交渉となります。
大使団は「国の意見」を発信しなければなりません。よって、今日の授業では大使団長を中心にグループワークを行い、国内の意見の一本化を図ることとなりました。
国の意見は「政策方針書」として廊下に掲示されます。政策方針書の内容によっては、他国大使から「外交親書」が届くこともあるので、国としての意見をしっかりと表明したいところです。
橋本教諭は「政策方針書」の作成にあたって注意すべき点を大使たちに伝えました。
「自国のことしか考えないと、この後どの国とも連携できなくなります。例えば、『自国の食べ物を広める』といった方針では、仲間を作っていくことは難しいでしょう。また、『世界平和』といった抽象的な会議理念を設定すると、具体的なメニューとの接続が難しくなります。前回も確認しましたが、国連総会で『決議案』を提出するためには、10か国の仲間が必要です。これらの点をよく考えて『政策方針書』を作りましょう」
大使たちはグループワークを行い、自国の方針したうえで主食・主菜・副菜・デザートの仮メニューを作りました。
その後、他国の大使団を訪れ、お互いの理念について意見交換を行いました。
この意見交換では、さっそく仲間づくりの交渉も行われていました。「うちの国の主食は変えられないけれど、理念は近いからそちらの国のデザートをうちの国でも作ることにします」といった様子です。
他国との交渉が始まると、自分たちの理念を押し進めるだけでは話が進みません。主張するところは主張しながら、譲るところは譲る。仲間を作っていく上ではそのような交渉術も必要となってきます。
15分を越える交渉の末、自国の「政策方針書」が完成しました。
「政策方針書」は全クラスの廊下に貼ってあります。学期末の国連総会に向けて、仲間になれそうな国を探していくことが必要になります。次回の授業では、各国の政策を確認しつつ、どのような政策グループを作るかを考えます。
初めて他国と交渉を行った生徒たちのふり返りです。
・交渉で断られた時にどこの対応が悪かったのかを考えたところ、その国の利益が足りていなかったからだと気づいた(ミャンマー)
・交渉が始まると、意外と主張が強い国が多かったです。コートジボワールはデザートのみ推奨していたので大丈夫だったのですが、他の国では激しい話し合いがされていて、本格的だなと思いました。政策グループ同士でもすごい戦いがあって面白かったです(コートジボワール)
・日本、ミャンマー、チャドと政策グループを組むことができました。途中意見が食い違いそうになりましたが、ミャンマー大使やチャド大使の心が広くて安心しました。日本は結構こちらに任せてくれてありがたかったです。貧困と環境問題の両方を解決するためのグループが組めて良かったです。アフリカ以外とすぐに組めたのは意外でした。楽しかった~(南スーダン)
担当の橋本教諭は「交渉が始まり、爆発的な熱量を感じました。授業時間が終わっても交渉が止まらないのには驚きました」と話していました。
いよいよ他国との交渉が始まり、熱を帯びてきた「15歳のグローバルチャレンジ」。学期末の「国連弁当会議」に向けて大使たちの奮闘は続きます。
【15歳のグローバルチャレンジ 関連リンク】
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TEL 045-971-1411(代表)