2021年4月、桐蔭学園中等教育学校は探究授業「15歳のグローバルチャレンジ」を始動しました。
生徒は3人~4人のグループで或る国の大使となり、学年末の模擬国連会議に向けて1年間かけて諸問題の解決に取り組みます。
世界大会7年連続出場を誇る模擬国連部での活動をベースとした日本初の試みで、グローバルな視座を獲得する意欲的なプログラムです。
この連載では、1年間にわたって3年1組の「15歳のグローバルチャレンジ」を追い、生徒の取り組みを様々な角度からレポートします。今回は第17回の授業の様子です。
前回の授業では自国の政策提出に取り組んだ大使たち。前回のおさらいは以下のリンクからどうぞ。
3年1組へ割り当てられている国は以下の10か国です(毎回確認します)。
日本 ミャンマー コートジボワール
チャド 南スーダン ポーランド
サウジアラビア チリ コスタリカ カナダ
第17回 授業テーマ「会議の予想構図を描く」
今日の授業の目標は
・他国の政策を研究し、どことグループが組めるか、どこと対立しそうか、会議の予想構図をまとめることができる
です。
前回の授業では国連弁当のメニューについて政策案を作り上げ、それをもとに大使たちはクラス内の他国と交渉を始めました。
アフリカ勢(コートジボワール・南スーダン)は日本・ミャンマーとの話し合いを進めていたようです。多文化共生を標榜する国々も、お互いの理念をすり合わせて話し合いを進めていました。
ポイントは、食材・メニューといった具体レベルの衝突を避け、理念レベル(例:環境問題と貧困の解決!)での折り合いを目指して話し合いを進めていたことです。
この「理念のすり合わせ」の先に見えてくるのが「全会一致」の可能性です。
クラス内10か国中での交渉は始まりましたが、国連会議に参加するのは学年全体70か国です。全体を見渡す視点で議論を進めなければ、会議ではあっという間に取り残されてしまいます。
今回の授業では、大使たちは廊下に貼り出された全70か国の政策を分析し、自国がどんな政策グループを作るべきなのか、そして他にどんな政策グループができそうなのかを分析しました。
大使団でグループ同士の対立点・同意できそうな点を話し合っていくことで、会議戦略を共有していくのです。
今回の大使団長は膨大な情報をもとに分析し、わかりやすく出力すること・・・「戦略眼」が求められます。
橋本教諭は「10分で他国政策を読み、情報収集をします。近隣国家の動向を把握する担当、理念レベルで似ている国を見つける担当、メニューが似ている国を見つける担当など、役割分担を明確にしてから情報収集しましょう」と声をかけます。
さっそく大使団長を中心に担当が決まり、各国大使団は廊下に向かいました。
大使たちは「アフリカ各国の結束は固そうだな」「中国とアメリカは理念レベルでそんなに食い違っていないな・・・実際どう動くか・・・」などとつぶやきながら、鍵となりそうな国の政策の写真を撮っていました。
10分後教室に戻った大使たちは大使団長を中心とする輪となって、情報を集約し始めました。大使団長はそれぞれの大使の報告に対して頷きながら、内容をどんどんまとめていきます。
できあがった会議予想構図は、それぞれの国の思惑と現状把握が絡み合った力作が並びました。
生徒のふり返りには、それぞれの生徒に俯瞰的な視点が宿ったことがわかる記載が並びました。
・理念で中国とアメリカは似ているが、対立しがちなので実際はアメリカは中国ではなく日本と組むかもしれない。そうすると、我が国としてはアメリカとも組めるかもしれない。(南スーダン大使)
・順当な展開だとすると、自分たちの理念は負けてしまうと思った。しっかり調整してグループを大きくしたい。(ポーランド)
・ちょっと戦略を描く根拠が少ない気はしたが、なんとかなった。(他の大使が全員欠席のため、1人で全ての情報収集・分析をしたチリ大使)
担当の橋本教諭は「かなり難しいワークでしたが、チームワークの良さに助けられました。次回の交渉につながると思います。」と話していました。
【15歳のグローバルチャレンジ 関連リンク】
mail koho@toin.ac.jp
TEL 045-971-1411(代表)