2021年4月、桐蔭学園中等教育学校は探究授業「15歳のグローバルチャレンジ」を始動しました。
生徒は3人~4人のグループで或る国の大使となり、学年末の模擬国連会議に向けて1年間かけて諸問題の解決に取り組みます。
世界大会7年連続出場を誇る模擬国連部での活動をベースとした日本初の試みで、グローバルな視座を獲得する意欲的なプログラムです。
この連載では、1年間にわたって3年1組の「15歳のグローバルチャレンジ」を追い、生徒の取り組みを様々な角度からレポートします。今回は第18回の授業の様子です。
前回の授業では他国と交渉を開始し、会議の予想構図を描きました。前回のおさらいは以下のリンクからどうぞ。
3年1組へ割り当てられている国は以下の10か国です(毎回確認します)。
日本 ミャンマー コートジボワール
チャド 南スーダン ポーランド
サウジアラビア チリ コスタリカ カナダ
第18回 授業テーマ「外交親書起草・発信して会議を開始!」
今日の授業の目標は
・他国の政策・自国の戦略に基づいて、他国に親書を発信することができる
です。
今日の授業から、2学期末に行う「国連弁当会議」はスタートします!
実は、70か国が参加する国連会議で各国の公式発言の時間等を計算すると、会議全体は約12時間かかることにになります。
そこで、12月の国連会議までの授業で「実際の会議で行われること」に着手していきます。今日の授業では国家同士の手紙のやりとり、つまり「外交親書」の起草・発信を行います。
ちなみに、本番の「国連弁当会議」は3時間(180分)の予定です。
何度か触れているように、議題案を提出するためには10か国以上の国で共同提出する必要があります。そのため、
①似た政策を持っている国で集まってグループを形成
②グループ同士の政策をすり合わせて過半数を目指す
③全てのグループの合体を目指す
というステップを踏んでいくことが理想的です。
そこで、以下のような「外交親書」を送り、仲間を増やしていく必要があるのです。
【外交親書の例】
親愛なる○○大使
私たちは、貴国の掲げた会議理念は我が国の理念とほぼ同じだと認識しております。会議ではぜひ力を合わせて・・・を達成しましょう。同じグループとして行動していただけるか、お返事をお願いします。
○○大使
貴国は我が国と主食・主菜がほぼ同じメニューを提案しています。私たちはともに決議案を作るべきだと考えております。私たちは△△とも組みたいと思っていますが、貴国はどことグループを組むおつもりでしょうか。ご教示ください。
発信できる親書は各国4枚までとなっているため、大使たちはどの国に交渉を持ちかけるか検討を始めました。
その際に参考にするのは「各国が掲げる理念」です。各クラス前の廊下の貼られている政策シートを読み直して「○○国なら組めそうだ」「○○国とは理念が全く逆だからなあ…」と検討を重ねていきます。
すべての国が親書を書き終わったところで授業が終了しました。
さて、次回の授業では自国と組みたいという親書がどのくらい届くのか?「1通も来なかったらどうしよう…」と不安げな大使の姿も。次週のレポートもお楽しみに。
生徒のふり返りには、相手国の立場を考えながら親書を起草する苦労が綴られていました。
・ニュースでASEANの会議でミャンマーがのけ者にされているのを見て、アジアと組むのを断念した。本当はなんとか日本とは組みたいので、日本と組むであろうアメリカに親書を送ってみた(ミャンマー)
・4枚という限られた枚数の中で送る国を決めるのがとても難しかったです。どこの国に送ればグループとして動きやすくなるのか未来を見据えて考えるのが大変でした(ポーランド)
・組めそうな国だけでなく、理念が似てるけどこれから対立する可能性のある国に送ってみた。親書を有効に使えたと思う(コートジボワール)
担当の橋本教諭は「自国の立場で問いを立てるだけでなく、世界全体を視野に入れて問いを立てる大使が出てきました。視野を広く持つことで全会一致への道筋を見出すことができます。どの国が全会一致へと世界を導くのか、楽しみにしています」と話していました。
【15歳のグローバルチャレンジ 関連リンク】
mail koho@toin.ac.jp
TEL 045-971-1411(代表)