2021年4月、桐蔭学園中等教育学校は探究授業「15歳のグローバルチャレンジ」を始動しました。
生徒は3人~4人のグループで或る国の大使となり、学年末の模擬国連会議に向けて1年間かけて諸問題の解決に取り組みます。
世界大会7年連続出場を誇る模擬国連部での活動をベースとした日本初の試みで、グローバルな視座を獲得する意欲的なプログラムです。
この連載では、1年間にわたって3年1組の「15歳のグローバルチャレンジ」を追い、生徒の取り組みを様々な角度からレポートします。今回は第19回の授業の様子です。
前回の授業では、いよいよ「国連総会」会議がスタートし、他国に外交親書を発信しました。前回のおさらいは以下のリンクからどうぞ。
3年1組へ割り当てられている国は以下の10か国です(毎回確認します)。
日本 ミャンマー コートジボワール
チャド 南スーダン ポーランド
サウジアラビア チリ コスタリカ カナダ
第19回 授業テーマ「外交親書への返信・政策改訂」
今日の授業の目標は
①国連総会の流れの概要を理解できる
②他国からの親書に対応し、必要に応じて自国の政策を改訂できる
です。
最初に、いよいよ12月14日に迫った「国連弁当会議」に向けて、担当の橋本教諭から国連総会の流れが説明されました。
国連総会では、最初に過半数国数の確認が行われます。今回は70か国参加ですので、過半数は36か国となります。
次に、各国1分の公式発言が行われます。公式発言は、一気に70か国を行うのではなく、5か国ずつ行い、そのたびに会議を停止して政策が合致する国同士でグループを作っていきます。
グループ作りがあまり進んでいない段階では、スピーチの中で「まずは理念の近い国で集まりましょう」あるいは「○○地域で△△を達成しましょう」などと呼びかけるのが有効と思われます。
会議再開後、再び公式発言が続き、以後同じような流れを繰り返し、グループをできるだけ合体させての決議案の提出を目指します。
決議案を提出するためには10か国集まることが必要なので、まずはこの段階を早めに目指したいところです。
会議が中盤になってくると、すでに10か国以上集まっているグループは政策内容を共有し始めることになるでしょう。
この段階では、自国の主張以外にも例えば「今、我々はアメリカ合衆国・EUとともに15国のグループを作り、安心できる食材を集めたお弁当作りを進めています」というような自グループの紹介が有効になりそうです。
会議も最終盤、いよいよ全会一致が見えてくる頃には、自国の主張・グループの紹介・宣伝以外にも、この会議の意義づけを意識したスピーチが有効になるでしょう。
例えば、「この会議はこのまま全会一致に至れば、世界の貧困問題解決が大きく前進することでしょう。今後もより良い協力関係を作っていきましょう」などといった理念の一致を推し進めるスピーチが期待できます。
橋本教諭は「これはあくまでも理想的な展開ですが」と前置きし、会議失敗の2つの形も紹介しました。
それは、①決議案提出時間に1本も決議案が出なかった ②投票の結果、1本も決議案が可決されなかった、というものです。これは、国際社会が連携できなかったことを世界に示すことになります。
「目指すは全会一致での国連弁当の決議」です。大使たちの奮闘に期待です。
今日の授業は、会議開始とともに発信した「外交親書」を受け取ることから始まりました。
橋本教諭は外交親書を大使代表に渡します。「今から君たちの国に届いた外交親書をお渡しします。場合によっては1通も届かない国があるかもしれません(大使たちは不安そうな表情・・・)。
そして、外交親書には必ず返信しなければなりません。誠意ある返信をお願いします。また、親書の内容・返事の内容は大使全員で共有してください。大使一人一人がその国を代表しているのですから」
封筒を開けてみると・・・
「わ!!たくさん入っている!!」(10通以上の外交親書が届いた国も!)
「少ししか入ってない・・・」(果たして政策が合致する国はあるのか!?)
と、様々な反応です。さっそくいろいろな国からの外交親書に返事を書いていきました。
大使たちはそれぞれの国の政策と自国政策をつきあわせ、「論理的に齟齬がないか」をきちんと検討しています。たとえ「一緒に組もう」と言われても、理念が一致しない場合にはお断りの返事を書かなければなりません。
また、他国とのやりとりによって政策を改訂したい国も出たようです。先生から新しい政策シートをもらって改訂を施していました。
理念や政策を検討する表情は真剣そのもの。大使同士のやり取りも丁々発止の様子。国連会議の雰囲気が出てきて盛り上がる中、授業はタイムアップ。
次回の授業では国連会議における「公式発言」の練習をします。
生徒のふり返りを紹介します。
・同盟を組んでいると同盟国間で親書の内容を検討しなければならない。アメリカをとるか中国をとるかとか考えるのが大変だった。自国の方針を勘違いされていたり、相手国と自国の政策が少し食い違っていたりして断ることも多かった。(ポーランド)
・いろんな国から手紙が来ていて嬉しかった。アメリカと中国の両方から親書が来ていた。この2つの国が協力するのは可能だと思った。(ミャンマー)
・相手国に失礼のないような返信を書くのが難しかった。(南スーダン)
担当の橋本教諭は「『仲間になろう』という呼びかけに対して『わかりました』と簡単に答えるのではなく、その先にどういう展開が待っているのかをさまざまな角度から検討している姿に驚きました」と話していました。
【15歳のグローバルチャレンジ 関連リンク】
mail koho@toin.ac.jp
TEL 045-971-1411(代表)