2021年4月、桐蔭学園中等教育学校は探究授業「15歳のグローバルチャレンジ」を始動しました。
生徒は3人~4人のグループで或る国の大使となり、学年末の模擬国連会議に向けて1年間かけて諸問題の解決に取り組みます。
世界大会7年連続出場を誇る模擬国連部での活動をベースとした日本初の試みで、グローバルな視座を獲得する意欲的なプログラムです。
この連載では、1年間にわたって3年1組の「15歳のグローバルチャレンジ」を追い、生徒の取り組みを様々な角度からレポートします。今回は第24回の授業の様子です。
前回の授業では、学年末の国連会議に向けて自国の会議理念と政策をまとめました。
また、どの国と一緒に取り組みたいかを書いた「政策シート」を作り、大使団内で理念の共有を図りました。前回授業の様子は以下のリンクからどうぞ。
授業レポート第23回 学年末の国連会議に向けた「政策シート作成」
3年1組へ割り当てられている国は以下の10か国です(毎回確認します)。
日本 ミャンマー コートジボワール
チャド 南スーダン ポーランド
サウジアラビア チリ コスタリカ カナダ
第24回 授業テーマ「外交親書返信・予想構図を描く」
大使たちは年度末の国連会議に向かって着々と準備を進めています。議題は「地球温暖化」と「水問題」。4人の大使団が2人組に分かれ、それぞれの議題について政策を深めています。
今日の授業の目標は
①他国からの親書への返事を書くことができる。
②自国が属する政策グループについて・対立する可能性がある政策グループについて、まとめることができる。
です。
大使のもとには、政策シートをもとに理念が一致しそうな国から外交親書が届いています。
親書を書く際に重要視するのは「理念と政策をあらわすキーワード」です。地球温暖化対策として挙げられるワードは「排出ガスの規制」「炭素税の導入」「発展途上国への資金援助」など。
具体的な政策が自国と一致するかを検討し、親書を送ってきます。
例えば地球温暖化の会議では、他国から「貴国のカーボンニュートラル推進という政策は私たちの理念と一致します。ぜひ国連会議では協力しましょう」というラブコールが届くのです。
もらった親書は、相手国からの「問いかけ」です。問いかけに対し、大使たちは明確なデータ・根拠を示しながら返信を作っていきます。
同時に、大使たちは会議の予想構図を描くためのワークシートにも取り組みました。
「理念が一致していてグループを組めそうな国」「もしかしたら仲間に入ってくれるかも…と期待できる国」あるいは「政策が完全に相反するため、初期段階ではグループを組むのが難しそうな国」の具体名を挙げていきます。
具体的な国名を挙げていくと、それらの国々に共通する要素が見えてきます。「自分たちのグループに入れそうなのは発展途上国ばかりだな…」といった予想を立てることができます。
すると、「先進国にも納得してもらえるような政策は何かな…」という思考につながり、事前学習に広がりが出てきます。
この15歳のグローバルチャレンジは「日本に住む中学3年生」という立場を捨てるところがスタート地点。親書に返信を書き、会議の構図を予想する姿勢は、まさに国連大使としての思考とシンクロしています。
真剣なまなざしで会議の準備をする生徒たちの姿に大きな頼もしさを感じました。
次回の授業では公式発言の練習をする予定です。公式発言は2人で行い、使用言語は英語です。会議に向けて緊張感が高まってきました。
最後に、生徒のふり返りを紹介します。
・「カーボンニュートラルか脱炭素かというところにこだわって返事を書いた」(南スーダン)
・「国によってすぐに協力関係が築けるところもあれば、お互い譲れないポイントが少なからずあって関係を築くのが難しいところもあった。最終的には多くの国が共通の理念・目標を持ったうえで協力することが理想だ」(ミャンマー)
・「妥協できるラインを探すのが難しい」(コスタリカ)
担当の橋本教諭は
「前回の『国連弁当』よりも現実的な議題ということもあり、根拠に基づいた立論が多く見られます。各国大使は自国から見える世界をしっかりと把握し、安易な全会一致を目指さない姿勢を見せています。会議当日は迫力ある議論が展開されるのではないかと思います」
と、話していました。
【15歳のグローバルチャレンジ 関連リンク】
mail koho@toin.ac.jp
TEL 045-971-1411(代表)