2022年4月、桐蔭学園中等教育学校の校長に玉田裕之が就任しました。桐蔭学園中等教育学校の目指す方向や取り組みなどをインタビューでお届けします。2回掲載の前編です。
なお、2017年4月に就任した岡田直哉前校長は、引き続き桐蔭学園高等学校の校長および中等教育学校と高等学校を統括する立場を務めます。
―まずは玉田校長自身についてお聞かせください
1989年に桐蔭学園に国語科教員として勤務を始め、高等学校男子部に15年、担任として卒業生を5回送り出しました。
その後、中等教育学校(当時は男子校)で学年主任を13年務めました。高等学校の部長、中等教育学校の副校長を経て、この4月に中等教育学校の校長に就任しました。
―教員としての「座右の銘」は
「前途洋洋」です。卒業する生徒たちに「卒業アルバムに何か書いてください」と頼まれたとき、よくこの言葉を書いてきました。卒業する18歳の若者たちの前には未来が広がっている、ということです。この四字熟語は好きですね。
―教員生活で大切にしてきたことは
「自分が楽しいと思える授業の組み立てを考える」ことを大切にしてきました。教師自身が授業を、そして学問を楽しんでいなければ、生徒も楽しんで学ぶことができません。
この「楽しい」というのは、生徒を巻き込みながら授業をして、生徒も自分もその授業を楽しむ、ということです。
授業中の教師というのは「大人が働いている姿」ですから、それが魅力的でなければ、生徒も将来に夢を持てないでしょう。
―ではあらためて、校長に就任し力を入れたいと思っていることは
アクティブラーニング型授業、探究、キャリア教育という桐蔭学園の教育の3本柱を、先生たちとさらに研究を重ね、より生徒のためになるものにしていきます。
特にアクティブラーニング方授業については、2015年に本校で導入して以来、毎年推進委員の先生たちが研究を重ねてきました。
その中で、授業の最後に行う「ふり返り」の重要性を再認識させられることが多くありました。授業の最後にその内容を語り直すことができるかどうか、ということです。
「個⇒協働⇒個」というアクティブラーニング型授業の流れにおいて、最後にその時間に学んだことを「自分の言葉」で話せているか、これが授業の本質的な理解に至っているかどうかの分かれ目です。
―中等教育学校も共学化して4年目に入りました。どのような変化を感じていますか
アクティブラーニング型授業の根幹となるペアワークやグループワークが活性化している、ということが共学化の初年度から強く感じたことです。
ペアワーク・グループワークは「対話」ですから、多様性が重要です。男女共学になり、それぞれの視点からの意見が活発に出るようになり、真剣な話し合いが行われていると感じます。
生徒会の活動も、男子のみ女子のみの時よりもさらに充実したものになっています。アクティブラーニング型授業で培った協働性が大いに発揮されていると言えます。
学校の雰囲気は、いくぶん穏やかになったと感じています。生徒同士の適切な距離感が保たれ、お互いを思いやり、尊重し合うことによって温かい雰囲気が作り出されているのでしょう。
男女共学という環境の中で、クラスメイトのさまざまな考えに触れることは生徒たちにとって貴重な経験になるはずです。
―在校生たちに期待したいことは
2019年に男女共学化し、先頭の学年(19期生)は現在4年生(高1相当)になりました。前期課程の3年間、「学校づくり」を合言葉に新しい共学校の道を切り拓いてきました。
19期生にはこれからの3年間も「学校づくり」は続いていくという気持ちを持ってほしい。既定路線がない苦しさはあるかもしれないが、自由な発想で学校を作ること、それを期待したいです。
また、19期生も含め在校生すべてに問いかけたいのは、「自分が今誰かの役に立っていると感じられるか」ということです。
自分の好きなことをやることはもちろん大切ですが、それとは別に、クラスや学校に対して「自分の果たせる役割は何だろうか」と考えてほしい。
集団の一員として自分が主体的にその集団に何をできるか、その集団をよくしていくために自分には何ができるか、という発想は、エージェンシーと呼ばれる力に通じるものです。
この発想に至るには、生徒の「学びに向かう力」という資質の部分から育てて大きくしていくことが必要であり、そこにフォーカスしていくのが「新しい進学校のカタチ」であると考えています。
そして、この資質・能力はアクティブラーニング型授業を通して自然に身についていくものと考えています。
一方で、自分の好きなことをとことん追求していく姿勢は、探究(授業名:未来への扉)の授業で存分に伸ばすことができます。
昨年度から始まった中等3年の探究授業「15歳のグローバルチャレンジ」では、多くの生徒がゲームのように楽しみながら夢中になっています。
探究授業の中で生徒たちが熱中し、学び続ける姿勢が身についていく様子を目の当たりにすることができました。
探究の授業は1年生から5年生まで週に1時間あります。後期課程の5年生では、自分が選んだテーマで論文を執筆します。夢中になって筆を進める生徒の姿が今から楽しみですね。
(後編へと続きます)
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