学びの紹介
2022.06.01 (水)

中等教育学校の道徳授業を紹介します

中等教育学校前期課程(1年~3年)では、週に1回道徳の授業があります。3年生の授業の様子をレポートします。

「道徳」は2019年度から「特別の教科 道徳」という名称で教科化されました。

導入時には政治的な賛否の論争もあった教科ですが、実際に教科書のサンプルを見た時に私たちが感じたのは、アクティブラーニング型授業との相性の良さと、生徒の情操面のみならず思考力も伸ばせる魅力的な教科だ、ということでした。

道徳の授業は、答えが一つに決まらない日常生活のさまざまな問題について、クラスの仲間の多様な意見に触れることで視野を広げながら、自分の考えをしっかり持ち、実践に結び付けていく学習をします。

「正義と思いやり」「責任と自由意志」など大小の葛藤を感じる状況は、私たち大人が日常よく経験することです。

モラルのジレンマに陥った時にどう判断し、どう行動するかは、一人一人の「その人らしさ」に関わる問題です。だから道徳の学習は、ある一つの理想の人間像を目指すのではなく、一人一人がよりよい自分になっていく学習ということができます。

具体的には以下の①~③が学習の過程となります。

①道徳的諸価値(友情・公共・向上心・勇気等)を理解する。
②対話を通して多面的かつ多角的に思考する。
③考え、学習したことを実践に結びつける。
(個別の具体的事例を道徳的価値にあてはめて解釈することは、抽象化・一般化の思考トレーニングにもなっています。)

この日の3年生は、「自分の短所が気になり悩んでいた主人公が、クラスメイトから長所を指摘されたことで気持ちが前向きになった」という話を教科書で読んだあと、それぞれの短所・長所について考えました。

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配られたカードに生徒は自分の短所を匿名で記入します。

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短所はそのままその人の長所となるということが教員から講義されます。

「優柔不断は優しさと表裏の関係です。空気が読めないということは、自分の考えで行動できるということです」と授業が進みます。

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シャッフルして誰の短所かわからなくしたカードが再配付されました。
生徒たちは先程の講義を活かして、カードに書かれた「短所」について、それをそのまま読み換えた「長所」にしてカードの裏面に書いてあげます。長所を書いてあげた生徒は自分の名前を記します。

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お楽しみの「共有」の時間です。渡されたカードの短所について考えたことを周囲の生徒たちと話し合いました。もしかしたらこのとき、目の前の友だちに、自分の短所を長所だと言ってもらえている幸運な生徒もいるかもしれません。

あきっぽい←→いろいろなことにチャレンジできる
言い訳をする←→論理的に自分のことを説明できる
何事もギリギリになる←→熟慮している
マイナス思考←→先のことを深く考えることができる
三日坊主←→あきらめ上手

なかなかよく考えるものだと思います。

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なかには、「すぐいらいらする」と書かれたカードに「ストレスをためるくらいいろいろなことに気を配っているのだと思います。それが君の長所だと思います」と手紙のように書いてくれた生徒もいました。

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このクラスでは、ロイロノート・スクールというアプリを用いた共有の後、カードが最初の記入者に返されました。――カードの「短所」面に担任だけがわかるランダムな数字が記されていました。――

裏面にはクラスメイトの名前入りで、自分の「長所」が書いてあります。戻ってきたカードを見ながらの「ふり返り」が行われました。

ワークが進み、短所を長所に書き換えることを想像しているあたりから、子どもたちの顔が緩み始め、自然と笑顔になっていきました。

話し合いの場面では、楽しそうに短所を長所に読み換えていった様子を、お互いに承認しあい、たたえている様子がほほえましく、また、寄り添っている教員として頼もしく感じました。

そのまま、占い師になれるのでは? という言葉の数々に、ニヤリとしたり、盛り上がったりしていました。ふり返りは、真剣そのものでした。

道徳は前期課程3年間、週1時間の授業があり、全クラス基本的な組み立てについては統一しておこなっています。

今回は、「肯定的な自己理解を深め、個性を伸ばした生き方をしていく意欲を育てる」ことを目標とした学習となりました。

###Posted at 2022-06-01 17:01:31. Edited at 2022-06-01 17:20:30.###

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