― 平成27年度は、桐蔭学園にとってアクィブラーニング元年となりました。アクティブラーニング型授業の推進を通して、新しい発見はありましたか
以前から様々な話し合いの形は授業の中で行っていましたが、アクティブラーニングという言葉が入ってきたことで、ペアワーク(2人組でお互いの意見を交換する)、グループワーク(4人組などでお互いに議論する)、プレゼンテーション(大勢の前で発表する)といった活動を、場面と目的に応じて行っていく、ということをより意識するようになったと思います。
― 授業の形態が大きく変わってきています。それに伴って生徒に大きな変化があるのでは?
まだデータ上で判断できる生徒の変化はありませんが、私自身が肌で感じているのは、「話すこと、書くこと」というアウトプットすることに対して、生徒の中に抵抗感がなくなったということです。
以前はクラスの中に話すこと、書くことに苦労している生徒もいたのですが、そのような生徒はほとんどいなくなったと感じています。また、テストの記述答案を見ても、以前に比べて書くことへの抵抗感がなくなったように思います。
― 昨年12月に行われたアクティブラーニング公開研究会では、松永先生の授業に「クラス新聞読み比べ わかりあえないことから」というタイトルがついていますが、ここに込めた意味は?
私たちは「わかる」ことが正しく、「わからない」というのはあるべき状態ではないという固定観念にとらわれがちです。そこで「わからない」「わかり合えない」とは、まだ知らない魅力的な側面が物事にも人にもあって、それを発見する喜びを秘めている状態である、とポジティブに捉え直すことを狙いとしました。
― その点を踏まえての2年目の取り組みは
授業の中で「模擬裁判」という形をとって、生徒が演者として自分の考えを発表する機会を作っています。演じる形式をとることで、生徒の積極性を引き出すことができます。
とても活気があって、少しうるさいくらいです(笑)。授業が進んでいくうちに徐々にヒートアップして言い合いのようになってしまう時もあるので、「ディベート」ではなく「コラボベート」を目指したいと思っています。
― 「ディベート」ではなく「コラボベート」とは?
ディベートは論理的に相手を「言い負かす」という要素が強いのですが、そこにアクティブラーニングの「協働性」を掛け合わせたいと考えました。ディベートでは負けた方が納得したかどうかは別なので、納得度の高い議論をしようというところを目指して、ディベートと協働性と掛け合わせた「コラボベート」ということを始めました。
少数意見の人たちに対するフォローをするということで、「説得から納得へ」という点を意識しています。中3から高1にかけてそういうことができる人になってほしいという思いがあります。
― 生徒の取り組みは?
生徒も自分の意見をいうこと自体は雄弁になってきたのですが、他人の作品や意見に対して評価、コメントするための語彙はまだ少なく苦手です。論理的な議論を重ねる中で批評の言葉を獲得し、生徒の協働性を育んでいきたいと思っています。
― 松永先生にとってアクティブラーニングとは?
アクティブラーニングとは、例えていうならば「透明な糸」だと思います。これまでにも魅力的な授業や活動はありました。しかし、ばらばらだった。そこで、それぞれに輝く授業(星)をアクティブラーニングという糸で結ぶことで大きな星座を描くことができるようになった。つまり、ばらばらだった取り組みを位置づけし直すことで、体系的に学力を身に付けるチャンスが訪れていると思います。
第1回では昨年度から学園全体で取り組んでいるアクティブラーニング型授業について振り返ってもらいました。次回は担任としての松永教諭の姿と中学生時代の思い出に迫ります。
※このインタビュー記事は平成28年3月と7月に2回に分けて行ったものを編集したものです。
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