中学校女子部2年では、「平成29年度 中学生の主張 in かながわ」に応募するための作文を書くことを夏期研修課題に含めました。提出された作文を応募した結果、鈴木果彩さんが優秀賞7人のうちの1人に選ばれました。
「平成29年度 中学生の主張 in かながわ」は、神奈川県が主催する事業で、今年は1,792人から応募がありました。
最初の作文審査で優秀賞に選ばれた鈴木果彩さんを含む7人は、10月1日(日)、青少年センターにて開催された発表大会に出場しました。
以下に優秀賞(神奈川新聞社賞)を受賞した鈴木さんの作品を紹介します。
題名:情報を理解するためには 中学校女子部2年 鈴木果彩
私の信じている事柄は、本当に真実なのでしょうか。それとも誰かに都合のいい事柄を真実と信じ込まされているのでしょうか。
私はこの夏休みの旅を通して、今まで自分が信じていたものや、固定観念がとても安易なものであったことを実感しました。何かを信じる時、疑問に感じることなくただ「そうなんだ」と納得することは、無関心なつまらない人間になってしまうのでしょうか。
私は今年の夏休みに2年続けて家族とカンボジアに行きました。昨年の旅行では街中にお年寄りがおらず、平均年齢が28歳の国でカンボジア内戦が原因であることを知りました。内戦終結後から続く貧困に、今も苦しめられている国であることを実感しました。
今年は世界遺産に登録されているシェムリアップに行きました。遺跡見学後、キリングフィールドとなっているワット・メア寺院と地雷博物館を訪れました。寺院に入ると人の頭蓋骨が何百と収められているお堂がありました。私は人の頭蓋骨を初めて見ました。こんなに多くの頭蓋骨が並ぶと本物に見えませんでした。しかし、父に英文で書かれたパネルを一つひとつ読んで解説してもらうと、この骨は本物だと実感しました。そのパネルには人々の体験記が家族写真とともに記録されていました。知識人が殺され、最後には字が書ける、眼鏡をかけている、手が荒れていないなどが原因で殺されていきました。結果、内戦終結時、国民の85%は15歳未満でした。
父は「ポルポトは素晴らしい指導者であると日本の知識人すら言っていたんだよ」と言っていました。当時のカンボジア国民を想像しようと思っても、あまりの衝撃に私は何も思い浮かびませんでした。
次に地雷博物館に行きました。ここはアー・キラー氏という方が、地雷除去した地雷を展示している博物館です。この博物館の、日本人のボランティア活動をしている方から説明を聞きました。
カンボジアは、ベトナム戦争以前のフランスの植民地時代は豊かな農耕国家でした。しかし、ベトナム戦争での供給ルートとしてカンボジアはアメリカからの空爆を一方的に受けたそうです。この空爆で農地は壊滅状態となり、深刻な食糧危機に陥ってしまったそうです。当時、シアヌーク国王は、激しく非難したそうですが、アメリカのメディアは無視し、軍事物資集積所や基地をアメリカ軍が攻撃しているとする記事を書いたそうです。
「誰かの都合で簡単に事実は隠され、捻じ曲げられそれが事実となってしまう。結果、この国はめちゃくちゃになってしまった」と仰ったボランティアの方の言葉が心に残りました。
私の中で、欧米諸国が正義であるとイメージがありました。今回のことで、それは間違ったものの見方であることがわかりました。正しい時もあるし間違っていることもある。情報を正しく手に入れ判断する責任を私自身が持つべきだと痛感しました。
私の周りでも、同じことが言えます。私の持つイメージであの子が悪いのではないか。仲のいい子が言っていたからあの子が悪いのではないか。物事の良し悪しを簡単に決めつけてしまいそれを一方的に信じてしまう。今まで何気なくやってきたことをカンボジアで感じた「取り返しのつかない結果」に置き換えてみると、とても恐ろしいことだと思いました。
これからの私は、いろいろな角度から事柄を観察し情報の事実と向き合い判断する責任を持つ大人へとなるように目と心を鍛え上げていきたいと考えています。
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