2021年4月、桐蔭学園中等教育学校は探究授業「15歳のグローバルチャレンジ」を始動しました。
生徒は3人~4人のグループで或る国の大使となり、学年末の模擬国連会議に向けて1年間かけて諸問題の解決に取り組みます。
世界大会7年連続出場を誇る模擬国連部での活動をベースとした日本初の試みで、グローバルな視座を獲得する意欲的なプログラムです。
この連載では、1年間にわたって3年1組の「15歳のグローバルチャレンジ」を追い、生徒の取り組みを様々な角度からレポートします。今回は第5回の授業の様子です。
前回と前々回の授業で、生徒たちは自分の担当国のPRプレゼン資料を作成しました。担当国のどこにスポットライトを当てて紹介するか、大使たちでじっくり話し合いました。
授業レポート第4回 プレゼンの「台本」を作り、発表練習をしよう!
3年1組へ割り当てられている国は以下の10か国です(毎回確認します)。
日本 ミャンマー コートジボワール
チャド 南スーダン ポーランド
サウジアラビア チリ コスタリカ カナダ
第5回 授業テーマ「世界各国の「いいところ」を たくさん知ろう!」
今日の授業の目標は
① 大使団で協力して、自国の魅力を伝えることができる。
② 担当国の立場から、他国のプレゼンを聞きフィードバックできる。
の2つです。大使たち(生徒たち)は力を合わせて担当国の魅力PRのプレゼンを作り上げていきます。
毎回授業の冒頭で、橋本教諭は世界の動向を知るニュースを伝えます。
今回は「アメリカ合衆国、グリーンランド買収を否定」というニュースでした。2019年に当時のトランプ大統領がグリーンランドを買収したいという話をし、これに対してデンマーク政府は「グリーンランドは売り物ではない!」と猛反発しました。
冷えていた両国関係ですが、18日のニュースによると米国務長官が明確に否定したため、関係改善に向かいそうです。
実はグリーンランドには原油・レアアースなど豊富な地下資源が眠っています。この資源が地球温暖化の影響でアクセスがしやすくなってきているのです。さまざまな問題が外交につながっていることがわかります。
今日の授業では、担当国の魅力をPRするプレゼンテーションが行われました。
1組には10カ国が割り当てられていますが、今日はそのうちの5カ国がプレゼンを行いました。南スーダン、カナダ、チャド、チリ、コスタリカです。
このプレゼンでは、「自国の魅力」をどこに見出すかがポイントです。
今回はカナダ大使のプレゼンテーションを取り上げたいと思います。
カナダは広大な自然が想起されますが、大使たちは移民政策やLGBTQ(性的マイノリティーの総称)政策に焦点を当て、カナダを「多様性の国」と捉えたプレゼンを行いました。
なぜ自然ではなくカナダの「多様性」に着目したのかをカナダ大使に聞いたところ、「自国で一番誇りに思えることで、他国にないものという視点から考えた時に『多様性』というキーワードに行き着きました」とのことでした。
今後議論されるであろう話題に即した魅力発掘の活動であったことがうかがえます。
各国のプレゼンの後には、他国の大使からフィードバックが送られます。このメッセージは「自分の国から見てあなたの国のプレゼンは◯◯でした」という視点で書かなくてはなりません。
ですから、自国の置かれた状況や国際情勢などを考慮に入れる必要があります。
たとえばアフリカの国同士のフィードバックには「お互い、経済的に大変ですよね。力を合わせて貧しさを克服しましょう」とあり、アフリカからカナダへのフィードバックには「恵まれている国家であることがよくわかりました。正直に申しましてうらやましいと感じます。私たちへの支援をよろしくお願いします」とありました。
日本に住む中3としてではなく、「在ニューヨーク・○○国政府代表部」の立場でメッセージを送るのですが、これはなかなか難しい!どこまで自分の担当国に深く関わり、どのような視点で他国を捉えるかが問われているのです。
今回のプレゼンは各国5分間程度でしが、どの大使も自分のパート(約1分間)を明瞭な言葉で立派に述べていました。
桐蔭学園中等教育学校に入学して2年、アクティブラーニング型授業、パフォーマンス課題や1分間スピーチなど、生徒たちはクラス全体の前に立って発表する経験を積んできました。
今回の発表でも、それらの経験が存分に生かされていると感じました。また、発表を聞く側の姿勢も大変立派です。発表後の温かい拍手を含め、「傾聴と承認」の文化が生徒たちのマインドにしっかりと根を張っていることを改めて認識ました。
とは言え、今回のプレゼンは探究授業の評価につながるため、かなり緊張していた生徒も多かったようです。それでもやりきったという思いがふり返りシートにあふれていました。
「プレゼンをして、自分の国がますます好きになってきました」
「自国の魅力が伝わっただろうか。やりきったけれど、緊張しすぎて伝わったかどうかが心配だ」
第1回目のプレゼンを終え、担当の橋本教諭は「5カ国全てが制限時間を目一杯使って自国について語ることができました。自国を語る『大使たち』の顔がりりしく見えました」と所感を述べています。次回のプレゼンも大いに期待できそうです。
【15歳のグローバルチャレンジ 関連リンク】
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TEL 045-971-1411(代表)