皆さんは、桐蔭学園の先生が南極に行き、2014年2月に昭和基地から衛星回線を使って授業を行なったことを知っていますか? 当時10歳だった小学4年生は今18歳(高校3年生)になっています。今回紹介するオンライン南極授業のきっかけは、授業を担当している生徒の「昔の南極授業を見てみたい」という意見でした。そこで、昨年7月に南極授業を再現した動画を作成し(図1)、9月のコロナ禍によるオンライン授業期間に中等教育学校2年生8クラス(約320名)、高等学校2年生の一部(約120名)を対象として、オンライン南極授業を実施しました(図2)。
この連載では、3回にわたってオンライン南極授業での生徒の取り組みをご紹介します。今回が最終回です。
また別の生徒が南極の自然から受け取ったメッセージ(図8)は「地球の果ての南極だからこそ、気付かされることが沢山あった。人間の活動が地球の環境に大きな影響を及ぼしていることは、誰もが関係していることであり、知らないふりをしていい人なんていないんだなと思った。本来の自然のリズムとかけ離れている存在の人間だからこそ、地球の環境について考えていくべきだと思った。南極授業を通して、私は気候変動についてもっと考えてみようと思った」。というように、人間活動が自然環境に及ぼす影響を自分事としてとらえ、その解決のための主体的な行動について述べています(資料⑤「高校2年生が受け取ったメッセージ」はコチラ)。
どちらの学年も、提出された課題は教員の予想を超える内容が多く、授業動画を通して南極の自然が教えてくれていることを生徒達は非常に感度よく理解していました。
私たちは今、地球規模での急激な気候変動や、世界各地で頻発する自然災害、食糧問題や貧困、差別、生物多様性の喪失など多くの問題に直面し、その解決への道を常に模索しながら生きてゆかねばなりません。そのためには、問題に気づき、本質的な原因がどこにあるのかを見抜く力、建設的で代替的なアイディアを生み出す力、その実現にむけた行動力、人とのつながりを大切にして協力できる力、そのためのコミュニケーション力も必要です。これらの能力や態度を身につけ、限りあるものを奪い合うのではなく、残し、将来の世代へと繋げてゆくという視点に立って初めて、持続可能な社会、もう少し易しくいえば「今日よりいいアース(明日・地球)」が実現できるのだと思います。その担い手となる生徒達にとってオンライン南極授業は、上記の視点に立ち、問題を解決していくための能力や態度を育むきっかけになったのだと思います。
オンライン南極授業の課題内容と生徒達の回答はデータベース化して、他の教科・科目の先生方と共有できるようにしています。南極授業の動画を通して感じる事は、先生方によって他にもあるはずです。そこに何か共通の一致点があれば、それは南極のフィルターなしに共有できる「生徒達の学びに繋がること」なのだと思います。今後、学内(外)の先生方と議論して、それを見つけてゆきたいと考えています。
最後に、オンライン授業の教材作成、その授業実践に協力いただいた本校地学科スタッフに、心より感謝いたします。
【南極授業 関連リンク】
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