※詳細は「入試要項」をご覧ください。
「総合」は、社会科の諸知識と、現実の社会的課題をどのようにつなぐかに係わる出題です。現実の社会的課題は、高校や大学で学ぶ多分野の知識を適切に融合させることで有効に取り組むことができます。その素地があるかどうかを評価するのが「総合」です。たとえば「鎌倉の観光発展」という課題があるとしましょう。これに取り組むには鎌倉幕府、鎌倉宗教などの歴史的知識、鉄道や交通などの地理的知識、さらに現在の経済状況などの政治経済の知識が前提となり、これらを様々に駆使しながら、新たな提案を考えることになります。「総合」では、問題に取り組みながら、考えることの楽しさも味わってもらえればと思います。
以下に設問例をあげます。
「放置自転車の激減」
論説を読み、下記の質問に答えなさい。
四半世紀前に比べると、駅前に放置されている自転車が激減している。総務省の調査によると、駅周辺(駅から概ね半径500m以内の区域)に放置されていた自転車・原付・自動二輪の台数は1990年度に24.3万台(50台以上の場合のみ計上する旧方式による)だったが、2014年度には4.2万台(1台から計上する新方式による)に減っている。同じ期間の駅前への乗入台数を比較してみると69.4万台から65.5万台であり、微減に留まる。放置自転車が減ったのは、駐輪場の整備など行政側の対策が奏功したからだと思われる。
四半世紀前には、駅前の放置自転車は歩道ばかりか車道の一部も占拠し、通行の妨げになるほか、近隣の商店街にも影響があり、社会的大問題となっていた。
駐輪場の整備は、郊外の駅前から始められた。鉄道の駅からかなり離れた場所も住宅街として開発され、バス便だけでは不便なため、多くの人が自宅から駅まで自転車で通っていた。そのため、都心よりも郊外の新しい街で「銀輪公害」は生じた。例えば、かっては京王線調布駅の駅前も大量の放置自転車が大きな問題であったため、調布市は放置自転車対策を迫られていた。現在、調布駅近隣には無料の駐輪場だけでも1800台を越える収容能力があり、有料の駐輪場は5000台を越える収容能力がある。これらは調布市が管理しており、「調布市自転車等対策実施計画」に基づいて整備されたものだ。
現在、放置自転車問題は都心部に移動してきており、東京都は、都内の駅前放置自転車の約4割を占める都心6区(千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、台東区)と駅前放置自転車対策に係わる協議会を設置した。
2014年度調査によると、都内の駅周辺の駐輪場は2300カ所以上で、その収容能力は92万台を越えている。実収容台数は62.9万台であり、放置台数(新方式による)は4.2万台であることから、駐輪場整備の効果の大きさがわかる。もちろん、駐輪指導や強制撤去などの施策との相乗効果であろう。
自転車は免許が不要であり、老若男女が利用できる。駅前まで自転車で行き、鉄道を利用するという生活パターンは、温暖化の進む今日、おおいに推奨されるべきであり、放置自転車問題の解決は、この流れを加速していくものである。