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桐蔭法学部の新しい入試 ― 総合問題の導入について

これまでの科目別の入学試験は、知識の量と、努力への耐性を測る面では有用なものでした。知識を駆使して現実問題への対応を発想する能力を評価することも、ある程度は可能でした。しかし、過去に存在していなかったまったく新しい発想を評価する点では、十分に機能するものではありません。

社会には多様な人材が必要です。淡々と努力を積み重ねていく人材も必要であれば、問題に対して柔軟な対応のできる資質を有する人材も必要です。さらに、過去の常識を覆すことで新しい常識を創り出していく能力も必要です。さまざまな能力を持った多様な人材が活躍できる舞台があってこそ、豊かな未来につながっていきます。

社会の基本的な秩序を維持する人材(十分な知識を有する努力型の人々や知識を駆使して問題解決していく人々)を供給するのは法学部の社会的任務ですが、同時に、まったく新しい社会的問題に独自の発想で挑戦していく人材を供給するのも法学部の務めです。

従来型の一般入試やセンター入試は、こつこつと努力を重ねていく能力を評価することに適しています。また、AO入試や推薦入試では、柔軟な知性や意欲的なあるいは問題発見型の知性を判定することに向いています。しかし、まったく独創的な知性の評価という点では不足の面がありました。

桐蔭法学部が今年度より導入する総合問題は、このような課題に応えるため、枠にとらわれない発想を評価しようとするものです。もちろん、発想力だけでなく、その発想を個別的状況に適応させて展開する能力も必要です。とくにコミュニケーション能力は、この点で重要です。新しい発想を人々に説明し、その利点を説得できなければ発想は埋もれたままになってしまうからです。

総合問題では、科目の枠が取り払われ、自由な解答を可能にする問題が示されます。社会の問題を扱う法学部ですから社会科系科目の内容に近いものが出題され、また、国語力も評価されます。

以下に、具体例を挙げますので、総合問題が自分に向いているかどうかを自己判定してみて下さい。


総合問題設問例

「放置自転車の激減」
  論説を読み、下記の質問に答えなさい。

四半世紀前に比べると、駅前に放置されている自転車が激減している。総務省の調査によると、駅周辺(駅から概ね半径500m以内の区域)に放置されていた自転車・原付・自動二輪の台数は1990年度に24.3万台(50台以上の場合のみ計上する旧方式による)だったが、2014年度には4.2万台(1台から計上する新方式による)に減っている。同じ期間の駅前への乗入台数を比較してみると69.4万台から65.5万台であり、微減に留まる。放置自転車が減ったのは、駐輪場の整備など行政側の対策が奏功したからだと思われる。

四半世紀前には、駅前の放置自転車は歩道ばかりか車道の一部も占拠し、通行の妨げになるほか、近隣の商店街にも影響があり、社会的大問題となっていた。

駐輪場の整備は、郊外の駅前から始められた。鉄道の駅からかなり離れた場所も住宅街として開発され、バス便だけでは不便なため、多くの人が自宅から駅まで自転車で通っていた。そのため、都心よりも郊外の新しい街で「銀輪公害」は生じた。例えば、かっては京王線調布駅の駅前も大量の放置自転車が大きな問題であったため、調布市は放置自転車対策を迫られていた。現在、調布駅近隣には無料の駐輪場だけでも1800台を越える収容能力があり、有料の駐輪場は5000台を越える収容能力がある。これらは調布市が管理しており、「調布市自転車等対策実施計画」に基づいて整備されたものだ。

現在、放置自転車問題は都心部に移動してきており、東京都は、都内の駅前放置自転車の約4割を占める都心6区(千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、台東区)と駅前放置自転車対策に係わる協議会を設置した。

2014年度調査によると、都内の駅周辺の駐輪場は2300カ所以上で、その収容能力は92万台を越えている。実収容台数は62.9万台であり、放置台数(新方式による)は4.2万台であることから、駐輪場整備の効果の大きさがわかる。もちろん、駐輪指導や強制撤去などの施策との相乗効果であろう。

自転車は免許が不要であり、老若男女が利用できる。駅前まで自転車で行き、鉄道を利用するという生活パターンは、温暖化の進む今日、おおいに推奨されるべきであり、放置自転車問題の解決は、この流れを加速していくものである。

問1.放置自転車問題について、その権利または利益に影響を受ける当事者を思いつく限りすべて列記しなさい。
問2.この論説を200字以内に要約しなさい。
問3.地方自治体が放置自転車問題を解決するために実施できるプランを作り、そのプランを実施した場合に問1の当事者が受ける影響(メリット・デメリットの双方)について論述しなさい。独創的なプランほど高く評価されます。(400字以上)
問題例解説
  • 問1は、視野の広さを判定する設問で、どこまで大きな視点から問題を捉えられるかと同時に、どこまで細かい視点で影響を予測できるかが問われます。
  • 問2は、おなじみの要約問題です。日頃から練習していれば、たやすく解答できるのではないでしょうか。
  • 問3がもっとも配点の高い設問です。独創的なプランを立てることができればベストですが、うまく思いつかない場合には、問題の論説をよく読み、そこに出てくる対策をひとつひとつ丹念に解説してみましょう。書いている間に新しい方式を思いついたりします。既存の対策を解説するだけでも得点になりますが、その後に途中で思いついたプランに言及すれば高得点の可能性が開けます。
  • 問3の後半に出てくる「当事者が受ける影響」ですが、問1を解答しているときには思いつかなかった当事者に、問3で思いついたりもします。メリットだけでなく、デメリットについても考えてみましょう。
  • 総合問題は、どこから手をつければいいかわからないこともあります。そんな時は、とにかく手を動かすこと。なにか書いてみる。頭の中が真っ白なら、設問をよく読み、そこに書いてあることを自分の言葉で下書き用紙に書いてみる。箇条書きにしてみたり、絵を描いて図解してみたりします。手を動かすと、頭も動き出します。新しいアイディアを思いつくには、考えるばかりでなく、いろいろな作業をしてみるとうまくいきます。

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