月別アーカイブ: 2021年4月

「改革へ!①~新しい小学校になるために~」

桐蔭学園小学校 教育研究推進部

 私たち桐蔭学園小学校教員は、『真の「生き抜く力」を養い、使命感溢れるリーダーとして、主体的、能動的に未来を開き、世の中に貢献できる人材の育成』を目指し、改革を行っています。そのために、児童主体の活動を重視し、授業や生活の中でコミュニケーション能力、責任感、企画力、そしてリーダーシップを養うための教育活動を展開しています。その実現のためにカリキュラムマネジメントを実行しています。
マネジメントの流れは、(カリキュラム・チェックリスト作成)➡(長期的ルーブリック作成)➡(課題ルーブリック作成)です。これにより、「思考・判断・表現」「深い学び」をきちんとアセスメントします。
現在では、小学校が子どもたちの資質能力として育みたい「6つのキーコンピテンシー」について「カリキュラム・チェックリスト(行事版)」と「カリキュラム・チェックリスト(教科版)」が作成できました(下参照)。それと共に「長期的ルーブリック」を作成しています。この「長期的ルーブリック」を基に教科ごとの「課題ルーブリック」も同時進行で作成しています。実践を重ね完成に向けて今後も取り組んでいきます。
カリキュラム・チェックリストとは、「6つのキーコンピテンシー」のどの項目と関連するかを一覧表の形で示したものです。このカリキュラム・チェックリストによって、「6つのキーコンピテンシー」の各項目が、具体的にどの項目によって実現されるのかがわかります。

行事編
(カリキュラムチェックリスト行事編)
※画像をクリックすると拡大してご覧いただけます。

行事編
(カリキュラムチェックリスト教科編)
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使いこなそうシンキングツール!(T3の取り組み)


(桐蔭学園小学校教諭 大塚 愛実)

桐蔭学園小学校では、子どもたちの「深い学びを実現する」ための方法の一つとしてシンキングツールを導入しています。それにあたり、2020年度9月より「シンキングツールタイム(T3)」を設けました(内容の詳細は、教育実践「子どもたちの深い学びを追求!~シンキングツール導入の全体像~」をご覧ください)。この時間はシンキングツールの使い方を学ぶことを目的としており、1・2年生は週1コマの授業時間に、3年生以上は朝学習の時間(週2回)に行っています。シンキングツールを活用する場を多く設け、身近なことをテーマにして、ちょっとしたことでもシンキングツールを用いて考えていくことで、考えが広がったり、深まったりして、意外な発見もあることに気づく子どもたちも多く見受けられます。

シンキングツールタイム(T3)では、段階を踏みながらシンキングツールの使い方を学んでいます。最初は、シンキングツールの使い方について学びます。身近なテーマについて、子どもたち自身の考えをシンキングツールに書きこみ、思考の整理をします。これまで漠然と考えていたことも、シンキングツールに書き出すことで思考を可視化できるようになり、これまでよりも自分の考えを整理し、まとめることができるようになりました。そして、自分の考えが整理されたことで共通点や相違点、関連することに気づくこともあり、さらに新しいアイデアが生まれて考えが深まっていきます。
例えば、「外遊びと室内遊び」についてベン図を使いました。相違点と共通点を見つけやすくするシンキングツールなので、外遊びと室内遊びの種類を挙げていくうちに遊び方の違いに目を向ける子もいて、思考の広がりが見られました。また、どちらも「友だちと一緒に遊ぶことで一層楽しくなる」「遊びを通して友だちとつながることができる」などの共通点も見つけることができました。また、外遊びも室内遊びも「ルールを守ることが大切」ということも挙がり、提示されたテーマについて深く考えようとする姿が見られました。

一通りシンキングツールの使い方を学ぶと、次は、テーマに沿って自分の考えを説明する文章を書きます。その後、シンキングツールを使ってその文章に書かれている内容を整理して考えを再構築し、それを反映する形に文章を推敲するという流れで進めました。この取り組みでは、自分自身の書いた文章の変化にも気づけるようにしました。この取り組みによって、文章量が増えたことや、わかりやすく整理できたこと、具体例や関連することを明確にしながら論理的に説明できるようになったことを子どもたちは実感し、手ごたえをつかみました。

      

      

「進級に向けてチャレンジしたいこと」について考えた際には、「ダイヤモンドランキング」という順位付けをするシンキングツールを使って文章の内容を整理しました。最初に文章を書いたときは「頑張りたい」という思いでさまざまな項目を挙げていましたが、ランキングにして順位付けをしたことで取り組むべき優先順位が見え、具体的に頑張っていくことがわかったようでした。中には、自分が大切に考えていることに気づき、目標が変わったという子もいました。

   

この半年間のシンキングツールタイム(T3)の取り組みをふり返り、「文章をすらすら書けるようになった」「自分の考えを具体的に書けるようになった」「同じことをくり返し書かなくなった」「きちんと理由を書いて説明するようになった」といった、文章を書く際の変化を実感している声が子どもたちから挙がっています。また、テーマに対して考える際に「こういうことだからこうなるのか」「つながりを見つけてひらめくようになった」「たくさんの視点で見ようとするようになった」「具体的か抽象的か考えるようになった」などの意見も挙がりました。

シンキングツールタイム(T3)や授業などの与えられた場面以外でも、子どもたちの中には、日常生活の中でもシンキングツールを活用して思考の整理をしている子もいるようです。班の活動がうまくいっていないときにプラス面(Plus)、マイナス面(Minus)、気になる点(Interesting)に分けて考えられるPMIを使って班の様子をふり返っていた子もいました。うまくいかないことが続いていたのでマイナス面ばかりに目が向いていたけれど、プラス面も考えようとしたことで班の良さに気づくことができ、改めて取り組むべき課題を意識することができたようでした。その後、班のメンバーに声をかけて改善を図る様子が見られました。また、クラスでのイベントを企画してトラブルシューティングをする際に、「もし~なら…なぜなら~」と仮定して考えることのできるキャンディチャートを活用して、起こりそうな場面を想定して事前に防ぐ手立てを考えたりするチームもありました。あらかじめトラブルを想定していたため、当日も臨機応変に対応することができていました。順序立てて物事を進めていきたいときや、きちんと理由を伝えたいときにシンキングツールを使って可視化し、頭の中を整理しているという子もいます。
子どもたちにシンキングツールタイム(T3)について聞くと、「使う場が増え、少しずつ楽しくなってきている」「集中して文章を書く時間が面白い」「生活にも生かせる時間」と前向きにとらえているようです。この取り組みが始まってからまだ半年ですが、子どもたちに考え方の選択肢は広がり、「思考すること」を楽しむ姿が見られるようになってきています。
桐蔭学園小学校のシンキングツールの取り組みは、まだ始まったばかりです。これからさらにシンキングツールを活用する場面を広げ、子どもたちの学びを深められるよう、子どもたちとともに楽しんで取り組んでまいります。