月別アーカイブ: 2021年2月

1年国語 常時活動「かんじマスターへのみち,さいしょとぽん,ロッカーベン図」

●かんじマスターへのみち

「子どもたちがもっと前向きに漢字に取り組むには?」と考えて導入したのが、『かんじマスターへのみち』です。
『かんじマスターへのみち』では、出題された文章の中で、知りたい言葉をできるだけ漢字に直します。漢字に直したところは全て得点になります。習った漢字の範囲で、知っている漢字がたくさん文章に使われています。もちろん100点を取って終わりではなく、一つでも多く漢字に表すことで、200点、300点と点数がアップしていきます。そのため、「これまで習った漢字」も「これから習う漢字」もきちんと書けば全てが得点です。積極的にチャレンジしている子は700点を超えることもあります。100点で終わらないので、自分の限界までトライすることができます。
「はながさいている」「はながかゆくなる」など、おなじ「はな」でも「花」なのか、それとも「鼻」なのかをしっかり読み取らなければなりません。そんな「ひっかけ」に「先生、今度は引っかからないよ!」と心強い言葉も聞けるようになりました。

取り組み方の流れを説明します。
まず、授業で単元ごとの漢字を習います。その後、その漢字をふくんだ「かんじマスターへの道(練習用)」がロイロノートで配信されます。その文を自分なりに漢字に直してロイロノートで提出します。提出されたものはクラス全員が見ることができるようになっています。友だちが提出したものを見て、こんな字も漢字にできるの?とさらに漢字に直してみる子どもが出てきます。もちろん習っていない漢字も含まれるので、間違っていることもあります。それでも自分で調べた漢字なので、前向きに取り組んでいます。

   

毎日の日記でも習っていない漢字にチャレンジする子どもが出てきました。

   

 

●さいしょとぽん

認知トレーニング(Cognitive Training)として話題の「コグトレ」を取り入れています。
教員が読み上げる3つの文章をよく聞いて、最初に出てきた言葉を覚えます。同時に、動物が出てきたら手を叩きます。手をたたくという干渉課題が入ることで、集中して聞いて覚える必要があります。これにより聴覚ワーキングメモリ―をトレーニングしています。(出典:教室で使えるコグトレ)

   

   

覚えた動物はロイロノートに答えを書き込みすぐに提出します。それにより、クラスの子どもたちの現状把握がすぐに行え、即座に成長を認めることができます。手を叩くのに精一杯だった子どもたちも、3つの言葉を覚えて、ロイロノートに書いて提出することが少しずつできるようになってきました。お話をしっかり集中して聞くという学びの基本を育てています。

 

●ロッカーベン図

(先生)「ロッカーをきれいにしましょう!」
(こども①)「きれいですよ〜!」
(こども②)「整理しておきました!」

(先生)「あらあら、もっと整えることができるのに。自分でしっかりと整理できるようになるにはどうしたらいいのかな?」

というやりとりをこれまでこどもたちとしていましたが、それをシンキングツールで取り組んだのが、「ロッカーベン図」です。

「きれいなロッカーとはどうなっていますか?」という問いに、クラスのみんなで話し合った結果、

①帽子がきちんと入っている。
②スモックがしっかりたたんである。
③教科書やノートの背中がしっかり見える方に向いている。
④探検バックやくつ袋のひもがだらんと落ちていない。

と気がつきました。

ベン図にすると真ん中に自分のロッカーがあると最高だね。とみんなで話し合いました。

この話し合いのあとに「自分のタブレットで自分のロッカーの写真を撮ってみよう!」
撮る前に整える子もちらほら出てきました。写真を自分で撮るからこそ、もう一度整えようという気持ちが生まれました。それも立派なメタ認知のスタートです。

   

   

次に、ロイロノートの「ロッカーベン図」に自分のロッカーがどの位置にあるかを当てはめてみます。
「しまった。ひもが出ていた!」
「背中が見えない教科書があったよ!」
と、観点を持って見たからこそ、気が付いた子どもたちも増えてきました。

最後にロイロノートで提出してみんなで共有して、「きれいなロッカーとは」をまとめました。

 

1年国語 シンキングツールの切り替えに挑戦

・じどうしゃくらべ(クラゲチャート→プロット図へのチャートの切り替え),説明文作り,スピーチ

「『じどうしゃくらべ』ではたくさんの車が出てきましたね。その車をクラゲチャートにまとめてみましょう!」
「教科書の中で、トラックの説明は3つありました。」
「そうでしたね!先生は、その3つをクラゲチャートにまとめました。」

   

1年生は、クラゲチャートをまとめることが上手になってきました。
ここで必殺技を伝授しました。

「では、今日はチャートの切り替えをしてみます。」
「チャートの切り替えですか?」
「そうです。チャートの切り替えをすると、クラゲチャートで使ったカードをそのまま他のチャートで使えるようになります。今回はプロット図を使います。」
ここからがロイロノートの真骨頂です。
クラゲチャートで振り返った「車の特徴」をプロット図で文章に戻してみます。今回は元の文章の順番にするので、初めての子どもたちにも簡単でした。それでも、順番に並べ替えてみることで、「なぜ、この順番になったんだろう?」と説明文で重要な「説明する順番」を気にし始めた子どもも出てきました。

   

最後に、
「自分で説明文を書いてみたくなりませんか?」
「え~、できるかなあ?」
「やってみたい!」
ということで、最後は自分で調べた車の説明文を書きました。
最初に、クラゲチャートに「車の特徴」をまとめました。そこで「チャートの切り替え」をして、プロット図で文章にします。
自然と説明する順番に気を配るような説明文ができ上がりました。

      

 

次に、冬休みが終わり、「冬休みの思い出発表会」を行いました。
コロナ禍でなかなか外出もできず、外での思い出を作ることが難しい時期だからこそ、「チャレンジしたこと」の発表も大歓迎です。
まずは「伝えたいこと」をまとめました。まとめるときはクラゲチャートを使いました。クラゲチャートに伝えたいことをまとめていきます。この頃には「クラゲの足が足りないので、付け足しました」という子もちらほらでてきました。
ここから、チャートの切り替えを使って、文章にしました。伝えたいことの順番に気をつけて、台本にすることができました。

   

そして、発表をしました。
発表の時にはiPadを手に発表をしました。発表する時にはiPadばかりを見ていてはうまく伝わらないので、みんなと「目が合うか?」をテーマに行いました。

発表の様子は、録画してロイロノートですぐに送りました。自分の発表を見直して振り返ることでメタ認知も進みます。もちろん、発表の振り返りもシンキングツールを使いました。Yチャートで観点に分けての振り返りです。
次の発表が楽しみです!

   

 

「図工・作品展示会鑑賞」

本校では例年1月下旬の授業参観に合わせて「展覧会」を実施しています。在園、在校生の保護者をはじめ、一般の方にも本園、本校の1年間の教育の成果をご覧いただいています。今年度は残念ながら新型コロナウィルス感染症拡大のため、保護者の方のご来校と一般公開ともにかないませんでした。しかしながら、児童の鑑賞の場として平面作品のみ展示しました。

昨年までも鑑賞の際に、以下のワークシートを用いて各学年とも文章で自分の感想をまとめることを行ってきました。

※昨年までのワークシート

今年度は児童用iPadが導入されたので、ロイロノートというソフトを活用し、新しい鑑賞の方法を取り入れました。

ステップ1:「これは良い絵です」というのは簡単だけれど、「何が、どこが」良いのかという理由がわかると相手にも伝わるし、自分の作品作りにも生かされます。そこで、この「理由」を想像して、作品の良いところを表す言葉をたくさん考えてみよう、という問いをしました。まず、各自が思いつく「作品をプラス評価する言葉」を挙げてロイロノートで提出をしました。

   

   

ステップ2:ロイロノートは、提出されたカードが共有されるので、自分の考えた言葉だけでなく、友だちが考えた言葉も使いながら、自分が作品を鑑賞するときの4つの観点を決め、シンキングツールのXチャートに設定をしました。
観点を決める際、どうしても教員は定型の言葉を使ってしまいますが、子どもたちが自分で観点を設定することで、より自分の想いに沿った鑑賞ができたのではないかと思います。

ステップ3:ここまでの準備ができたら実際に作品を鑑賞します。まずはiPadに頼らず、自分の「眼と心で感じる」時間をつくり、その後、自分の心に響いた作品を自分のiPadで撮影し、Xチャート上に配置しました。

      

   

   

ステップ4:完成したチャートを見ながら、自分が特に気に入った作品を選び、文章で感想をまとめました。

   

鑑賞の授業は、「見る」活動は楽しくても、「感想を発表する」活動が児童によってはハードルが高くなる場合があります。今回、シンキングツールを用い、4つの観点を子どもたち自身が設定して鑑賞に臨んだことで、積極的に鑑賞に臨む児童が増えたように感じました。まとめの文章も、例年より子どもらしい自然な表現の文章が多くみられました。
作品を「眼と心で感じた」ときの第一印象を、シンキングツールを用いたことで具体的に言語化することができるようになったのではないかと思います。
図工は「制作」「鑑賞」の両面を学ぶ授業であると、子どもたちによく話しています。この特別な1年の中で、週1回の授業も例年とは進行が大きくことなりましたが、最後に鑑賞の時間をもつことができたことで有意義な時間と貴重な経験を得ることができました。
子どもたちの生活も制限がつづく日々ではありますが、鑑賞の眼を養うことで日常の中から小さな喜びを発見していける心を育てていきたいと考えています。

 

桐蔭学園小学校「子どもたちの深い学びを追求!~シンキングツール導入の全体像~」


(小学校 教育研究部主任 瀬山 郷平)
桐蔭学園小学校では、子どもたちの深い学びを実現するための方法の一つに、シンキングツールを導入しています。導入にあたっては以下の3つのポイントを大事にしました。

A.シンキングツールを活用できる場を多く用意すること。
B.シンキングツールを子どもたちが活用してよかったと実感を得ること。
C.シンキングツールで思考を可視化したことで、子どもたちの学びが深まること。

このことを踏まえ、以下の図のようにシンキングツールを活用する場を3つ設定しています。

 1つ目は、「シンキングツールタイム(T3)」です。シンキングツールを使っていくためには、まずその使い方を学ぶ必要があります。その指導時間を教科学習や行事指導の時間とは別枠で設定しました。1・2年生は週1コマ授業時間を、3~6年生は朝学習の時間(週2回)をそれぞれシンキングツールの使い方を学ぶ時間としています。ここで指導するテーマは、例えば「リンゴとトマトを比べると?」といった簡単で身近なものにしています。些細なものでも改めて考えてみることで、子どもたちは意外な発見があるということに気づいていました。こうした時間を通じて、シンキングツールの使い方が分かり、教科学習や行事活動に活用することができました。ここでは、上記の3つのポイントのAとBの要素があり、特にAの要素が強い活動です。
2つ目は、「行事における思考の変化」です。「シンキングツールタイム(T3)」で学習したシンキングツールを、行事の中で活用します。「アイデアを創造する」や「ここまでの活動を振り返って、今後の活動を考える」などといった場面でシンキングツールを活用し、思考を可視化して整理します。すると、子どもたちは自分たちのアイデアが整理されてやるべきことが明確化され、行動を振り返って次に生かしたり、面白い発見に出会ったりして、活動が活性化するようになりました。ここには、上記の3つのポイントのBとCの要素があり、特にBの要素が強い活動です。
3つ目は、「教科学習における思考力の向上」です。例えば、算数で何気なく見ていた形を、分類していくことで、自分が着目していることが言葉としてあらわれ、特徴を見て整理することができます。また、総合学習での話し合いで、自らの主張の理由を書きあげていくことで、主張のポイントや足りないことが分かり、さらに主張の論理を強くすることができます。このように学びを深めている様子が見られました。思考を可視化することで、自らの思考を構造化し、単元の目標に、子どもたちが自発的、自律的にたどりつくことができるようになりました。教科での実践は、教員間でも共有しており、より効果的な指導方法を模索し、実践しております。これは、上記の3つのポイントのCに特化した活動です。

こうした取り組みによって、現在子どもたちが徐々に自然とシンキングツールを自発的に活用し、思考を深める様子も見られるようになりました。アクティブラーニング型授業の「個→協働→個」の展開における、「個」の場面でも「協働」の場面でも今までに見られなかった思考の深まりが見られるようになっています。
いろいろな場面やすべての教科で使う場面を設定する組織的な取り組みによって、シンキングツールの導入と活用が、子どもたちに思考させることを活性化させています。