カリキュラムマネジメント」カテゴリーアーカイブ

熱く語れるポスターセッション 自分の興味関心と社会とのつながりを考えよう~SDGsを参考に~

『今、求められる力を高める総合的な学習の時間の展開』(文部科学省,教育出版2011)では、探究的な学習について以下に書かれています。

探究的な学習とするためには、学習過程が以下のようになることが重要である。

 ①【課題の設定】体験活動などを通して、課題を設定し課題意識をもつ

 ②【情報の収集】必要な情報を取り出したり収集したりする

 ③【整理・分析】収集した情報を、整理したり分析したりして思考する

 ④【まとめ・表現】気付きや発見、自分の考えなどをまとめ、判断し、表現する

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こうしたことと、桐蔭学園小学校で掲げている6つのキーコンピテンシー(思考力、創造力、チャレンジ力、メタ認知力、思いやり、エージェンシー)とを意識して探究活動に取り組むように考え、教科の「総合」の探究的な学びについて、昨年度よりカリキュラムを再編成して取り組んできました。今年度の6年生は再編成したカリキュラムで取り組んで2年目となります。

ポスターセッションに至るまでの今年度の6年生の総合(探究)の歩みを少しご紹介します。6年生では、それぞれが興味・関心あることについて、そこに関わる社会的な問題にどのようなものがあるのかを調べ、その問題に対して、どういった解決方法があるのかを自分なりに主張することにしました。

探究的な学びを深めていくためには、「課題の設定」。つまり子ども自身の「問い」がどういったものになるのか、ということが非常に大切です。「問い」については、まずオープンエンドになっていることが必要です。社会の中に存在する様々な課題は、いろいろな要素が複雑に絡み合ったものであり、単一の答えが出るものではありません。そういったことを踏まえ、探究では問いづくりを最も大切にしています。

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ここからは、思考の流れを追うためにある児童の探究的な学びに焦点を絞って説明します。

まずは、子どもたちに学習の見通しが持てるように、図1を提示しました。こうしたものを示すことによって、自分が今どの段階を取り組んでいるのか、それがこの先どのように進んでいくのか、ということ常にイメージしながら進めていけるようになります。

次に、自分の興味・関心について掘り下げていくために、自分についての分析を行いました(図2)。パッと思いつくことを1つ挙げることは、子どもたちにとって簡単なことです。しかし、様々な観点から問いかけていくことで、改めて自分の中にどんな興味・関心があるのか、自覚することができます。

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そして、それをもとに曼荼羅チャート(図3)を使って、どうして自分はそれに興味・関心があるのかを整理することで、より強く興味・関心があるものはどれなのかを可視化することができ、自分の興味・関心がどのような共通性をもっているのかなど、より大きな視野で考えることができるようになります。また、こうして複数の興味・関心を挙げることにより、実際にそれが社会的な問題・課題とどのようにつながっているかを考えたとき、最初に挙げた興味・関心のあるものとのつながりが見出せない場合でも、自分の中に課題設定をする選択肢が持てます。この取り組みによって、子どもたちの問いは似通ったものからより多様なものに変化していきました。この児童は、最初に文房具やハワイ、赤ちゃんなどを書いていましたが、複数書いていくことで社会的な問題・課題とつながって学習を進めていくのにより自分にふさわしいテーマとして「発酵」を選択しました。こういった変化が多くの子どもたちの中で起きていました。図4-1では、自分の設定した興味・関心がテーマ(SDGs)とどう関わりそうなのか見通しを立て、図4-2で探究をし始める最初の問いを明確化することができ、探究への計画を持てるようになっていきました。

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次に実際に探究をしていく流れについてです。ここからは、【課題の設定】→【情報の収集】→【整理・分析】→【まとめ・表現】→【課題の設定】→…と個人内で探究的な学びのサイクルを回していきます。図5-1、5-2ように、「探究学習シート」というものを使って、1人1人が、探究的な学びのサイクルを進めていきます。ここで大切なのは、シートの最後にある「次なる問い」の部分です。調べたことをさらに深掘りをしたり、別の観点から調べたりすることで探究のサイクルが繰り返され、より深い学びにつながります。また、調べ学習が不十分であったり、調べた内容を自分なりに解釈できていなかったりする場合、「次なる問い」を生み出すことが難しくなるので、1人1人に助言を適宜することが大切です。そうして、個人で探究的な学びを進めた先に2学期は、小論文形式で【まとめ・表現】するようにしました。9月にスタートして、12月に小論文の形でまとめることができました(図6)。

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3学期は、ポスターセッションで表現するための、アウトプット、つまり【まとめ・表現】することに焦点化して学びを進めました。自分が考えたことをいかに人に伝わるようにするのか、ということについて考えを深めるために、聞き手としてどういった観点で見るべきか、発表者としてどういったことを大切にして取り組むべきか、子どもたちと教員が話し合いながら、評価ルーブリックを作成しました(図7)。そのルーブリックを基に、自分の発表を振り返ったり、当日のみんなの発表を自分たちで評価したりするようにしました。

図7に示したのは実際に児童が練習時に友だちの発表を評価したものです。当日も同じルーブリックを使用して、お互いの発表を聞き合うようにしました。

こうした学びを経て、2月17日(金)に大学のクリエイティブスタジオにて、ポスターセッションを実施しました。これまで学んだことを発表する場ということで、当日は、保護者や学園関係者に招待状を出して聞いてもらうようにしました。5年生もその様子を見に来てくれました。子どもたちは普段あまり関わりのない人や面識のない人にも自分たちの学びを聞いてもらうことで、緊張感を持って取り組むことができたようです。また、保護者の中には、それぞれの分野を専門とする方もいらっしゃり、調べたことについて助言をしてくださったり、交流したりする様子も見られました。これは子どもたちにとっては非常に大きな学びであったようで、そういった交流をした児童は、その様子を活き活きと話してくれました。

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探究的な学びを進めていくためには、本校が掲げている6つのキーコンピテンシー(思考力、創造力、チャレンジ力、メタ認知力、思いやり、エージェンシー)を活用して取り組むことになります。授業者として、コンピテンシーの育成を意識して取り組んできました。教員も、児童への発問や助言、関わり方、その一つ一つを大切にするように変化しました。すると、子どもたちもじっくりと思考して取り組むようになったり、難しい調べ学習にもあきらめず挑戦したりするようになり、1人1人の創造的で多様な考えを生むことにつながりました。

探究的な学びの発表をポスターセッションで実施したのは今回が初めてとなります。今後は本校6年間の学びのまとめとして、この取り組みを継続していきます。

また、桐蔭学園では中等・高校ともに「探究」を学びの3本柱のひとつに位置付けており、「未来への扉」(=みらとび)と呼んでいます。こうした学びを、小学校の先のステップでも引き続き取り組み、さらに探究的な学びのプロセスを習得し、社会で活躍できる子どもたちになっていくことを願っています。

文責 玉井 山尾 瀬山

 

 

 

 

 

 

桐蔭学園小学校 オンライン授業 ステップ4!

9月1日のオンラインによる全校始業式を合図に,桐蔭学園小学校 オンライン授業ステップ4が始動しました。2020年の一斉休校ではオンライン授業の環境もスキルも乏しい中,「子どもたちに何が必要か?」を合言葉にステップ1を展開しました。そこから1年,私たちが進めてきた教育改革に沿って対面授業もオンライン授業も,一方向性から双方向性へ,そして個別最適な指導と学びに向けて,ますます充実させていきます。

ステップ4では前の記事「桐蔭学園小学校のフルオンライン授業始動!」にあるように,以下のことが特徴です。
1.一人一台のタブレット端末による双方向性を高めたリアルオンライン授業
2.読書の時間から始まるHR,休み時間の交流,昼休みの昼食など,クラス運営もオンライン
3.全校オンラインプログラム「きりりん講座」の展開
4.学校預かりシステムの導入
以下,1つずつ実践報告します。

1.一人一台のタブレット端末による双方向性を高めたリアルオンライン授業
毎日の授業は8時30分の読書の時間から始まります。クラスごとに設定してあるZoomに子どもたちがどんどん参加し,元気な声が響きます。そこからリアルオンラインでの授業が始まります。4年生のある日の時間割は以下の通りです。

   

   

2.読書の時間から始まるHR,休み時間の交流,昼休みの昼食など,クラス運営もオンライン
教員と子どもの双方向だけでなく,子どもたち同士の双方向性も高めていきます。そのため,クラスZoomを立ち上げ,教員が管理する中ではありますが,休み時間や昼休みに自由に子どもたちが会話を楽しんでいます。

3.全校オンラインプログラム「きりりん講座」の展開
桐蔭学園は地域貢献をミッションとするトランジションセンターを有しています。このオンライン授業期間は,総合学園の利を活かして,トランジションセンターと小学校の共同で全校「きりりん講座」を運営します。「きりりん講座」は,オンデマンドとリアルオンラインで構成され,1日4講座ずつ配信されます。学年や学習指導要領の学びを超えたオンラインだからこそのプログラムを充実させています。

      

4.学校預かりシステムの導入
いろいろなご家庭の事情に合わせて,感染症対策を徹底しながら学校預かりを行っています。

   

〈ステップ4で実現したいこと〉
対面,オンラインに関わらず,学校の教育目標である6つのキーコンピテンシーの育成を目指します。そのためにはより子ども同士,子どもと教員の双方向性を高めることが必要です。またコンテンツ(内容)は,学年ごとの授業進度を守りつつも,時間と空間を超えていくオンラインの特徴を活かした教材の提供を目指していきます。教員も子どもたち同様,6つのキーコンピテンシー(チャレンジ力,思考力,想像力等)を活かした学びの環境づくりに取り組みます。

トランジションセンターに関してはこちら→https://www.toin-tc.com/
オンライン授業の取り組みの速報はfacebookで連日配信中→https://www.facebook.com/toin.kind.ele

 

桐蔭学園小学校のフルオンライン授業始動!

『一人一台のタブレット端末で、Zoomとロイロノートで行う双方向授業』+『学校預かりシステムによる居場所確保』

8月24日より始まったパラリンピックの開会式のテーマは「WE HAVE WINGS(私たちには翼がある)」でした。空を飛ぶことを恐れる片翼の少女が、多くの仲間たち、周りの支えもあり、勇気をもって飛び立つというストーリーに、私は胸が打たれました。
桐蔭学園の校名にある「桐」には瑞鳥・鳳凰が宿るとされています。その鳳凰が千里万里を天翔る前に、その力を養うのが桐樹の蔭なのです。そのように、「これから羽ばたく子どもたちが力を育む場所になる」という願いが込められたのが「桐蔭」の由来です。
この学校に通うすべての子どもたちが、一人一人どのような飛び方でもいい。全員が、自分の飛ぶ力に自信を持ち、仲間たちから刺激を受け、自由に、夢に向かって飛んでいってほしい。そんな想いと重なり、パラリンピック開会式は記憶に残る思い出となりました。

子どもたちがこれから羽ばたこうと練習をする空は、「晴天のとき」もあれば、「嵐のとき」もあります。新型コロナウイルス感染拡大が始まった2020年春からは、まさに嵐の日々でした。今まで当たり前にできたことが、できなくなり、子どもたちの飛ぶ練習、つまり「学び」が止まる危機でもありました。
その中でも桐蔭学園小学校が挑み続けてきました。

★ステップ1→TOINスタートアッププログラム(2020年4月13日~)
・「できない」ではなく、「やる」が合言葉・1本以上の動画配信(YouTubeを用いて)➡学校紹介や楽しい話題で動機づけ
・郵送での課題のやり取り➡一方向性のコミュニケーション

★ステップ2→TOIN GW プログラム(2020年4月27日~)
・複数の動画配信(YouTubeを用いて)
・ライブ配信(Zoomを使用)への挑戦
・ロイロノートを使い、双方向性の試行

★ステップ3→TOIN オンラインプログラム(2020年5月11日~6月30日)
・ALを止めない!
・Zoomによる朝のHRを行い、通常授業に挑戦。
・全教科動画配信開始(YouTubeを用いて)。 動画総数➡1500本以上
・ロイロノートにより、「課題提出+フィードバック」が可能になる。

※2020年7月より分散登校が始まり、9月より通常登校再開。
9月より全授業で一人一台のタブレット端末を活用した教育を実施。

このように、新型コロナウイルス感染症拡大の状況の中、教員たちが協力し、新しい方法を日々試行錯誤し、保護者の皆さまの支えもあり、進化することができました。ステップ1から3までを実践してきた桐蔭小にとって、フルオンライン授業への切り替えは、いたって自然に選べる選択肢となってきていました。
今回は、ステップ4として始動します。
子どもたちが飛ぶ空が「嵐」であったとき、「不安だ けど 十分に気を付けて飛ぶ。」「木の蔭でもできることがある。」ということを、自信をもって選択できる 環境 があること。これが子どもたちの学びを守ることになります。
現在、9月1日から始まるオンライン授業(ステップ4)にむけて、以下の準備を全力準備中です。

①オンラインならではの体験を!
→毎日午前中3教科ずつ、Zoomによる双方向授業の時間割を作成し、学びを確保。
ロイロノートを用いて、教材の配付、回収をリアルタイムで実施。
→午後は、午前中に学んだ活用・探究の時間に当てるほか、学年全体に学習指導要領を超えたいろいろなオンライン授業ならではの学びへの挑戦。
②オンライン期間における児童の居場所確保
→ご家庭によっては、共働きや医療従事者といったオンライン授業に満足に対応できないと不安をお持ちの場合もあるので、校舎を開き、感染症対策を行い、子どもたちを預かるプログラムで支援。

今後、各学年、どういう取り組みをしたのかを、こちらでどんどん報告させていただきます!
「コロナだから何もできない…」ではなく、「こんな状況だからこんなことができた!」と子どもたちの記憶に残る時間を目指して、教員一同励みます!

●以下、2学期開始のオンライン学習(ステップ4)のフレームワークです。

【2学期オンライン学習のフレームワーク(ステップ4)】
※9/1(水)始業式➡9/2(木)zoomHR➡9/3(金)オンライン授業開始

『オンライン学習のフレームワーク』
・オンライン学習でも,「個-協働-個」の流れをなるべく踏襲。
・必ず個人の理解度を測るために,児童の成果物をロイロで提出するデザインにします。
・提出された課題は,必ず個別または全体にフィードバックします。

以下の組み合わせの中で授業方法を選んでください。基礎的な方法は以下のとおりです。ただし、こればかりではありません。
①Zoomで授業配信+課題+提出+フィードバック(協働がないパターン)
②Zoomで授業を配信+課題+ブレイクアウトルームで協働+課題再考+提出+フィードバック
※基本,双方向性が担保できる学習デザインをご検討ください。

・学習の流れは,『話を聞く(自分で考える)⇒自分でやってみる⇒友達とシェアする⇒もう一度自分でやってみる⇒ロイロで提出⇒先生からフィードバック』を基本とします。

・教材や授業内での確認は、ロイロノートを使用。

〈期間〉9/3(金)~9/14(火)の12日間(このうち、授業日は8日間)

〈授業時程〉
・HRに出欠確認を行う(ロイロノート使用)。8:00~8:15までの全員入室確認の朝読書。
・1校時は、8:45に開始,1~4年20分間,5・6年30分間。各学年3校時行います。
・休み時間は、1~4年15分間,5・6年20分間。
・フリータイムは、「子どもたち同士でコミュニケーションをとれる時間」に使用。
・午後には、学年を問わず参加できる「講座」を2コマ行います。

〈その他〉
・フリーな時間も作り、子どもたち同士 のコミュニケーションも大切にしましょう。(少人数ブレイクセッションなど)
・午前中はライブで授業。午後はそれぞれの教科から出た課題・調べ学習などに取り組み、次の日の学習サイクルを作りましょう。