探究」カテゴリーアーカイブ

【思考力、創造力】 桐蔭学園小学校国語科の「探究」の取り組み

今回は、1年生と3年生の国語で取り組んだ『探究学習』の要素を取り入れた実践について紹介します。

≪1年生≫

4月の入学から9月までの学習を通して文字を書くことから始まり、文節を使った文章づくり、自分の体験を言葉にして表現する活動を行い、「まとめ・表現の力」の土台となる力を育成してきています。

「『は』『を』『へ』をつかおう」や「すきなことなあに」の教材を通し、文章を作る練習を行いました。子どもたちは、自分の思いや感じたことを簡単な文にまとめる活動を行うことで、自分の考えを整理し、言葉で表現する力を身につけていきました。

 

【夏休みの宿題「マイチャレンジ」】

夏休みの宿題として実施した「マイチャレンジ」では、ここまで学習してきた内容をいかし、児童それぞれが自分の興味や関心に基づいた挑戦を行い、その取り組みの様子を日記形式で記録していきました。絵が得意な子は毎日一枚ずつ絵を描き、その絵についての感想や発見をまとめたり、ランニングや体操に挑戦し、その結果や気持ちの変化をまとめたりする子もいました。これまでに経験したことのないような分野に挑戦することを通して、その過程で感じた喜びや困難を言葉にまとめたり、結果的にうまくいかなかったことについても、その経験から得た学びをふり返り、次にどうすればうまくいくかを考えたりと、探究的な問いを自ら立て、次の挑戦につなげていく様子が見られました。

【読解の中での探究的なアプローチ】

『やくそく』という物語の題材の中で、話の展開や登場人物の気持ちの変化に注目しながら物語を読み進め、グループでの音読活動に取り組みました。話の展開や登場人物同士の関わりから状況や気持ちを探究し、物語を自分なりに解釈することに挑戦しました。読み取って考えたことを表現するために、声の大きさや強さなどの使い方を工夫したり、「なぜこのような声で音読したのか」という理由を話し合ったりと、自分たちの表現に工夫を加えていきました。

また、物語の続きを考える創作文づくりの活動では、「この先、このあおむしたちはどうなるだろうか」を考え、物語の展開を自分なりに想像して創作文をまとめました。物語の背後にあるテーマやキャラクターの動機について深く探究する活動を通し、物語の中で問いを見つけ、登場人物や物語の未来を自分なりに考え、表現することに取り組みました。物語の続きを考える過程で、児童は自分なりのアイデアを形にし、それを他者に共有するという「創造的な学び」に取り組みました。

 

≪3年生≫

「言葉の探究」(自分のイメージに近い言葉を「頭の中の引き出し」から探す、探る試み、姿勢)

(1)単元『初めての国語辞典』で、自分で選んだ言葉を自分なりに説明する活動

「消しゴム」という物(言葉)の一つの説明として、「まど みちお」さんの『けしゴム』という詩を紹介し、物(言葉)の説明することのイメージを持ちました。

 

『けしゴム』 まど みちお

「自分が書きちがえたのでもないが

いそいそと消す

自分がよごしたよごれでもないが

いそいそと消す

 

そして、けすたび

けっきょく自分がちびていって

きえてなくなってしまう

 

いそいそと、いそいそと

 

正しいと思ったことだけを

美しいと思ったことだけを

身がわりのようにのこしておいて」

その後、「言葉当てクイズ」をしました。自分で選んだ物(言葉)について、①その言葉の意味を自分なりのイメージで説明→②その言葉の辞書的な意味の説明→③答え合わせという順で一人ひとりがクイズ形式で発表し、答えを共有しました。

(2)夏休みの宿題「夏を感じたものについて書きましょう」

教科書の「夏を感じたものについて書きましょう」について夏休み前に授業で読み合わせをし、各自が「夏を感じたもの」を詩や絵日記や説明文の形で書きました。その中では、1学期にやった「言葉当てクイズ」の学びを活かして文章をまとめてきたり、様子に注目し、擬態語などの表現の工夫をしたりする子もいました。

 

「台所から『シャクッ。』と何かを切る音がする。何だろう?」

と「音の『実況中継』」をして「聴覚」で感じたものを表現し、読んだ人の「聴覚」を呼び起こし、「何だろう?」で自分が思ったことを書き、それによって読んだ人にも「何だろう?」と思わせたり、答えを考えさせたりして引き込み、

 

「少し待つと、赤くてみずみずしいものが運ばれてきた。」

 

と今度は「視覚」に入ってきた情報を書き、読んだ人の「視覚」に「赤くてみずみずしいものが運ばれてきた」と様子を想像させ、

 

「私は『それ』を食べてみた。」

 

で読んだ人に「それで、どうだった?」と思わせ、

 

「うん、『シャキッ。』としていて夏にぴったりだ。」

 

と今度は「触覚・味覚」の感覚を表現し、「五感」のうちの「四感」で「夏の季節感」を伝え、最後に、「(『シャキッ。』としていて)夏にぴったりだ。」と「夏の季節感につながるまとめ」をしていました。

 

そして、「ウリ科の一年生つる草。水分に富んで、甘い。実は、夏の代表的な果物。」と辞書の説明も載せて、「スイカ」に「夏を感じたこと」を表現していました。

 

 

同じ「スイカ」の「スイカ割り」の観点から「夏はスイカ ザクザク食べて、種を『プッ』ってふき出すのがおもしろい。」という感じで「夏の楽しい季節感」を表現してきていた子もいました。

 

 

また、「そうめん」を

 

「暑い夏の昼。今日も食べたい白いめん。つゆに入れて、ツルツル食べる。口はさっぱり、冷たくなる。」

と「擬態語」も使ってイメージを表現し、「『暑い夏』に食べたくなる」という「冷たくてさっぱりした食べ物」で「夏の季節感」を表現していました。

 

また、「夏の海」で、

「岩についている藻を食べていました。」

という「魚の様子」を観察して書き、

「捕まえられそうだったのに、届きませんでした。またいると、いいです。」

と、その魚への「捕まえてみたかった…。」という想いを「事実」を書いて「またいると、いいです。」とダメ押しをして表現していました。

 

また、他の人が、「とんぼ」についても、同じように、「思ったより~だった。」という感覚を

「飛んだり、とまったり。なかなか飛ばないと思ったら、追い付けないくらいブ~ンと飛ぶ。」

 

と表現していました。

 

 

(3)夏の季節感を「五・七・五」の「十七音」で表現した(教科書に掲載されている)「俳句」の表現効果を考える

 

「閑かさや 岩にしみ入る 蝉の声」

 

という松尾 芭蕉さんの句。季語は「蝉」だから、「夏」の様子・季節感を表現した俳句。

「蝉の声」という「音」は、「ハウリング」して、「エコー」みたいにその余韻が耳に響く。その「夏特有の騒々しさ」を、ただ「うるさい。」と大雑把にとらえて終わらずに、その余韻が消えていく感じを、「どこに消えていくのか?」と一歩踏み込んで「心の目と耳」で「探究」し、(周りが閑かだから?)「岩にしみ入っていくようだ…。」ととらえ、それを「岩にしみ入る蝉の声」と「十二字」で表現しているところにも気付きました。

また、「『蝉の声』と書いてあるのに、なんで『閑かさ』で始まっているのだろう?」ということを考えてみました。「蝉の鳴き声以外の生活音などがしないほど『閑か』だから、芭蕉さんは、蝉の声が岩にしみ入っていくように感じられるほど『蝉の声の余韻』に集中していたのではないか?」というような解釈になりました。

 

他にも、小林 一茶さんの句では、「夏山」の頂上に近付いてきて、「疲れた~。」とか「頑張るぞ~。」とよくある感想・気持ちを書いたのでは、どういう「疲れ」や「頑張る」気持ちなのかがわからないので、

 

「一足づ(ず)つに海見ゆる」

 

と「状況描写」をすることで、その「達成感」も「疲れ」も「あと少しだ。頑張るぞー。」という気持ちも合わせて「夏山登山で感じていること」を表していたり、

 

与謝 蕪村さんの

 

「菜の花や 月は東に 日は西に」

の句などは、「菜の花」の東に「月」が、西に「お日様」があると詠んでいることから、「菜の花」は、作者の視野いっぱいに咲いている情景が目に浮かぶ句となっていることにも気付きました。

 

さらに、そんな「夏の季節感」を書いた昔の有名な文章として、「枕草子」(清少納言さん)の

 

「夏は夜がすてきだ。月が出ていればもちろん、闇夜でも、ホタルがいっぱい飛び交っている様子。また、ほんの一つ二つ、ほのかに光っていくのもいい。雨の降るのも、また、いい。」

 

という季節感(現代語訳)を紹介。

 

「秋に感じるもの(秋の季節感)」も

 

「秋は夕暮れがいい。夕日が赤々と射して、今にも山の稜線に沈もうという頃~すっかり日が落ちてしまって、風の音、虫の音などがさまざまに奏でるのは、もう言葉に尽くせない。」

 

と紹介し、参考にしてもらいました。

 

こうした学習を通して、絵で表現することができる部分と絵では難しい部分があることを知り、言葉による表現の精度を上げるにはどうすればよいかを考えていきました。自分の見たもの、聞いたこと、感じたこと、考えたことなどを、どんな言葉を選んで表現すればよいか考え深めることで、(「子どもらしい」)、しかし「一歩踏み込んでみた」表現ができるようになってきました。

 

「夏~秋の俳句・詩(子どもたちの作品)」

〈夏〉

・暑い夏 アイスを食べて 元気出る

・くたビーチ サンダルさらわれ 砂だらけ

・暑い日は 涼しい風が いい感じ

・太陽が 雲にかくれて 涼しいな

 

〈夏 VS 秋〉

・太陽はジメジメと 風はヒューヒューと

どちらも負けてはいないが そろそろ

風の方が 強いんじゃない

いやいや太陽も 負けてはいない

 

〈秋〉

・風がヒューヒュー 涼しいな

夜の風は 気持ちいな

朝の風は寒いけど

それはそれで ちょっといい

・紅葉だ 木々に染み入る 秋色が

・雨の後 空いっぱいの うろこ雲

・おとなりの 声が聞こえる 風さやか

・夕暮れで 森の中から 鈴の音

・朝起きた。布団を取ると、少し寒い。

まだ寝たいけど、外に出る。

フューフュー風が吹く。

みんな長袖を着ている。

電車に入ると、温かい。

・さわさわと シロダモの実が おどってる

 

〈日常〉

・トントンと ほうちょうの音 聞こえるよ

・遠足で 時間割なし うれしいな

 

 

【6年算数×探究活動】6年算数の授業で取り組んでいる『探究活動』

6年算数の授業で取り組んでいる『探究活動』について紹介します。

〇算数での探究活動とは?

『統計的探究プロセスとは,元々の問題意識や解決すべき事柄に対して,統計的に解決可能な問題を設定し,設定した問題に対して集めるべきデータと集め方を考え,その計画に従って実際にデータを集め,表などに整理した上で,集めたデータに対して,目的やデータの種類に応じてグラフにまとめたり,統計量を求めるなどして特徴や傾向を把握し,見いだした特徴や傾向から問題に対する結論をまとめて表現したり,さらなる課題や活動全体の改善点を見いだしたりするという一連のプロセスである。』小学校学習指導要領 解説より

とあります。「元々の問題意識や解決すべき事柄」について解決を図る探究活動は1年かけて取り組んでいきます。

1学期の取り組みの目的は『自分の知識や興味関心の幅を広げること・調べたことをまとめて発表すること』としました。それに向けて,まず教員が例を示した事柄がどういうことなのか?を考えました。そして,自分たちがこれまで習ってきた内容や知っている知識や興味のある事象の中から1つに絞り,それが将来どのようにつながっているのか,どういう分野に活用されているのか,などの情報を集めてまとめる活動を行いました。

 

○教員からの事例

①もしも円周率が「3」で計算された世界だったら…?

 円周率は,3.1415926535…と,現在は105兆桁まで計算されているどこまでも続く神秘的な数の一つです。そんな円周率が「3」としてすべて扱われたら,どのような世界になってしまうか,を子どもたちに問いかけました。5年生で習った円周率3.14が「もしも3だったら?」なんて聞かれて,「先生,何を言ってるの?」「どういうこと?」と困惑しているようすでした。中には,「計算が簡単になる。」と答えている子もいました。(確かに…)話を分かりやすくするために,子どもたちに円形のものと言えばどんなものがあるかを聞きました。すると,自転車のタイヤ・お金・ボール・めがね・フラフープ…など様々なものがあがりました。その円形のものが円周率3の世界ではどのようになってしまうかを,シンキングツール~キャンディチャート~を用いて,予想を立てて考えました。

そして,実際にどんな世界になってしまうのか情報を集めて答え合わせをしました。すると,円が正六角形となってしまうあべこべな世界になってしまうことが分かりました。自転車のタイヤが正六角形ならおしりが痛くなってしまいます。子どもたちもそんな世界は嫌だと嘆いていました。

 

②“東京ドーム1つ分”ってどれくらい?

よくテレビなどでも大きさを比較されるときに,「東京ドーム○○個分」という表現が使われます。私も子どものころからずっと気になっておりました。子どもたちに提示した例は,富士山が噴火したときに出る溶岩は13億㎥、これは東京ドーム何個分だと思うかというものでした。子どもたちは口々に「50個分」「100個分」「いや1000個分だ!」と言っていました。正解は「東京ドームおよそ1048個分」だそうです。…子どもたちも,なんだかすごそうだけど実際はどのくらいだ?と考えていました。

そこで,今回はシンキングツール~Yチャート~を使って,「実際の大きさ」「いつからそういう使われ方をしてきたのか」「他に大きさを比べるよい例はあるか」をまとめていきました。

 

以上,2つの例を示したあとに,子どもたちは自分が習ってきた知識をまとめるために,シンキングツール~ウェビング~を活用しました。その中から,「これを調べてみたい」「これって何だろう」「どういうところに繋がっているのだろう」というものを1つに絞り,インターネットで検索したり,ラーニングスペースで資料を調べたりして進めています。

6月現在ではここまで活動しています。このあと,子どもたちは自分が調べた内容・発見・結果・もっと調べてみたいと思ったことなどをレポートにまとめて,発表をしあう予定です。今回は,自分の興味のあるものを調べ進めましたが,本来は,「元々の問題意識や解決すべき事柄」に対して,情報を集め解決を図ります。今回の活動を2学期や3学期での活動につなげてまいりたいと思います。

 

 

【3年 社会科見学へ 〜スーパーマーケット〜】

3年の社会では、9月から『店ではたらく人』という単元を学んでいます。この単元では、身近な地域にあるお店の存在を改めて認識し、お客さんのためにどんな工夫をしているのかを見つめていきます。

①事前学習

まずは、いくつか売られている商品の画像を見せ、「どこで買った可能性があるのかな?」と子どもたちに聞いていき、実際に買い物をしたことがあるなどの自分の経験をもとに、お店やネットスーパー、自動販売機など、その商品が売られている場所を言ってもらいました。近くのお店の名前を言う子もいれば、ネット通販といった今時らしい、ネット通販を通して買い物をしていると教えてくれた児童もいました。

次に、いろいろなお店が挙がった中で、一番よく行くお店とよく買うものについてクラスの中で集計をしていきました。「コンビニによく行くよ」、「僕の家の近くにはスーパーがあるからコンビニよりもスーパーに行くことが多いな。」など、住んでいる地域の状況(環境)によって、よく利用するお店が違うことがわかりました。各クラス、集計をしてみると、クラスによってはスーパーマーケットが多く、クラスによってはコンビニが多いという結果が出ました。

「〔近いから〕という理由以外に、このお店を利用する理由って何かあるの?」と聞くと、自分がよく行くお店のいいところが出てきました。「安い!」、「遅くまでやっている。」、「だいたいの物がそのお店にある。」、そんな話をしていると他の子どもからは、「それって他のお店でもそう言えるよ。」と話が出てきました。「そのお店だけの良さもある!」、「他にも言える!」などと言って、ちょっとした論争にまでなりました。

「それなら実際にスーパーマーケットへ見に行ってみる?」と聞くと、子どもたちは大喜びしていました。いざ、スーパーマーケットへ。

 

②見学へ

事前学習で子どもたちに「近いという理由以外で、そのお店に行く理由は?」と問いかけ、そのお店に行くには理由がある、そこからそのお店のいいところ探しをすることを今回の見学の目的の主にしました。また、自分たちがよく買うような物は売られているのか、店員さんはどのような仕事をされているのかなど、【見つける】ことも忘れてはいけません。

今回、お世話になったスーパーマーケットは、〔ライフ 青葉しらとり台店〕様です。初めて、見学させていただいたお店ですが、快く受け入れてくださいました。今回は、売り場とバックヤードの2箇所を見学させていただきました。

いざお店に入ってみると、たくさんの商品やお惣菜、生活用品など、とても充実したスーパーマーケットでした。売り場では、他のお客さんが実際に買い物をしている最中でした。お客さんのお邪魔をしないように、自分たちが気になったコーナーを見ました。また、今回の見学では「このお店の中で一番買いたくなった物は?」というお題を出しました。自分が好きな物ではなく、売り場を見て、欲しくなったものを選ぶというものです。

「先生、こんなコーナーもあるよ」と言って、子どもたちが教えてくれました。

 

売り場を見学していると、子どもから「なんか臭いところがある」と話をされました。「なんで臭いんだろう?」と原因を探っていくと、近くに鮮魚コーナーがありました。「ここかな?」とにおいを嗅いでみると、「このにおいだったのか!」と嗅覚からも、良い体験ができました。

 

③事後学習

見学をしている中で、気になったことはメモをしておくようにと伝えると、子どもたちは気になったことがたくさんあったようでした。それは、【気づき】でもあり、【疑問】でもあります。これらは店員さんに聞きたいこととして、まとめてスーパーマーケットへ送り、お返事を待ちます。

また、各クラスで「なんか臭いところがある」という声が届きました。「仕事だから、お給料をもらっているから、臭い思いをして魚を捌くの?」という問いかけから、店員さんの「想い」に触れていく予定です。

 

【チャレンジ力・思いやり】でるくいサマープログラム

7月19日(水)・20日(木)にでるくいサマープログラムを実施いたしました。これは、授業内の学び以上に「もっとやりたい!」「もっと学びたい!」という子を対象に、授業では扱わない教科学習のさらに進んだ内容を取り扱うプログラムです。桐蔭学園小学校では、授業を主に「思考力を育む協働的な学びの場」として考えており、授業内では教科の学習を通して「主体的・対話的な深い学び」を目指しております。

 

授業は、個→協働→個で行うアクティブラーニング型授業を進め、その中で個別最適な学びも意識して進めています。そこで学びの喜びを感じた子たちの中には、「もっとやりたい!」「もっと学びたい!」と高い意欲を持つ子もいます。そういった子どもたちの学びをさらに進めるために、今回、授業外に「もっとやりたい!」を実現するプログラムを用意しました。

 

各プログラムには、申し込み時の参考にしてもらうため、対象とする学年やどの程度の内容かを示す「でるくいチャレンジメーター」を設定しましたが、やりたい子どもの受け皿として、学年の枠を超え、申し込むことも可能としました。

1学期直後の夏休み期間ということもあり、予想を大きく超えた応募がありました。

プログラムとしては、授業で学んだ英語の語学力やコミュニケーションを活かして、パフェづくりに取り組むものや、学校を飛び出して柿生駅周辺の状況を調査し、危険な場所マップを作成するものなどがあり、どれも授業で培ったものを活用する内容としました。

当日、登校してきた子どもたちの表情はどの子も明るく、そしてやる気に満ちたものでした。

右の写真はPCのプログラムで、子どもたちは「Springin Classroom」を利用して本格的なゲームを作成しました。本物のゲームを作成するのと同様にクリエイターズチームを組み、プログラミングを担当する子、キャラクターデザインを担当する子、音響を担当する子、全体をプロデュースする子などに分かれて取り組みました。作成する過程を味わえる喜びを感じつつも、普段遊んでいるゲームの裏側にどんなものがあって、どれだけたくさんの労力と時間をかけて作られているのか、ということを体験的に学ぶことができていました。

 

他にも、専門的な指揮法について体験を通して学んだり、布を染色して自分の好きな色の衣類を作成したりとどのプログラムも体験的なものが多く取り入れられていました。

日常の物事と授業で学んだことがつながっていることに気づき、その楽しさを発見した子もいました。

子どもたちの様子を見ていると、学ぶことを心から楽しんでおり、「もっとやりたい!」という子どもたちの意欲とその需要がこんなにもたくさんあるのだということに、教員も改めて気づくことができました。

今回は、最初の試みということもあり、単発でのプログラムとなりましたが、今後は、継続したプログラムを実施していこうと検討しております。継続したプログラムとなることで、より深く学ぶ機会、より探究的な学ぶ機会になると考えております。子どもたちの学びたいという意欲を大切にして、今後も様々な取り組みに挑戦していきます。

 

こちらの3枚の写真は、英語でコミュニケーションをとって、パフェを作るプログラムです。英語で伝えることで、ほしい材料を得られるようなゲーム性もあり、子どもたちは学年の枠を超えた仲間と楽しんで作成していました。最後はおいしくいただきました。

 

科学の授業では、知育菓子を利用して身近な化学反応を学びました。何を混ぜ合わせているのか、混ぜ合わせることでどんなことがおきるのか、自分で試しながら学ぶことができました。こちらのプログラムには、(株)クラシエさんにご協力いただきました。

 

 

 

 

 

 

【チャレンジ力・創造力・思いやり・メタ認知】 ~4年宿泊行事 三浦~ 

7月17日(月)18日(火)に4年生の1泊2日の宿泊行事が実施されました。子どもたちは昨年度、野島青少年研修センターにて、初めての1泊2日の宿泊行事を経験しています。

昨年は、初めてということもあり、自分の事や泊まるということだけで精一杯だった子どもたちでしたが、今年は昨年の経験もあることから、子どもたちの姿にも少し余裕が見られました。その姿や、日々の子どもたちの様子をみて、もっと子どもたちが主体となって取り組むことができるのではないかと、初の試みである「宿泊行事実行委員」を立ち上げてみました。子どもたちの反応を見てみると、「やってみたい。」という子が多数上がり、実行委員の希望を募ったところ、希望者数は学年でなんと23名も集まりました。実行委員としては、人数が若干多いようにも感じましたが、まずは子どもたちの「やってみたい」という気持ちを優先し、23名で宿泊行事の具体的な内容を決めていくことになりました。

 

人数も多いということで、

【全体の企画・しおりを作成するチーム】

【ホテル、バス、公共の場所での過ごし方を考えるチーム】

【バスやホテルでの部屋での過ごし方やレクリエーションを考えるチーム】

の3つに役割を分担し取り組んでいくことになりました。

 

初めての経験でありながらも、朝休みや、他の休み時間に声を掛け合って集まったり、自宅で調べてきたことを持ち寄ったりと、子どもたち自身で、考え、協力しながら進める姿を目にすることができました。時には各クラスへ協力を呼びかけるなど、全員で宿泊行事を作っていく、成功させるという想いも伝わりました。特に、子どもたちが力を入れていたのは宿泊行事のしおりです。教員に行程を確認して、全くの白紙の状態からロイロノートを使って1ページ1ページ作り上げていきました。宿泊行事のねらい、目標、決まり、施設紹介、レクリエーションなど構成やレイアウトまで子どもたちだけで取り組み、ついにしおりが完成しました。学年会では、そのしおりをもとに、実行委員のみんなから説明があり、これで、宿泊行事の準備が整いました。

【8月17日(月)1日目】

当日は、通常よりも少し早い集合ではありましたが、子どもたちは全員笑顔。ワクワクして朝早く起きてしまった子や、ドキドキしてなかなか眠れなかった子もいたようです。大きな荷物を背に元気にバスに乗り込みます。1日目の最初の目的地は新江ノ島水族館です。

バスを降り、集合写真を撮ったあとは、グループ行動(調べ学習)と体験活動です。体験活動は前半後半に分かれての実施ですので、後半グループには集合時刻を伝えた後、別行動となります。

体験活動では、小さなビンの中にカラフルな小石を入れ、植物やプラスチックの魚を泳がせます。なかなか細かい作業で手こずっている子も中にはいましたが、1つだけのミニ水族館です。できあがった世界に、子どもたちの目もキラキラしていました。

グループ行動では、事前に新江ノ島水族館について調べてきたことをもとに、計画してきたことを確認しながら、見学(調べ学習)します。中には新江ノ島水族館へは家族で来たこともある子もいましたが、友だちと行動したり、水族館にいる生き物の種や生態を調べたりすることで、また違った楽しさを感じているようでした。

学校でお互いのやりたいことや行きたい場所を、事前にみんなで話し合ってきたものの、実際に現地に来たことで、計画してきたことをその場で変更することもあったと思います。自分の事だけではなく、グループみんなのことを考え行動していくということが今回のグループ行動でのおおきなねらいでもあります。どのグループもみんなが納得し、楽しめる方法を模索しながら時間いっぱい水族館を満喫することができたようです。

新江ノ島水族館を出て、いよいよ子どもたちが楽しみにしている宿泊先に向かいます。

ホテルに到着した後は、入館式を行い各部屋に移動しました。

ホテルでは、自分のことは全て自分でやらなければいけません。布団を敷く、荷物の整理、お風呂の準備、片付けまで全て自分たちで行います。時には、友だちと協力してやらなければいけないこともあります。順番を守ったり、我慢をしなければいけないこと、意見がぶつかることもあったことでしょう。その他、食事のマナーや、公共の場所での態度など、子どもたちの「自ら考えて行動する」場面をたくさん目にすることができました。

 

【7月18日(火)2日目】

2日目の目的地はソレイユの丘。ここでの活動はかなりの広範囲になるため、各グループ事前に施設マップをみながら話し合う時間を設けました。

当日は、とても気温が高かったため、グループ行動となると、子どもたちの体調管理を私たち教員が把握するのが難しいということもあり、急遽当初の予定を変更し、時間を区切って教員が子どもたちの安全を確認しながら活動することになりました。そのような、急な状況の変化にも子どもたちは理解を示し、話し合って予定を組み直している姿を見ることができました。

2日間の宿泊行事を終え、子どもたちがこんなにも主体的に行動し、何でも自分たちで解決していけるのかと改めて子どもたちの可能性、力を感じました。私たち大人は勝手な物差しで子どもたちの力を判断するのではなく、もっと子どもたちの持っている力や可能性を信じ、子どもたちに任せる、考えさせる、やらせてみるということが必要であると改めて実感した2日間となりました。

 

4年生も2学期がスタートしています。今回の宿泊行事で得た達成感や課題こそが、次へのやる気、行動力に繋がっていくことでしょう。今後も無限の可能性に満ち溢れた子どもたちを全力で見守りサポートしていきたいと思っています。

 

【子どもたちの宿泊行事のふり返り】

 

この宿泊行事で得た経験は、今後の学校生活や様々な行事にもきっと活かしていけることでしょう。2月には第2回宿泊行事を予定しています。子どもたちの更なる成長を楽しみにしています。

 

【思考力・チャレンジ】4年算数~大きな数~

桐蔭学園小学校で掲げているキーコンピテンシーのうち、「思考力」「チャレンジ」を育成するための、ある4年生の3時間分の授業について紹介します。

〇導入

4年算数の最初の単元は「大きな数」です。子どもたちは授業で習う前から日常的に様々な「数」を目にしています。導入は、なるべく子どもたちの馴染みのない事象から、「そうなんだ!」を引き出したいと思い、次のような問いをしました。

「地球上でもっとも多く生息している生き物は?」

すると、「人間!!」と言う子がいました。そして「いや、もっといるよ!」「だって、人間は70億人もいるんだよ!」「アリとか多そうだよ!」と子どもたちの方で想像を膨らませていました。「調べていいですか?」と言ってきた子がいたので、もちろんOKしました。調べている間にもあれやこれやと議論をしています。すると、「ナンキョクオキアミ」にたどり着きます。正確には、総重量でみると世界一数が多いとされています。なんと、総重量およそ10億トンです。1匹あたり2g程度なので、途方もない数が生息しています。子どもたちも「えぇ~!!!」と驚いていました。

子どもの情報01子どもの情報03子どもの情報02

↑子どもが検索して出てきた情報

数の大きいクイズ

 他にも、「ディズニーランドはいくらで貸し切れるか?」や大きな数の定番「日本の面積と人口がいくつか?」をクイズ形式で問いました。

算数で大切なことの1つが、「子どもがいかに“数”に興味をもてるようになるか」だと思うので、それを引き出したいと考えています。

 

〇展開

大きな数の様々な見方を学習するために、まずは小さい数で3年での既習事項を振り返りながら次のように問いました。

「50はどんな数?」

これもやはりたくさんの意見が出てきます。

板書01

子どもが意見を出すときに大切なのは、何でも言ってOKの環境を作ることです。特に、4月の最初の段階でその環境を作れれば、自分のアイディアを生み出そうとします。先生が「それはどうかな?」と子どもの考えを取捨選択してしまったら、子どもは自分の考えではなく、「先生が求めているモノ」を考えようとしてしまいます。それでは既成概念を超えられません。今回でいうと「お父さんの年齢」や「タイヤのインチ数」などが出ました。「そういうのもありなの??」という子もいましたが、いいんです!!

 

さて、今回子どもたちから出た考えを2つに分類しながら板書しました。そして「君たちが出してくれた考えを右側と左側で分けて書きました。どう分けているでしょう?」と問いました。またしても子どもたちは様々なアイディアをぶつけてきます。一番多かったのは「計算しているかどうか」でしたが、タイヤのインチ数がその回答を邪魔してきます(笑)

答えは「ズバリ!“50”になるかどうか」です。

右と左に分けて書いていくと、どちらかが多くなって偏っていきます。すると子どもたちから「なんだか先生の板書がおかしいぞ?」や「先生、黒板のバランスが悪いです!」など、小さな疑問を持ち、「なんでかなぁ~?」とつぶやくと、「何か意味があるのかも!」と子どもたちは考え始めます。こういうところでも子どもたちの思考力をくすぐれればと思います。

 

そして、準備が整いましたので大きな数に突入です。

「640000はどんな数?」

「ただし、考えるのはさっきの左側「ズバリ!640000」になる数だよ」と焦点を絞ります。

個→協同→個のアクティブラーニングの流れにそって、まずは個人で考えを巡らせました。しばらくしてから班で意見を集約します。

児童GW01児童GW02

そして、

ロイロノート_20230423 (4)ロイロノート_20230423 (3)ロイロノート_20230423 (2)ロイロノート_20230423 (1)ロイロノート_20230423

〈600000+4000〉〈65万から1万を引いた数〉〈320000×2〉などの計算

〈1が64万集まった数〉〈1万を64集めた数〉などの単位量を決めてそれが何個分か考える

〈十万の位が6で一万の位が4の数〉などの位に注目する

〈6400000の 〉〈64の10000倍〉などの10倍や などの位を上げたり下げたりする

などの意見が出てきます。

その中で、間違っているものには「それはズバリ!の答えじゃないよ!」や「答え間違ってない?」など子ども同士で修正しあいます。子ども対先生で修正していくよりも、近くの友だち同士で話をすることで、一人一人が自分の考えがどうだったかをより考えやすくなることがあります。

ここでの考えを共有した後に、「自分の考えになかったものはノートに記録しておこう!」と伝え、そのノートを写真に撮ってロイロノートに提出してもらいます。うまくつかめていないような子には個別で対応します。

 

 

〇補足

このように全員で楽しみながら算数的思考を深めていけるように、提示や問いかけ・取り組み方を工夫しています。また、このあと出てくる3位数×3位数以上の計算も子どもたちがつまずきやすいところなので、虫食い算や計算アプリで取り組みます。計算力を高めるにはやはり数をこなすしかないので、苦手な子もチャレンジを続けられるよう個別対応していきます。

 

【メタ認知力】6年生の「1年生お手伝い」を通して

4月6日にシンフォニーホールにて入学式を迎えた1年生。4月7日(金)に初めて小学校校舎に登校してきました。最寄り駅からのスクールバスに乗って小学校まで来ましたが、そこから下足箱はどこか?教室はどこか?学校に到着してから何をするのか?などすべて初体験で右も左もわかりません。

そのため、本校では6年生が登校初日から1年生を出迎え、学校生活について付き添う活動を行っています。

6年生へはまず、1年生が登校する前に学年集会で「1年生が困っているのでぜひ助けてほしい」と伝えました。初めて登校して何もわからない1年生の様子を知った6年生からは「助けてあげたい!」「お迎えします!」という前向きな声が聞こえてきました。6年生としても、1年生と初めて関わるので、「どんなこと話したらいいのかな?」「うまく対応できるかな?」という不安の声もありました。そういう気持ちに共感しつつ、まずは自分たちにできることを考えて実践してみよう、と声をかけて1年生のお迎えに向かいました。

1年生が乗ったスクールバスが到着する下足箱へ行き、待ち受けます。6年生にとっても登校初日の朝でもあり、少しテンションの高い様子がうかがえました。

 

そして、1年生が到着。すると積極果敢な子からどんどん1年生の前に行き、互いの名前を紹介する様子が見られました。そこから1年生を連れて、下足箱、そして教室へ誘導します。教室では、朝準備の仕方について、1年生の担任の先生と確認しながら6年生が1年生をサポートします。準備が終わった後、そのまま1年生とコミュニケーションをとる6年生もいれば、うまくコミュニケーションが取れずにその場を離れてしまう6年生もいました。1年生の朝準備が終わると、6年生は1年生とお別れして、6年生教室に戻ります。

戻った6年生は、学年で再度集まり、1年生とのかかわりについて振り返ります。

6年生の引率16年生の引率01

 

 

 

 

 

 

 

 

振り返りでは、まず子どもたちに自由に書かせました。以下は子どもたちが書いた振り返りです。

振り返り01

振り返り02

振り返り03

 

内容を見てみると、自分の接し方について全体的に振り返っている子もいれば、「良かったところ・なおしたいところ」と観点を分けて書いている子や、6年生全体の動きについても振り返っている子もいました。

ここで近くの友だちと共有タイムを設けました。友だちがどんな観点で書いているのか、互いに伝えあいます。友だちがどんなことを書いているのか、子どもたちも興味津々なので、積極的にやりとりしていました。そして、書いている観点を全体で共有します。

観点01

共有した上で、自分の振り返りカードに追記しておきたいことを赤字で書き加えました。友だちから、自分とは違う観点の振り返りがあることで、見方が広がったと感じる子もいました。

見方の広がり01見方の広がり02見方の広がり03

最後に、翌日以降の1年生のお手伝いに向けて、改善点や変更点を全体で話し合いました。最初は、関わりに不安がある子のために、どのような関わり方があるのか、互いに意見を出し合いました。

「朝準備の手伝いをしてあげる、持ち物の整理整頓してあげる、本を読んであげる、…」などの意見が出ました。関わり方に不安を感じている子にとって、これらの話は非常に助かったようで、「そっかぁ」とつぶやく声が聞こえてきました。全体で共有した意見は下のカードです。1年生の安心感のためにサポートしてあげることはもちろん、その後の生活を考えて、自分でできるものは見守るという意見も出ており、1年生のことをしっかりと考えた意見が共有されました。

次回に向けて01

 

そして迎えた2日目。昨日の経験と今日のめあてを個々に持って1年生のお迎えに向かいます。

昨日一日経験したことで自信をつけた子が多くいました。また、友だちからのアドバイスを活かして、本の読み聞かせをしてあげる6年生もたくさんいました。前日に振り返ったことをしっかりと活かして取り組んでいる子がたくさん見られました。

それだけではなく、さらに下足箱のところでは、1日目の反省を踏まえて自主的に交通整理をしてくれている6年生もいました。また、教室では1年生の様子を見て回り、困っている様子の1年生にすかさずサポートしてあげている6年生もいました。前日の様子から自分なりに考え、自分にできることに進んで取り組んだ子がいたことはとても素晴らしいことだと感じました。

6年生と1年生の写真差し替え6年生の取り組み02

6年生の取り組み03

2日目の朝のお手伝いを終えて、再び個人で振り返りました。2日目の振り返りを書いたのち、1日目の振り返りと比較しました。自分なりに変化したと思うところに蛍光線を引きました。すると子どもたちからは「前日できなかったことができた!」「成長してる!」といった前向きな言葉が出ていました。「自分の変化を感じた人?」との問いかけに多くの子が手を挙げ、「振り返りを書いたことで成長したことがはっきりわかりました。」という意見も出ました。

1年生の振り返り01

1年生の振り返り03

 

1年生の振り返り02

活動に取り組むだけでなく、しっかりと振り返り、次なる活動に向けて自分なりにめあてを持って取り組むこと。そうすることでより大きく変化し、それを自分自身が実感できる。PDCAサイクルを回すことの良さを子どもたちは感じているようでした。

1年生との交流01

 

 

 

1年生との交流02

 

 

 

熱く語れるポスターセッション 自分の興味関心と社会とのつながりを考えよう~SDGsを参考に~

『今、求められる力を高める総合的な学習の時間の展開』(文部科学省,教育出版2011)では、探究的な学習について以下に書かれています。

探究的な学習とするためには、学習過程が以下のようになることが重要である。

 ①【課題の設定】体験活動などを通して、課題を設定し課題意識をもつ

 ②【情報の収集】必要な情報を取り出したり収集したりする

 ③【整理・分析】収集した情報を、整理したり分析したりして思考する

 ④【まとめ・表現】気付きや発見、自分の考えなどをまとめ、判断し、表現する

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こうしたことと、桐蔭学園小学校で掲げている6つのキーコンピテンシー(思考力、創造力、チャレンジ力、メタ認知力、思いやり、エージェンシー)とを意識して探究活動に取り組むように考え、教科の「総合」の探究的な学びについて、昨年度よりカリキュラムを再編成して取り組んできました。今年度の6年生は再編成したカリキュラムで取り組んで2年目となります。

ポスターセッションに至るまでの今年度の6年生の総合(探究)の歩みを少しご紹介します。6年生では、それぞれが興味・関心あることについて、そこに関わる社会的な問題にどのようなものがあるのかを調べ、その問題に対して、どういった解決方法があるのかを自分なりに主張することにしました。

探究的な学びを深めていくためには、「課題の設定」。つまり子ども自身の「問い」がどういったものになるのか、ということが非常に大切です。「問い」については、まずオープンエンドになっていることが必要です。社会の中に存在する様々な課題は、いろいろな要素が複雑に絡み合ったものであり、単一の答えが出るものではありません。そういったことを踏まえ、探究では問いづくりを最も大切にしています。

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ここからは、思考の流れを追うためにある児童の探究的な学びに焦点を絞って説明します。

まずは、子どもたちに学習の見通しが持てるように、図1を提示しました。こうしたものを示すことによって、自分が今どの段階を取り組んでいるのか、それがこの先どのように進んでいくのか、ということ常にイメージしながら進めていけるようになります。

次に、自分の興味・関心について掘り下げていくために、自分についての分析を行いました(図2)。パッと思いつくことを1つ挙げることは、子どもたちにとって簡単なことです。しかし、様々な観点から問いかけていくことで、改めて自分の中にどんな興味・関心があるのか、自覚することができます。

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そして、それをもとに曼荼羅チャート(図3)を使って、どうして自分はそれに興味・関心があるのかを整理することで、より強く興味・関心があるものはどれなのかを可視化することができ、自分の興味・関心がどのような共通性をもっているのかなど、より大きな視野で考えることができるようになります。また、こうして複数の興味・関心を挙げることにより、実際にそれが社会的な問題・課題とどのようにつながっているかを考えたとき、最初に挙げた興味・関心のあるものとのつながりが見出せない場合でも、自分の中に課題設定をする選択肢が持てます。この取り組みによって、子どもたちの問いは似通ったものからより多様なものに変化していきました。この児童は、最初に文房具やハワイ、赤ちゃんなどを書いていましたが、複数書いていくことで社会的な問題・課題とつながって学習を進めていくのにより自分にふさわしいテーマとして「発酵」を選択しました。こういった変化が多くの子どもたちの中で起きていました。図4-1では、自分の設定した興味・関心がテーマ(SDGs)とどう関わりそうなのか見通しを立て、図4-2で探究をし始める最初の問いを明確化することができ、探究への計画を持てるようになっていきました。

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次に実際に探究をしていく流れについてです。ここからは、【課題の設定】→【情報の収集】→【整理・分析】→【まとめ・表現】→【課題の設定】→…と個人内で探究的な学びのサイクルを回していきます。図5-1、5-2ように、「探究学習シート」というものを使って、1人1人が、探究的な学びのサイクルを進めていきます。ここで大切なのは、シートの最後にある「次なる問い」の部分です。調べたことをさらに深掘りをしたり、別の観点から調べたりすることで探究のサイクルが繰り返され、より深い学びにつながります。また、調べ学習が不十分であったり、調べた内容を自分なりに解釈できていなかったりする場合、「次なる問い」を生み出すことが難しくなるので、1人1人に助言を適宜することが大切です。そうして、個人で探究的な学びを進めた先に2学期は、小論文形式で【まとめ・表現】するようにしました。9月にスタートして、12月に小論文の形でまとめることができました(図6)。

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3学期は、ポスターセッションで表現するための、アウトプット、つまり【まとめ・表現】することに焦点化して学びを進めました。自分が考えたことをいかに人に伝わるようにするのか、ということについて考えを深めるために、聞き手としてどういった観点で見るべきか、発表者としてどういったことを大切にして取り組むべきか、子どもたちと教員が話し合いながら、評価ルーブリックを作成しました(図7)。そのルーブリックを基に、自分の発表を振り返ったり、当日のみんなの発表を自分たちで評価したりするようにしました。

図7に示したのは実際に児童が練習時に友だちの発表を評価したものです。当日も同じルーブリックを使用して、お互いの発表を聞き合うようにしました。

こうした学びを経て、2月17日(金)に大学のクリエイティブスタジオにて、ポスターセッションを実施しました。これまで学んだことを発表する場ということで、当日は、保護者や学園関係者に招待状を出して聞いてもらうようにしました。5年生もその様子を見に来てくれました。子どもたちは普段あまり関わりのない人や面識のない人にも自分たちの学びを聞いてもらうことで、緊張感を持って取り組むことができたようです。また、保護者の中には、それぞれの分野を専門とする方もいらっしゃり、調べたことについて助言をしてくださったり、交流したりする様子も見られました。これは子どもたちにとっては非常に大きな学びであったようで、そういった交流をした児童は、その様子を活き活きと話してくれました。

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探究的な学びを進めていくためには、本校が掲げている6つのキーコンピテンシー(思考力、創造力、チャレンジ力、メタ認知力、思いやり、エージェンシー)を活用して取り組むことになります。授業者として、コンピテンシーの育成を意識して取り組んできました。教員も、児童への発問や助言、関わり方、その一つ一つを大切にするように変化しました。すると、子どもたちもじっくりと思考して取り組むようになったり、難しい調べ学習にもあきらめず挑戦したりするようになり、1人1人の創造的で多様な考えを生むことにつながりました。

探究的な学びの発表をポスターセッションで実施したのは今回が初めてとなります。今後は本校6年間の学びのまとめとして、この取り組みを継続していきます。

また、桐蔭学園では中等・高校ともに「探究」を学びの3本柱のひとつに位置付けており、「未来への扉」(=みらとび)と呼んでいます。こうした学びを、小学校の先のステップでも引き続き取り組み、さらに探究的な学びのプロセスを習得し、社会で活躍できる子どもたちになっていくことを願っています。

文責 玉井 山尾 瀬山

 

 

 

 

 

 

【チャレンジ、思いやり、エージェンシー】6年生 鎌倉校外学習

6月29日の水曜日に、6年生は鎌倉へ校外学習に出かけました。ゴールデンウィーク前より準備を進め、この日を迎えました。

今回の校外学習は、子どもたち自身が行き先や見学ルート、交通手段等を考え、自分たちで決めた行程表に沿って古都鎌倉を見学してまわるというものでした。これは、秋に予定している修学旅行(京都)の練習でもあります。子どもたちだけでなく、私たち教員にとっても初めての経験でしたので、約2か月の期間をかけて準備を進めました。

まず、鎌倉の歴史的背景についての概略を学んだのち、共通の課題としての「鶴岡八幡宮の8つの謎を解く」に取り組みました。謎解きをする中で生じた新たな興味や関心を、さらに調べ学習へとつなげ、その上で各自が行きたい場所の希望を決めました。この行きたい場所は、同じ見学班の友だちに説明できる形にまとめました。その上で、同じ見学班の友だちと相談して、それぞれの班が行く場所を選びました。

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次に子どもたちが取り組んだのが、見学ルートの設定です。使用可能な交通機関の区間はある程度制限したものの、鎌倉駅前をスタートして昼食場所である鎌倉大仏を経由して鶴岡八幡宮にたどり着くルートを、子どもたち自身で考えていきました。考えたルートは、拝観料や交通費、飲み物代などの予算、それぞれの時間配分を書き入れた行程表にまとめていきました。

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( 行程表の例 )

 

見学のルートが概ね決まった頃からは、集合班の打ち合わせも加わりました。今回の校外学習は、同じ方面の子どもたちがグループとなり、公共の交通機関を利用して自分たちで現地に向かわねばなりません。現地集合時間に到着しているためには、何時の電車に乗り、どこで乗り換えなければならないのか、乗り遅れると次の電車は何時なのか等、様々な角度からシュミレーションした上で、それぞれの班が集合時間を決め、集合班カードを仕上げていきました。

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このような準備を重ね当日を迎えましたが、自由散策でしたので、安全面では少なからず心配もありました。そこで今回は、子どもたちが普段の学習でも使用しているロイロノートを使って、今いる場所等の連絡をしてもらうようにしました。定期的な連絡だけでなく、「インスタ映え選手権」と称して、子どもたち自身が見学先で撮影した写真の提出箱もロイロ上に設けました。子どもたちからは、目一杯楽しんでいる様子が伝わってくる写真が、次々に送られてきました。子どもたちの様子をリアルタイムで把握することができたので、私たち教員にとっても安心材料の1つになりました。

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見学時間や移動時間の読み違いから予定通りの見学場所をまわることができなかったり、途中道に迷いかけ通りすがりの方のご助言をいただいたり、想定以上の暑さに体力が持たなかったり等、班それぞれにいろいろな経験をしたようですが、最後鶴岡八幡宮にたどり着いたひとりひとりの顔は、すがすがしい達成感に満ち溢れていました。学校にもどってからは、ポスターセッションの形で今回の校外学習のまとめを行っていく予定です。

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5年 総合(探究)「農業」

「思考力」「思いやり」「エージェンシー」

5年1学期の探究では、農業を題材として、「なぜ(稲作)農家の人は(稲作)農家をやっているのか?」をテーマに活動を行いました。
探究活動は、「課題の設定」→「情報の収集」→「整理・分析」→「まとめ・表現」→「振り返り」を繰り返しながら進んでいきます。今回の単元では、特に「情報の収集」に重きをおいて取り組みました。

はじめに、「農家の仕事」について自分たちの知っていることを挙げてみました。すると、子どもたちはそのことについて思った以上に知らないことが多いのに気づきました。「知らないこと」について調べ、そこから「知らないこと」が見つかり、また調べ・・・、という活動を繰り返していく中で、農家の仕事の大変さに気づき、驚きの声をあげていました。

   

次は、自分たちが「大変そう、困りそう」だと想像したことの中から、その解決方法について1番気になることを選び、調べました。タブレット型PCを導入して半年以上経っているため、子どもたちも手慣れた様子で調べを進めました。しかし、インターネットによる情報収集では、なかなか自分たちの知りたいことの核心にはたどりつけませんでした。そこで、実際に「農」に関係のある方へ、直接インタビューして聞いてみることになりました。

農家の方や農業に関するNPO法人の方へ質問するにあたり、子どもたちは事前に「自分の課題」に関連した質問を1つずつ用意しました。当日は、一般の方へのインタビューということで、緊張している様子もありましたが、全員が自分の言葉で質問をすることができました。

   

   

実際にインタビューすることを経験したことで、子どもたちは「本やインターネットで調べ学習をすること」と、「人から直接話を聞くこと」の大きな違いに気づくことができたようでした。タブレット型PCやスマートフォンといった手軽に情報を得られるツールが身近にある生活だからこそ、それ以外の情報収集の手段にも目を向け、状況に応じて使い分けられるようになってほしいと思っています。

「農」に携わる方々へのインタビューを終えた子どもたちは、次に、自分たちで田植え(6月実施)を行うことで実体験という情報収集を行いました。

   

   

当日は天気にも恵まれ、存分に田植えを体験することができました。今まで調べていたことを実際に自分たちでやってみることができ、とても嬉しそうでした。また、ただ楽しむだけでなく、「苗を傷つけないように持ち方を工夫する必要があるんだ!」、「同じところにたくさん植えすぎると栄養が行き届かなくなるんだね」、「(泥の中が)場所によって温度が違う!」など、田植えをしながらいろいろなことに気づき、学びを深めている様子もみられました。

   

情報の収集が終わった後は、それらを「整理・分析」し、最後に「まとめ・表現」を行います。今回は、タブレット型PCを使い、調べたものをプレゼンテーション形式にまとめて発表しました。得た情報の量が多く、子どもたちはそれらをまとめることやプレゼンテーションに落とし込むことに苦戦していました。今後の探究活動では、自分が探究した課題をどのように整理し、他の人へ表現するかということに焦点を当てて取り組んでいこうと思っています。

☆インタビューにご協力いただいた方々☆
・坂田農園様
https://ja-jp.facebook.com/pages/category/Agricultural-Cooperative/%E5%9D%82%E7%94%B0%E8%BE%B2%E5%9C%92-588659954567618

・川戸農園様
https://kawato-nouen.com/

・青葉みらい農くらぶ様
https://aobamirainou.club/

・桐蔭学園営繕部職員の方

突然のお願いにも関わらずご協力いただきまして、本当にありがとうございました!!