年別アーカイブ: 2021年

「図工・作品展示会鑑賞」

本校では例年1月下旬の授業参観に合わせて「展覧会」を実施しています。在園、在校生の保護者をはじめ、一般の方にも本園、本校の1年間の教育の成果をご覧いただいています。今年度は残念ながら新型コロナウィルス感染症拡大のため、保護者の方のご来校と一般公開ともにかないませんでした。しかしながら、児童の鑑賞の場として平面作品のみ展示しました。

昨年までも鑑賞の際に、以下のワークシートを用いて各学年とも文章で自分の感想をまとめることを行ってきました。

※昨年までのワークシート

今年度は児童用iPadが導入されたので、ロイロノートというソフトを活用し、新しい鑑賞の方法を取り入れました。

ステップ1:「これは良い絵です」というのは簡単だけれど、「何が、どこが」良いのかという理由がわかると相手にも伝わるし、自分の作品作りにも生かされます。そこで、この「理由」を想像して、作品の良いところを表す言葉をたくさん考えてみよう、という問いをしました。まず、各自が思いつく「作品をプラス評価する言葉」を挙げてロイロノートで提出をしました。

   

   

ステップ2:ロイロノートは、提出されたカードが共有されるので、自分の考えた言葉だけでなく、友だちが考えた言葉も使いながら、自分が作品を鑑賞するときの4つの観点を決め、シンキングツールのXチャートに設定をしました。
観点を決める際、どうしても教員は定型の言葉を使ってしまいますが、子どもたちが自分で観点を設定することで、より自分の想いに沿った鑑賞ができたのではないかと思います。

ステップ3:ここまでの準備ができたら実際に作品を鑑賞します。まずはiPadに頼らず、自分の「眼と心で感じる」時間をつくり、その後、自分の心に響いた作品を自分のiPadで撮影し、Xチャート上に配置しました。

      

   

   

ステップ4:完成したチャートを見ながら、自分が特に気に入った作品を選び、文章で感想をまとめました。

   

鑑賞の授業は、「見る」活動は楽しくても、「感想を発表する」活動が児童によってはハードルが高くなる場合があります。今回、シンキングツールを用い、4つの観点を子どもたち自身が設定して鑑賞に臨んだことで、積極的に鑑賞に臨む児童が増えたように感じました。まとめの文章も、例年より子どもらしい自然な表現の文章が多くみられました。
作品を「眼と心で感じた」ときの第一印象を、シンキングツールを用いたことで具体的に言語化することができるようになったのではないかと思います。
図工は「制作」「鑑賞」の両面を学ぶ授業であると、子どもたちによく話しています。この特別な1年の中で、週1回の授業も例年とは進行が大きくことなりましたが、最後に鑑賞の時間をもつことができたことで有意義な時間と貴重な経験を得ることができました。
子どもたちの生活も制限がつづく日々ではありますが、鑑賞の眼を養うことで日常の中から小さな喜びを発見していける心を育てていきたいと考えています。

 

桐蔭学園小学校「子どもたちの深い学びを追求!~シンキングツール導入の全体像~」


(小学校 教育研究部主任 瀬山 郷平)
桐蔭学園小学校では、子どもたちの深い学びを実現するための方法の一つに、シンキングツールを導入しています。導入にあたっては以下の3つのポイントを大事にしました。

A.シンキングツールを活用できる場を多く用意すること。
B.シンキングツールを子どもたちが活用してよかったと実感を得ること。
C.シンキングツールで思考を可視化したことで、子どもたちの学びが深まること。

このことを踏まえ、以下の図のようにシンキングツールを活用する場を3つ設定しています。

 1つ目は、「シンキングツールタイム(T3)」です。シンキングツールを使っていくためには、まずその使い方を学ぶ必要があります。その指導時間を教科学習や行事指導の時間とは別枠で設定しました。1・2年生は週1コマ授業時間を、3~6年生は朝学習の時間(週2回)をそれぞれシンキングツールの使い方を学ぶ時間としています。ここで指導するテーマは、例えば「リンゴとトマトを比べると?」といった簡単で身近なものにしています。些細なものでも改めて考えてみることで、子どもたちは意外な発見があるということに気づいていました。こうした時間を通じて、シンキングツールの使い方が分かり、教科学習や行事活動に活用することができました。ここでは、上記の3つのポイントのAとBの要素があり、特にAの要素が強い活動です。
2つ目は、「行事における思考の変化」です。「シンキングツールタイム(T3)」で学習したシンキングツールを、行事の中で活用します。「アイデアを創造する」や「ここまでの活動を振り返って、今後の活動を考える」などといった場面でシンキングツールを活用し、思考を可視化して整理します。すると、子どもたちは自分たちのアイデアが整理されてやるべきことが明確化され、行動を振り返って次に生かしたり、面白い発見に出会ったりして、活動が活性化するようになりました。ここには、上記の3つのポイントのBとCの要素があり、特にBの要素が強い活動です。
3つ目は、「教科学習における思考力の向上」です。例えば、算数で何気なく見ていた形を、分類していくことで、自分が着目していることが言葉としてあらわれ、特徴を見て整理することができます。また、総合学習での話し合いで、自らの主張の理由を書きあげていくことで、主張のポイントや足りないことが分かり、さらに主張の論理を強くすることができます。このように学びを深めている様子が見られました。思考を可視化することで、自らの思考を構造化し、単元の目標に、子どもたちが自発的、自律的にたどりつくことができるようになりました。教科での実践は、教員間でも共有しており、より効果的な指導方法を模索し、実践しております。これは、上記の3つのポイントのCに特化した活動です。

こうした取り組みによって、現在子どもたちが徐々に自然とシンキングツールを自発的に活用し、思考を深める様子も見られるようになりました。アクティブラーニング型授業の「個→協働→個」の展開における、「個」の場面でも「協働」の場面でも今までに見られなかった思考の深まりが見られるようになっています。
いろいろな場面やすべての教科で使う場面を設定する組織的な取り組みによって、シンキングツールの導入と活用が、子どもたちに思考させることを活性化させています。