月別アーカイブ: 2026年3月

【思考力・メタ認知力・エージェンシー】後期総合探究③

前回の教育実践に引き続き、今回は「デジタルの世界-身近なデジタルのなぜ?を解き明かす-」「文字による言葉の力を考える-文学作品を中心に-」「比べてみよう日本と世界-数字や文字から考えてみよう-」の3つのゼミの取り組みについてご紹介いたします。

①「デジタルの世界-身近なデジタルのなぜ?を解き明かす-」ゼミ

本ゼミでは、小学3~6年生までの児童が「自分の興味関心×デジタルの世界」という共通テーマのもと、各自が設定した独自の問いに対して探究活動を行いました。活動の指針として、実社会から問いを見出し、情報を整理・分析して自分なりの解決策を表現することを目指しました。

子どもたちの取り組みは非常に多岐にわたり、それぞれの発達段階や興味に応じた多様な切り口が見られています。3・4年生では、プログラミングの仕組みや歴史、CPU・メモリといったコンピュータの基礎知識を深掘りする子どもたちが目立ちました。一方で5・6年生になると、単なる知識の習得に留まらず、社会課題との掛け合わせが顕著になります。具体的には、AIを医療分野の改善に役立てる提案や、量子コンピュータを活用して教育環境を整え貧困問題を解決しようとする壮大な試みが見られました。

また、生活に密着した視点からの探究も活発に行われました。スマートフォンの長時間利用による健康被害を分析し、逆に健康を増進させるための活用法を模索するグループや、インターネット上の「チート」行為に対する対策と未来を予測する児童など、デジタル社会の光と影を鋭く捉えた探究が進められています。

表現の面でも、「絵が苦手な人が自信を持てるアプリ」の考案や、「VRを用いたボカロライブの再現」など、クリエイティブな発想が随所に光っています。児童たちは「探究学習ポートフォリオシート」を活用しながら、自らの考えを俯瞰的に振り返るプロセスを実践し、デジタルの可能性を自らの手で切り拓こうとする主体的な取り組みの様子が見られています。

 

 

 

 

②「文字による言葉の力を考える-文学作品を中心に-」ゼミ

本ゼミでは、読書を通じて本に親しみ、その魅力や価値を共有しながら、一冊の本を起点とした「探究活動」を展開しました。初回の授業で「読書が好きな人」と問いかけたところ、全員の手が挙がるという非常に意欲的な形でのスタートとなりました。

しかし、単に読書を楽しむだけでは「探究」まで深めることは難しいため、導入として2年生の国語の教科書教材である『お手紙』を題材に選び練習を行いました。「登場人物」「表現の工夫」「お気に入りのポイント」といった共通のテーマで考察・発表を行うことで、いきなりの探究に戸惑いを見せていた児童たちも、次第に「読むべきポイント」を理解し、自身の視点を持てるようになっていきました。その際、教員側も『スイミー』を用いて同様のテーマでモデル発表を行い、活動の具体的なイメージを持てるよう配慮しました。

探究テーマを決定する段階では、まず「この本が好き!」という素直な感情から出発しました。当初はそこからどう問いを立てるか苦慮する様子も見られましたが、他の本との関連性を考えたり、周辺情報を調べたりすることで、各々の探究が深化していきました。

以下、児童が取り組んでいる探究の例です。

想像から科学的考察へ: 物語に登場する「架空の巨大なタコ」の大きさに興味を持った児童が、実際のタコの生態を調べるうちに、比較対象としてクジラの大きさについても調査を広げ、生物学的な視点から考察を深める姿が見られました。

歴史の謎への挑戦: 『坂本龍馬は名探偵!!』という本をきっかけに、幕末の「近江屋事件」について詳細に調べ、当時の関係図や暗殺の実行犯について多角的に分析する児童もいました。

社会問題への接続: 物語の主人公の境遇から「クラスメイトがいなくなったらどう思うか」というアンケートをゼミ内で実施。そこから「いじめ」という社会的なテーマにまで視野を広げ、文部科学省のデータなどを用いて加害者・被害者の心理について深く考察するまでになりました。

最終的には、物語の枠を超えてアンケート分析を行ったり、作品背景を深掘りしたりと、一人ひとりが自ら見つけたテーマに基づいて主体的に活動することができました。

また、異学年間の交流も大きな成果を生みました。5・6年生が下級生に適切なアドバイスを送り、3・4年生がそれを受けて作品をブラッシュアップしていく姿は非常に印象的でした。自分たちの「好きな本」を起点としたことで、最後まで前向きに、かつ粘り強く取り組むことができたと考えております。

③「比べてみよう日本と世界-数字や文字から考えてみよう-」ゼミ

本校は、建学の精神として5つの項目を掲げていますが、その項目の1つに、「自然を愛し、平和を愛する国際人たれ」というものがあります。これからのグローバルな社会を生きていく子どもたちにとっても、大切な資質の1つになっていくと思われましたので、本ゼミを通して、そんな第一歩を踏み出してほしいとの願いも込めて、活動をスタートしました。

まず、「数と英語(外国語)」について、自分の思いつくものを、ウェビングを用いて書き出させ、本テーマへの関心を深めさせました。普段は何気なく使っている言葉や数字について、あらためて見つめることで、探究活動に向けての視点が芽生え、それが今後の各自のテーマを決める上でのヒントになっていたようでした。また、本活動を単なる調べ学習で終わらせないために、調べ学習と探究学習の違いを、ベン図にまとめあげました。そうすることで、これから半年間の活動への見通しを立てることができました。

毎回のゼミ授業前半には、少人数に分けたグループ毎にそれぞれの考えを共有する時間も設けるようにしました。3年生から6年生が集まっての活動ということで、少し不安そうにしていた3年生も、場数を踏むことで上級生からアドバイスを受け、徐々に伝えたいことを上手に話せるようになっていく様子が感じられました。

毎回のゼミ授業後半には、各自で探究活動をすすめました。インターネットを駆使したり、ラーニングスペースに赴き資料を探したりと、それぞれが自分の興味関心から導き出した問いから考えをどんどん深めるとともに、さらなる問いを生み出して探究活動は続いていきました。

使用している言語や文字、数字などの違いを調べていくことで、それぞれの国の成り立ちや歴史への知識を深め、同時に日本について再認識していった子、身近な観点である食事やマナーの違いをきっかけとして、文化的側面や社会背景へと踏み込んでいった子、「人種差別」や「刑罰」の視点から、それぞれの国の考え方の違いから生じる社会構造について、考察を深めている子など、ゼミのテーマの性質上、子どもたちの探究活動は多岐に渡り、豊かな創造力と思考力を発揮して充実した内容となっていて、ゼミの時間ごとに嬉しい驚きと感動をもたらしてくれました。

年明けからは、年度末の発表に向けての準備が始まりました。自分が探究したことを、3・4年生は新聞形式に、5・6年生はポスター形式にまとめています。それと同時に、発表の流れをプロット図にまとめ、発表全体のイメージをつかませるようにしました。