毎年、3年生以上の科学では夏休み中の自由研究を課題として出しています。夏休みの自由研究がどの課題よりも大変。テーマが決められなくて困っている。関わる保護者も大変という声をよく耳にします。大変、難しいと思う理由の1つに物事に対して常に「なぜだろう。不思議だな」という感覚で観る習慣がないことが原因ではないかと思っています。何事もそうですが、習慣化されていないことを急に取り組もうとすると無理が生じてしまいます。科学では、こちらがすぐに答えを提示してしまうのではなく、「なぜだろう。不思議だな。」という目を日頃から育てるように意識しながら授業に取り組んでいます。そして、その疑問や不思議に感じたことを、そのまま通りすぎてしまうのではなく、立ち止まって調べる、考える、追求することを習慣化できるように授業内でも重要なポイントとして位置付けています。
自由研究は、子ども自身が興味や関心、不思議に思うことを追究し、世界を広げていくことが目的です。見栄えや出来にだけこだわってしまいその広がりこそが、豊富な知識の獲得と広い視野が育っていくものと考えています。
5年生の科学では今年も夏休みに自由研究に取り組みました。3年目ということもあり、子どもたちのテーマ設定や研究の手順やまとめ方にも上達がみられています。
毎年テーマ設定に悩む児童もいれば、新しいテーマに「今年は何にしよう」とワクワクしている児童もいます。そんな中、1年生から1つのテーマで研究を続けている児童がいます。
研究テーマ『ニワトリの観察』 5年3組 小林 めぐみ
1年次 「烏骨鶏のお母さんとひよこのかんさつ」
第2部 2年次「烏骨鶏のお母さん、お父さんとひよこのかんさつ」
第3部 3年次 「卵からひよこがかえるまでのかんさつ」
第4部 4年次 「ニワトリの種類とらんかく色の観察研究」
第5部 5年次 「ニワトリの卵の観察」
1年生か5年生にかけて第5部にわたるニワトリの研究ですが、研究を重ねていくことで興味の幅がより広がっているのが研究内容から見て取れます。この研究のスタートはお父様から「ニワトリを飼ってみないか。」という勧めがあって。1年生の時は、単純に可愛いという理由からはじめたものが、研究をしていくといつも同じ状態ではないことに気が付いたそうです。その状態の変化を感じたことで、ニワトリの成長やニワトリのことをもっとよく知りたいと思うようになっているようです。そして同時にニワトリの不思議や謎がたくさんあることに気が付き、その謎を解き明かしていくために研究することが楽しくなっているとのこと。小林さんにとって、ニワトリは今となっては大切なパートナーと言っているほど家族同然の存在です。今後の研究は現時点では未定ではありますが、「ニワトリ同士のいじめについて」「卵を突然産まなくなった理由」「ニワトリのすごい能力」について研究してみたいとお話してくれました。まだまだ小林さんの研究は続いていきそうです。
今回はある児童の自由研究の1例をご紹介しましたが、子どもたちの中の探究心を揺さぶり、その探究心をもとに幅広い視点で物事を見つめ、思考力、創造力を育てていくとともに、新たなやりたいことを見つけ出しやり抜く力、チャレンジ力も科学という教科通じて育てていければと思っています。