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4年図工『マイ エンブレム』

文部科学省は、小学校高学年における発達段階の特徴を以下のように説明しています。
『自己肯定感を持ち始める時期であるが、反面、発達の個人差も大きく見られることから、自己に対する肯定的な意識を持てず、劣等感を持ちやすくなる時期でもある。』
4年生は、自分のことを客観的にとらえられるようになりますが、一方で発達の個人差も顕著になる時期です。本単元では、「自分らしさ」を形で表すと「どのように表現できるのか」を考えながら、エンブレムづくりに取り組みました。子どもたちにとって、「自分らしさを考える」きっかけとなるような授業になってくれたら嬉しいと思い、この制作を取り入れ、実践しました。

まずは、世の中にある様々なエンブレムを鑑賞し、その中で日本の家紋を紹介しました。
はじめは「かっこいい」「かわいい」といった、見た目の感想が聞こえてきました。次に「向かい合っている鳥だ!」「何の葉っぱかな?」など、描かれている形に注目したつぶやきが聞こえてきました。次第に「この家紋は忍者の家だ!」と家柄まで想像する声も聞こえてきて、子どもたちの発想の豊かさを感じました。
ここで家紋のモチーフについて解説し、モチーフにはそれぞれ意味があることを押さえさせました。
「じゃあ、自分のエンブレムをつくるとしたら、どんな形になるかな?」
すると、子どもたちはプリントにそれぞれアイディアを描いていきました。
   
活動中、たくさんのアイディアを考えた子、失敗しながらも試行錯誤の末に自分なりの表現方法を見つけた子、最後まで妥協せずに丁寧につくる子、友だちと相談しながら表現方法を模索する子などの様子がみられました。こんな子どもたちの様子を撮影し、それらをプロジェクターで投影し、みんなで共有しました。図工の授業で学ぶべきことは「作品のつくり方」だけではありません。その根本にある「思考のプロセス」こそ重要なのではと、私は考えています。自分だけの視点で物事を見つめ、自分なりの答えを生み出していく過程を大切にしていきたいと思っています。

 「自分らしさ」を子どもたちは様々な方法で表現していました。その中に「自分でも何を表現したかはわからないけれど、自分らしい形ができた。」と作品を見せてくれた子がいました。「自分らしさ」を抽象的に表現したのです。もしかしたら、「自分らしさ」は、どんな形にしようかと自分で考え、自分で表現を決定していくことで、自然と出てくるものなのかもしれないという話をみんなで共有しました。
    

   
エンブレムづくりを終えた子に、本単元で学んだ技術をつかって、自分なりに思いついたものをつくってみようと投げかけてみました。課題をただこなすだけではなく、「他にはどんなものがつくれるかな?」という新たな問いを生み出せる人になってほしいという願いから、基本的にどの単元でもこのような時間を設けています。そんな時間こそ、大切にしていきたい時間であると考えています。